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第55話 次のステージへ

 まずは状況の確認。

 僕らは過激派の連中に取り囲まれていて、女王を取られたら終わり。

 強引に突破するのは無理、魔法かなんかでこじ開けないとな。

 あるいは、ボスを倒すか……試してみよう。


「スクロールコピー、レオン」


 個体名:レオン・クリスカ

 種族:人間


 能力値:▼

 生命力:800

 魔法力:500

 抵抗力:1200

 攻撃力:1200

 精神力:1500


 レベル:42

 所持スキル:『スクロールマスター』『強心臓』『初級光魔法』

『剣技Lv.MAX』『攻撃力上昇Lv.3』『抵抗力上昇Lv.4』

『感知』『耐性Lv.7』『自然治癒力Lv.MAX』

 所持スキルポイント:8


 実績:『能力値:良』『超・魔物殺し』『数多の死線を超えし者』『強き戦士』


「なあマナ、42レベルって強いの? 弱いの?」

「逆に弱いと思う? 人類の上澄みよ。

 Sランク冒険者ぐらいの実力はあるわよ」

「魔王と同じぐらい?」

「そこまででは無いわ、魔王は格が違うもの」


 んーどうしよ、全員でいけば倒せるかもしれんけど周りの連中がなぁ……


「アンタの龍人化ってやつなら、一撃でしょ?」

「いや、アレはまだ使えない。女王を助ける時に使っちゃったからね」

「嘘でしょ……」

「そういう訳でマナ、君のスキルが頼りだ」

「まったく……大型魔法を試してみるから、時間を稼いで」


 時間稼ぎ、アメリとムサシをどうやって動かすかが鍵になるな。

 レオンは過激派をどう動かす?


「前方の者は大楯で防御を固めろ、絶対に逃すな。

 時間をかけるほど俺たちに軍配があがるはずだ」


 なるほど、相手も時間稼ぎに出たか。

 僕らは作戦がバレたら終わり、一方向こうは作戦を大っぴらに言っても平気。

 ジリ貧の戦い、僕らが不利だ。

 でも、僕は更に上を行くよ。


「指示を出したら、出来るだけ急いでいるように動け。

 過激派に、僕らが強引に脱出しようとしている風に見せかけろ」


 小声で彼らに話しかけた後、今度は声を大にして言う。


「アメリ、戦力を削れ! ムサシはレオンとタイマンで勝て!」


 二人がそれぞれの方向に飛び出し、戦う。

 アメリはダメージを受けないようチビチビと削っている。

 一方ムサシはド迫力。レオンとの鍔迫り合いで金属のぶつかる音響いている。

 僕? 僕はマナと女王の警護、ちゃんと役割あるよ。


「……まだ?」

「もうちょっと待って、時間がかかるの」


 マナに進捗を聞くが期待通りの返事じゃなかった。

 こうしている間にもジリ貧は続いているんだが……

 そう思いつつアメリを見る。


「おっと、当たるところでした」

「鬱陶しい、誰か! このエルフに攻撃を当てろ!」

「私は避けるのと奇襲攻撃は得意なのですが、正面戦闘は苦手なのです。

 なので、もうすぐ当たっちゃうかもしれませんね」


 ……あいつ、少し遊んでないか?

 別にやる事やってるから良いんだけどさ。

 ところで、ムサシの方は……


「ふん、強いな。名前は何だったか」

「ムサシ、Bランク冒険者だ」

「ああ、そうそう。思い出した」


 ムサシVSレオン

 今勝ってるのはムサシ……? いやレオン?

 駄目だ。分からん。素人が観戦するにはレベルが高すぎる。

 誰かー! 解説役の人呼んでー!


「ムサシ、俺はお前が気にいった。

 小手先の技や小細工に頼らない、その真っ直ぐな戦い方をな。

 どうだ? 革命軍に入らないか?」

「入らない」

「幹部候補にしてやってもいいのだが」

「入らないと言っている。それ以上無駄口を叩くのなら、斬るぞ」

「やれやれ、どこまでも真っ直ぐだな」


 ふう、ワンチャン裏切るんじゃないかと冷や冷やした。

 あのムサシが軽々にそんな事をするとは思えないけどさ。

 でも「クックック、良い提案だ」とか言ってムサシが裏切る展開も、それはそれで見たい。

 僕らが裏切られる側という点を除けば。


「やっと魔力が溜まったわ、今すぐにでも魔法を放てる」

「いいぞ、マナ。ぶっ放せ!」


 マナは両手で魔力を包み込み、詠唱を開始する。

 それと同時に、彼女の髪が白く染まり始める。


「戦闘になると髪が白色に変わる魔法使い……まさか、噂の『白の戦乙女』か!?」


 過激派の誰かがそう言った。

 白の戦乙女……カッコイイな。


「究極の魔力で敵を貫け! ホワイトレーザービーム・改!」


 魔法を喰らった過激派どもが、ボーリングのピンのように吹っ飛んでいく。

 ……死んでないよね?


