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走馬灯

今回は、サブタイトルの言葉通り走馬灯を書いてみました!

どうぞお楽しみ下さい!

「ザシュッ!」

鈍い音と共に体に痛みが走る。私の腹からドクドクと血が流れている。私は寝台の上で寝ていたはずだ。私は必死に周囲を見渡すと、隣には1人の男がいた。男は髪の毛一本すら乱れておらず、余裕綽々とした笑みを浮かべている。衝撃で私の口から、押えていた声が漏れる。

「かはっ……ぐっ…………な、ぜ…」

そこにいたのは我が国の第一王子だった。

「次期王は私です。第二王子である弟と結婚するあなたがたは邪魔です。この国と私のために消えてもらいます。最強の魔術師と謳われるあなたを手放すのは惜しいですが仕方ないですね。弟はあなたのことをとても好いているらしく、譲ってくれませんでしたから。恨むなら弟を。」

そう言って彼は私の腹に刺さっていた剣を抜いた。その痛みに絶えられず、私は意識を手放した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 私の頭からは、特に意識せずとも過去の記憶が流れてくる。これが走馬灯というものだろうか。私は、それを抗うことなく受け入れた。


 最初に浮かんできたのは、前々世の記憶だった。


 カーテンがシャッと開いた。朝日が差し込んできて、私は目を覚ました。

「美月ちゃん、おはよう。」

カーテンを開けたのは最近私が入院している病院に転勤してきた望月鈴奈という看護師だ。ここの病院の院長の姪らしい。名字が同じで紛らわしいので、「すずさん」と呼んでいる。

「すずさんおはよう。今日はちょっと早いね。何かあったっけ?」

私が問いかけるとすずさんはくすくすと笑った。

「やだなぁ、美月ちゃん。忘れちゃった?今日はおじさん・・・じゃなかった。院長に勉強を見てもらう日でしょ?」

私はベッドから飛び降りた。

「忘れてた!今日はテストの日だ!」

「今日は何のテストなの?」

「国、数、英、理、社だよ。院長さんが通ってた大学入試レベルだってー。」

「さすがだね。大きくなったら、ここの病院の先生になりたいんだっけ?美月ちゃんと勤務する日が楽しみだなぁ。・・・それじゃあ私は仕事に戻るね。頑張って!」

そう言うと、すずさんは部屋から出ていった。それから少し勉強してから、院長室に向かった。


 テストを終えた私は、ご褒美にもらった本を読んでいた。私は、巷で流行っているライトノベルにはまっている。数年前までは、魔法使いになりたいと言うほどのはまりっぷりだった。

「魔法が使えたら、救える命はたくさんあるのに・・・。」

そうつぶやき、うつむくと、自分の足が目に入った。

「靴、履き替えるの忘れてた!」

ここの病院の院長室は、土足厳禁なのだ。廊下で靴を履き替えなければならないのだが、うっかり忘れていた。院長にばれて怒られたくないので、静かに院長室まで向かった。


 院長室につくと、中から話し声が聞こえてきた。

「そんな!!あんまりです!どうにかならないんですか!?」

すずさんの声が聞こえた。彼女にしては珍しい、悲鳴に近い声にとまどってしまう。

すると、すぐに院長の声が聞こえた。

「どうにかしたいのは、私も同じだよ。でも、こればかりは仕方のないことなんだ。生まれつきの病弱な体。一向に良くならないがんで、これ以上の医療技術はないってほどの手術でも、全く改善される兆しはない。・・・おそらく、美月ちゃんは、2年以上は生きられないよ。」

 

 気がついたら、自分の病室まで帰ってきていた。私は、ベッドの上で膝を抱えた。

「私は、もう2年もしないうちに死ぬ・・・じゃあ、ひとおもいに死んじゃおうか。それなら、これ以上迷惑かけずに済むし、これ以上の親切や、お金を使ってもらうことも気が引けるしね。幸か不幸か、私はたぶん、激しい運動で死ねるから。しかも私の病室は一階だから、脱出は可能。・・・そうだ、神社に行こう。お世話になった人の幸せでも願おうかな。この服じゃ目立つから、こないだ参加したボランティア活動でもらった服を着よう。大きめの者をもらったから、ワンピースっぽくなるはず。神社は、ボランティア活動で行ったことがあるから大丈夫。よし!できる!今日の夜に行こう。とりあえず、今は寝よう。」

そう言って、私は目を閉じた。


 今は22時。15歳以下の患者はとっくに就寝の時間である。見回り時間は21時、24時、3時、7時なので、今が絶好のチャンスである。私はこっそり着替えて窓から外に出た。

「わあぁぁ。初めての脱出!でも降り出しそうだな・・・。それに、夏だから熱いぃぃ・・・。・・・よし。とりあえず、神社まで走ろう。」

私は走り出した。


 約2キロほどだったが、熱が出てきた。

「はぁはぁはぁ・・・。ついたぁ・・・。」

私は力が入らなくなってきた体を精一杯使って鐘を鳴らした。その後、ペシャっと地面に倒れた。私は声も出なかったので、心の中で一生懸命に祈った。

((今まで金銭援助をしてくれたお父さんに幸福を。私を育ててはないけど、産んでくれたお母さんに幸福を。私に知識を与えてくれた院長に幸福を。私に夢を与たえてくれたすずさんに幸福を。精一杯向き合ってくれた病院の人に幸福を))

 意識が遠くなっていく中で、私は最後に願った。

((魔法がある世界に転生したいです!!)


また、場面が切り替わった。

読んで下さり、ありがとうございます。

走馬灯が長くなるのでいくつかに分けます。

ぜひ次話もお楽しみに!

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