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第3話 町と襲撃イベントとおっさん

 町の様子は想像通りだった。

 石造りの民家に、活気のある市場、町を巡回する兵士を生で見たときなんか凝視しまくって怪しまれてしまった。

 そんなこんなで色々な物に目移りしながら町を歩いていたら、大きな噴水が建てられた広場まで来た。

 入口からここまでの距離を考えるとこの場所が町の中心なのだろう。


「出来立てほやほやの串焼きだよー!安いよー!」

「売れ残りの雑貨が大特価セール中!ここでしか手に入らない物もあるよ!」

「アクセサリーはいかがですか?職人が一品ずつ心を込めて作った自慢の品々ですよ」


 右を見たら露店、左を見ても露店、聞こえる声は店主のセールストーク。

 流石は町の中心部といったところか、うざったいほどに熱気で溢れている。

 手持ちは金貨が30枚、これがどれだけの価値を持っているかは分からないが、多分いくらか豪遊しても大丈夫だろう、少なくとも今日だけは。

 さて何を買おうかな、っとどうやら胃袋が補給要請を出したようだ。

 考えてもみればもうすぐ日没だし、そろそろ夕食の時間か。


「……! 主様、何かきます!」


 なんとなく周囲を見回していたムサシの目が一点を集中して見ている。

 続けて僕もそちらの方向を見てみると、驚くべきことに魔物の大群が真っ直ぐにこちらへ走ってくる光景が見えた。

 まったく、これから夕食だというのに空気の読めない奴らだ。

 ちゃちゃっと倒して、飯にありつくとしますかね。


 敵の数は、森で見かけたゴブリンが数十体と、その中心に大柄なゴブリンのような魔物が一体。

 恐らくあのでかい魔物が隊長格なのだろう。

 ああいうのは一番偉い奴が死ぬと瓦解すると相場で決まっている。


「っつーわけで、僕はでかいのを叩くから、ムサシ君は雑魚の方をよろしくね」

「どういう訳かは分かりませんが、お任せください」


 二手に分かれて、それぞれの相手に走る。

 ムサシはゴブリン共をバサバサと切り倒し、僕はボスに向けて放つ魔法の準備をする。


「先手必勝! くらえ、ファイアーボール!」

「……」


 やった、と思った。

 だが、顔面に全身全霊の攻撃を当てたのにも関わらず、ゴブリンのボスは何事もないかのようにこちらへ歩みを進める。


 くそっ威力が足りなかったか、いや魔力は十分に溜めた。

 ではなぜだ……いや、そんな事を考えている場合じゃない。

 奴とはもう2,3メートルしか間がない、このままでは……


「おい、そこのオーク!俺の相手をしやがれ!」


 存在感のある聞き覚えがない声。

 その声の方向を見てみると、そこにはおよそ30代ほどの戦士のような風貌をした男が立っていた。

 男はボスに近づいて、そのまま両者とも戦いだした。


「オークを狙うのは良い判断だと言えるが、炎魔法がほぼ無効化されることを知らないのは痛恨のミスだな」


 後ろから来た男が僕へ話しかけてきた。

 この人もさっきの人と同じおっさんだが、どこか気品のある出で立ちをしている。


「大丈夫か?どこか怪我は?」

「あ、いえ、大丈夫で……あっ!そういえばムサシのほうは?」

「君のお仲間なら、そろそろ群れを全滅させているだろう。私が参加せずとも余裕そうだったので、先にオークと戦っていた君を見たほうがいいと判断した」


 とりあえず安心した。

 彼なら大した敵ではないと思っていたが、万が一があるかもしれない。

 ムサシは雑魚を全滅させたようで、腕を振り上げてガッツポーズをしている。

 よほど嬉しかったのか、それとも達成感か。


「メルケル!合図をしたら魔法を頼む!」

「了解だ、アントン……よく見ておけ少年」


 メルケルと呼ばれた彼に聞き返す暇もなく、魔法の準備を始めた。


「漂う魔力よ、我は龍に選ばれし者、そして、魔を操る正当な魔導士なり。我が内なる力と共に今、我の言葉に従い、雷光に姿を変えよ。」


 オークと戦っていた戦士、アントンが遂にその足を切ることに成功した。

 それとほぼ同時に魔法の準備が終わったようだ。


「今だ、メルケル!」

「サンダーボルト!」


 強烈な白い光が舞い、轟音が響く、それが終わった後に見えたのはオークの残骸だった。

 この時僕がどんな表情をしていたかは分からないが、恐らく、自分が苦戦してた相手をたった一つの魔法で仕留めたという状況に、目を白黒させていたのだろう。


「さて、自己紹介をしようか。俺はCランク冒険者のアントン、でこっちは同ランク冒険者であり、俺のバディである」

「メルケルだ。よろしく」


 色々なことが急に起きたので混乱しているが、とりあえずここは、こちらも名乗っておくのが正解か。


「えっと、宮内、あー、コウです」

「コウ様の忠実な配下、ムサシだ」


 つい本名ではなく、あだ名のコウで答えてしまったがまあいいか。

 自分もこっちのほうが気に入ってたし。


「よろしく、特異転生者のコウ」


 握手を求められたが、応じることが出来なかった。

 自分が特異転生者であることを指摘されるとは思いもしなかったので困惑したからだ。


 そして僕の運命をこの2人にかき回されるとは当時は思いもしなかった。

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