第2話 今日のオチは町が見えることです。
元居た場所から歩いて一時間……ぐらい? 未だに周囲には木が生い茂るばかりで町なんかこれっぽちも見当たらない。
歩いていると分かったがここはどうやら森の中らしい。
そして、なんとなく察していたがやっぱり異世界ということで魔物がいた。
というか目の前にいる。
「主様!俺がこいつをやっつけます!」
うん、ありがとうねムサシ君。
でもそいつ、いかにも弱そうなスライムだからそんな気合い入れなくていいよ。
そんな風に脳内でツッコミを入れていると、スライムが突撃する。
スライムの体当たりに合わせてムサシの横薙ぎが炸裂する。
スライムは体が破裂し、そのまま動かなくなった。
「おお、このスライムの残骸凄いプルプルする」
「主様、そんなもの持ってどうするんですか」
「案外売れるかもよ?僕の勘がそう言っているし」
「まあ、主様がそれでいいなら俺も文句はないです」
ムサシ君が納得してくれたところで行動を再開する。
歩くついでにスクロールに目を通していると、あることに気が付いた。
それはスクロール内の機能の1つである獲得可能スキル一覧のページ。
これは所持しているスキルポイントを使うことで新たなスキルを獲得できる機能だ。
一つのスキルを得るのに必要なポイントは1つ、そしてそのスキルをより上位のスキルにするために更に1ポイント使って進化する必要がある。
例えば僕は今、『中級炎魔法』のスキルを持っているが、これを獲得するにはまずスキルポイントを支払い『初級炎魔法』のスキルを入手したのち『中級炎魔法』に進化させないといけないわけだ。
だがいくつか気掛かりな点がある。
一つ目にスキルの進化が制限されていること。
『中級炎魔法』から『上級炎魔法』に進化しようとしても「条件が満たされていません」なんて言われて突っぱねられてしまう。
二つ目に僕のスキルポイントは今あと98ポイントあるため、スキルがめちゃくちゃ取れるということ。
予想としては、この世界は一人が何百個ものスキルを持っているのが普通か、もしくは僕が特別なのか。
後者であってほしいな。
三つ目に明らかに他とは違う、異様なスキルがいくつかあること。
どう異様なのかというとこのスキルを使用しても使用者にデメリットしか与えないというある種制約みたいなスキルになっていることだ。
例として、その内の1つである『自戒』は「スキルが発動している間、このスキル以外の全てのスキルが使用不可能となる」なんてわけわからん効果になっている。
この他にも気掛かりな点は多いにある。
能力値? というものは人によって固定なのかそれとも上げる方法があるのかとか、他の転生者はいるのか、いるとしたらどれぐらいかとか、元の世界の帰り方とか。
いや、あっちでは既に死亡しているから無理なのかな?
というかこれらをいくら考えても結論が出ないんだよね。
その理由はあまりにも情報がないことと、もう一つは……
「グォォォ!」
こんな風にさっきから定期的にちょっかいを出してくる魔物が多いことよ。
緑の肌、いかつい角、荒削りの棍棒、本日数回目のゴブリンさんでございます。
さっきまでは全部ムサシ君にやってもらっていたけど魔法も試してみたいし、今回は僕が相手してあげよう。
よーく手に魔力を集中させて……
「ファイアーボール!」
ゴブリンは凄い勢いですっ飛んでいった……というかゴブリンの残骸が。
反省点があるとすれば火力調整をミスったことだろうか、相手の実力に合わせるのって難しい。
ま、日本人が転生して一瞬で魔法が使えたんだ。
多分、大天才レベルだろうね。
「お見事です、主様」
「ああ、うん。……やっぱり一体倒した程度じゃダメだな」
「主様、何かご不満な点でも?」
ムサシが頭に?を浮かべて質問してくる。
一応こいつに聞いてみるか。
「なあムサシ、お前魔物を倒した後に何か感じた?」
「そうですね……二回ほど、俺が魔物をやっつけた直後に全能感が、こう、上ってくる感覚がありました」
やはりムサシは「レベルアップ」したようだ。
スクロールには個体名やスキル以外にもレベルが記載されていた。
だからこのシステムもあるとは思ったが、これによって一体どんな変化があるのだろうか。
彼がスクロールを持ってさえいれば分かるんだけど、うーん。
「見えてきましたよ、町です」
ムサシの声にハッと我に返った。
森の先に見えたのは、穏やかな流れの川と対岸へ渡るための橋そして……
「町だ!」
その嬉しさに思わず声を出してしまった。
何時間も森を歩いたからこそ、その感動もひとしおだ。