「空間ができたわ。さあ、行きましょう」

「よっしゃ、来いムサシ! 戦略的撤退だ!」


 ムサシはバックステップでレオンと距離を取って、そのまま走ってくる。

 それを見たレオンは、呆気にとられた様な顔をしていた。


「ま、待て! まだ戦いは終わっていない」

「うるせ、これでも浴びてろ」


 傷心中の女王を担ぎつつ、右手に魔力を込める。

 せめてもの時間稼ぎだ。


「大サービスだ! ドラゴンズフレア!」


 龍をかたどった魔法の炎をレオンに当てる。

 よしっ! ぶっつけ本番だがちゃんと成功した!


「さようなら、また逢う日まで!」


 こうして僕らはなんとか過激派の包囲陣から脱出した。

 そして、魚の森へと入っていったのだった。




「……逃げられたか」

「レオン様、我々が追いましょうか?」

「いい、これ以上の深追いは無意味だ」

「しかし、女王を放っておくのは――」

「国を捨てて逃げるのなら、もはやあいつは女王では無い、ただの少女だ。

 それに……」

「それに?」

「何の知識も無く魚の森に入れば、ヌシの怒りを買う。

 奴らが生きて出られる可能性も、低いだろうな」




 ーーーーーーーー




 魚の森に入ってから半日が経った。

 今のところ追手は来ていない。

 うまく撒けたか、あるいは最初から追ってきていないのか、どっちでもいいか。


 とにかく、今最も重要なのはこの場所について知ること。

 なんだか不気味なんだよな、この森。

 別に何かが明らかに変ってワケじゃないけど……第六感ってやつかな、雰囲気が他と違う気がする。


「なあ女王、ここってどういう場所なんだ?」

「…………」

「女王? おーい」


 へんじがない。ただの しかばね のようだ。


 というは冗談だが、実際それぐらい反応が無い。

 ってか存在感が無い、一応護衛対象なんだけどな。


「……ん? わらわか?」

「えっと、質問があるんだけど……大丈夫?」

「あ、ああ、わらわに頼るがよい。このクリスカ国の女王に」


 女王、なんだか思い詰めたような顔になってるな。

 心なしか目にクマができてるような気もするし。

 でも、下手に寄り添う様な真似をすれば逆効果になるかもしれない。

 ここは会話を続けるのが得策か。女王も頼って欲しそうな感じあるし。


「魚の森ってなんなの?」

「文字通り、魚が多く取れる森じゃ。

 じゃが、同時に冒険者でも苦戦するような危険な森であるとも聞いておる」

「進路を変えた方がいいかな?」

「いや、ここを行こう。可及的速やかにクリスカ国を取り戻す為、危険でも最短の道を行く必要があるのじゃ」


 自分が危機に晒されるリスクを取ってでも国の為に、か。

 少しだけ、彼女が何故思い詰めているのか分かった気がする。


 この子は、玉座に囚われているんだろうな。

 あるいは、早く一人前になろうとしているのかもしれない。

 彼女は、女王になる運命を背負って生まれたんだろう。

 だからこそ、人一倍のきつい勉学とプレッシャーを背負っているはずだ。

 僕のような一般的な日本人には、想像も出来ないぐらいの責任を。


「やっぱり、不憫だな」


 自然と、女王の頭に手が伸びる。

 ポンと手を置いて、彼女をゆっくりと撫でた。


「な、なんじゃ?」

「いや、頑張ってるなって思ってさ」


 ……あれ、よく考えればこれって余計じゃね?

 もしかしたら僕、ちょっとイタイかも。


「……コウよ」

「なに?」

「少し、ほんの少しだけ、休んでもいいかえ?」

「そうだね、僕もちょうど休みたかったんだ」




 休憩ついでに昼食、今日は焼き魚。

 魚の森という名前の通り、そこら辺を探し回れば大漁に取れた。

 ただ、コイツらは本物の魚じゃなくて……


「いやあ、まさか陸を歩く『魚の魔物』だったなんてね」


 そう、今焼いているコレの正体は「リクザカナ」という種類の魔物。

 最初に見た時はビックリした。なにせのっぺりとした魚にキモ……リアルな足が生えていて、それで普通に歩いてたんだ。

 割とマジで、あの時が一番異世界っぽさを感じたわ。


「で、これって美味しいのか?」

「さあ? 毒は無いようだけれど、味までは保証できないわね。

 でも、冒険者の間では好き好んで食べる人もいるみたいよ」


 そう言い、マナが良く焼けたであろうソレを僕に持ってきた。

「ありがとう」って言いかけたけど、これスムーズに毒見させようとしてるやん。

 まあ、死なないなら食べるけどさ。


「……い、いただきます」


 覚悟を決めて、焼き魚にかぶりつく。

 こ、これは……!


「……パサパサとした、ツナ缶」


 どこかがズレているような気もするが、これ以外に表現しようが無い。

 味は60点ぐらいかな。薄味、塩が欲しい。

 悪くはないけど……うん、悪くないだけ。


「ムサシ、この魔物強かった?」

「いえ、余裕です。体格の大きい個体には手こずりましたが」


 体格の大きい個体……進化した奴かな?

 もしかしたら、そのうち鯨みたいな大きい魔物にも出会うかも……いや、鯨は哺乳類だからちょっと違うか。


「なんにせよ、これなら無事に出られそうだな。

 まったく、なにが危険な森だよ驚かせやがって、絶対何も起きないだろ」

「主様、それはフラグというヤツなのでは……」

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