表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幻想奇譚

蝉の摂理

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

本日の話。

あんまりいい事をしたとは思ってません。


通りすがりの狐の嫁入り、枯れて実を付けた向日葵、熱帯雨林の様な湿度だけがしとしとと辺りを包みます。掻いた汗が服に染み込んで、肌に吸い付いて、頭は蝉の音色に任せて、くらり、くらり。

そんな中で私は最後の目的地に向かって歩いておりました。階段を越えると、ただ涼しさだけを含んだ風が頬を撫でました。瞬きをしたその後、梅香の君が相対しておりました。

「いらっしゃい、渡」

「……こんにちは、梅香の君」

「話は向こうでしようか」

梅香の君に誘われるままに私は長椅子の端に腰掛けました。日差しを遮る簾、隣から吹き出す水蒸ミスト、それだけが私を淡々と冷静にして下さいます。

縛らくの沈黙のあと、私は口を開きます。

「此処に来る前に蝉を見たのですよ」

石段に仰向けになって、手足をばたつかせ、懸命に生きようとしている蝉を見たのですよ。だから……大変不躾ながら、傘の先の方でこう、くるっと。腹這いに戻したのです。けれどもその蝉は……また仰向けになってしまいました。何度繰り返しても同じ仰向け。遂には諦めて、私はその場を去ってしまったのです。

梅香の君の表情に目を向けると、黙って手を伸ばし静かに私の髪を人撫でして下さいます。何時もは穏やかな双眸に僅かに咎める光があったのは、私の気の所為ではないでしょう。

「渡、それはいけない。遅かれ早かれその蝉は亡くなっていた。君がしてあげる事は引っくり返すのではなく、次の循環に備えて土へと運んで上げる事だよ。無惨に人に踏まれない様に。それが出来ないならば、最初から関わっていけない」

「自然の摂理、だからでしょうか?」

このお社にも、ミンミン蝉、油蝉、(ひぐらし)が懸命に鳴いております。けれども今だけは蜩の、夏の終わりを告げる音だけが、脳裏に響くのです。もう終わりなんだよ。あの蝉も、この夏も、全てお終い。そう仰られている様で、私は奥歯を歯噛み致しました。夏の終わりの蝉の死骸は、どうしてこんなにも切ないのでしょう。

梅香の君はため息でもお付になった様に、ふっと少しだけ息を吐き出します。この終わりを嘆く様に。

「そう。食物連鎖、つまり生き抜く事意外では余り関わらない方が良い。ただでさえ、私達が首を突っ込んでしまっているのだから」

「……気を付けます!!」

「渡はいい子だね」

本日の実話です。

仰向けでもがいていた蝉も、傘の先っちょでひっくり返したのも、結局元に戻ってしまったのも、全部。


遅かれ早かれあの蝉は亡くなるし、してあげる事と言えば踏まれない様に、土に還れる様に花壇の中に隠して上げる事くらいだなーと。

周りほぼ石段だったんで、出来ませんでしたけど。


よく自然の摂理って言うじゃないですか。

でも人間は色んな事して首を突っ込んでると思います。

故の温暖化ですしね。


可愛いからという理由で、小動物に手を貸したい気持ちもあると思います。

でもそこで助けなきゃいけない命は、早いうちに命を落とすんだろうなと。

だったら関わっちゃいけないなと。

そんなこんなで過去を思い出し、テレビを見ます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