お兄ちゃんとおかあさんをなぞってくのが、わたしの唯一の学習法
ツート ツーツーツートツー ツートツーツー トツートツーツー
また、送ってきてる。モールス信号で、助けを求めてきてる。それが、モールス信号なのは、すぐに分かった。
送っているのは彼女さん
送っている相手はわたし
この家でモールス信号が理解できるのはあたしだけ。
それを彼女さんは知っている。お兄ちゃんが教えたんだろうか。でも、お兄ちゃんどころか、おかあさんだって、わたしがこの家にある百科事典に描かれてる五十音順の一覧表とそこに添えられた解説とさえ呼べない4分の1ぺーじの窓枠コラムだけでモールス信号をマスターしてるなんて、想像できないはず。
百科事典のみ~ゆまでが網羅されてる8巻の463ぺーじに、それは記されている。
和文モールス符号と表題のつけられた一覧表は、あいうえお順でなく、明治の前の最初のもので、い、ろ、は、に、ほ、へ、と、ち、り、ぬ、る、をの順になっている。ツート ツーツーツートツー ツートツーツー トツートツーツーツート ツーツーツートツー ツートツーツー トツートツーツーツート ツーツーツートツー ツートツーツー トツートツーツー
3度つづいたから、もう今夜はやってこない。
何もしってないふりを続けてる間は、何も返さないにする。
わたしはするから、かならず。わたしを頼って送ってくれてるのは分かっているから
行動に映すときは、一気果敢でなければ・・・・でも、梯子段を上って、屋根裏で彼女さんに逢ったら、これだけは言ってあげるの。
一機果敢でも、これから、この家から一緒に逃げていく同士だから、このことは、わたしたちには必要なことだから、一言だって外せない。
この家に、あなたが、やってきたときから、あなたの12才の姿かたちから、しってたよ
女の子だったら皆んなが羨ましく思うその細くて白い二の腕、お兄ちゃんの大きな掌が手錠みたいにがっしり掴んで、秘密の梯子段を上ったとき、つま先だけで踏んでるスニーカーが、あなたの代わりにキぃキぃ鳴ってた泣き声もぜんぶ聞いてたよ。
22.5センチの白いソックスのあなたが、この5年で24センチの靴下がいっぱいいっぱいの160センチを超えているのだってしってる。そのままだと垂れてお椀のかたちが崩れるから、ほんとうは、ブラだってつけなきゃいけないけど、お兄ちゃんはそれを認めようとしない。
メンスは下着が汚れるから、ベッドの白いシーツが汚れるから、ユニ・チャームのモニターするくらいに在庫の山を築いてるけど、ブラは許してくれない。
きっと、こわいんだ
清拭するときに、剝がした背中の肩甲骨の下に、大切な女の宝物を包んでるホックに目がいったら・・・・・細くて白い二の腕と細い三日月みたいなドレープの影をまとった鎖骨、それだけでも十分17才の女の子を魅力的な大人の女に仕立ているけど、その先のオッパイはもっと素敵。それが、なにも纏われず膨れているだけなら、女の子のお宝だからと特別に包み込んでる存在まで際立たせなければ・・・・・22.5センチの足のときからを毎日毎日を同じ清拭の作法で積み重ねしてるなら、12才の女の子を養育してる立ち位置からはみ出さずにいられる。
でも、ブラは、それを危うくするスイッチ
はじめてブラを付けるのは、女の子を、ほんとうは、その先のグッと先までいってる女だと気付かせるたあめに整えた儀式にこそ相応しい。
だから、今夜、それを相応しい日にする。今夜、持っていってあげる。
わたしが付けてるのと同じ、手縫いの刺繡のついた上下お揃いの淡いピンクのものを、あげる。それを付けて、一緒に逃げよう。
この家から逃げよう。あなたと一緒でお兄ちゃんに囚われてるわたしと一緒に逃げよう
お揃いの淡いピンクの下着の格好で、勇んで屋根裏にあがったら、お兄ちゃん、どんな顔するだろう。双子の妹としか、この世で一番近いしい存在としか見ていなかった女の子に、きっと彼女さんに向かうときと同じ匂いを嗅いでくれるはず。
わたしは、その一瞬を見逃さない。
その瞬間、はじめて対面するお兄ちゃんの右ほっぺに、きっと、焼き印のように真っ黒の焦げ茶色した竹筒がくっきり刺さるだろうから。
そのとき、わたし、恍惚になる・きっとなる
160センチの彼女さんと違って、わたし、158センチだけど、白い24センチのソックスを履いたってきつくないし、それにオッパイは同じⅮカップ。このバランス、17才にしては、エッチな身体してるって同級生の娘たちにからかわれるけど、それが漏れてく先の教室の窓席の相沢龍斗くんの耳に零れる一瞬を、わたしは見逃さない。
天然パーマの掛かったわたしよりあたまひとつ高い180センチ越えのバスケやってるイケメン。顔は全然似てないけど、サイズ感はお兄ちゃんと一緒。だから、わたしだけの相沢君のときは、お兄ちゃんといつも重なってる。
そのとき、Dカップのオッパイ、前にせり出していく。もうワンサイズあがってく予感がする
学校だから、付けてるブラは、飾りけのない白いだけの下着。今夜の、おかあさんが特別に縫い付けてくれたこの刺繡入りの特別じゃない。でも、もし、こうしてお兄ちゃんとはじめてまみえるときの上下お揃いの刺しゅう入りの下着姿で、そんな気分だったら・・・・・・3Dプリンターで立ち上がるみたいに、等身大が自分が現れる。24センチの白いソックスからはみ出さないまだまだ華奢な裸足の足からどんどんあがって、スカート丈の先から未だ誰にも覗かれたことのない17才の太股まであがって、掌の窪みで納まる最少の布地でしか隠してない同じつくりの淡いピンクと刺繡の入いったショーツ、VⅠOだけ隠した布地の先からおへそまではけっこう長い。剝き出してる唯一の穴だから、おへその辺りはいやらしい。太股からはじまった淡い紡錘形がいったんそこでキュッとしぼりこまれ、ふたたび肩までの、背中の硬いオッパイみたいな肩甲骨にむかって再び昇っていく。
隠さなきゃ、いいのに
穴のVIOを隠すショーツと同じ色で隠すから、それを気付かせる。ブラに着色されたら、飾られたら・・・・わたし、もう、自分をなぞっていけない。
ツート ツーツーツートツー ツートツーツー トツートツーツー
モールス信号が聞こえる。でも、伝わってくるのはこの家からじゃない。伝ってくるのは、身体の中から。わたしのオッパイの下のくぐもったあたりから、それは発信されてる。
何度も壁に隠れて見てきたから、どこに梯子段を降ろすスイッチがあるかは知っている。隠れて見てきたおかあさんの変わりに、おかあさんをわたしの身体すり替えて、その梯子段を上って屋根裏に上がるをなぞるだけ。
屋根裏にあがってお兄ちゃんに逢うときも、なぞるだけ
わたしという物心がかたちになってから毎日それは続けてきたことだから・・・・・彼女さんとのことだって、わたしの身体がこうして毎日エッチになってくの一緒で、かたちになって、毎日続けててきたことだから・・・・・清拭だって、言葉をしるようになるまえから毎日お兄ちゃんにやってもらってることだから・・・・・なぞってくのは、物心ついた幼いころから変わっていないわたしの唯一の学習法。