プロローグ
僕は今、布団の中に入っているかのような大きな安心感に包まれている。
目が見えない、耳も聞こえない、何も感じない。意識だけがはっきりとしている。
それでもなお恐怖や驚きの感情がなく、落ち着いている。
僕は巨大な渦の中にいる、何故かそれだけは確信した。
あなたはだれ?
ふいにそう聞かれた、まさしく脳に直接話しかけてくる感じだ。
誰だと聞かれてもねえ、普通の男子高校生で好きなものはゲーム。
最近はキャラメイクを延々としているね。
生まれ変わったら何がしたい?
この質問には戸惑った。
何がしたい?と誰かから問われるのは初めてだ。
分からない、分からないんだ、何がしたいかどうなりたいか。
ピアノを習っている友人は大きなコンクールに出たいと言った。
俳優を目指している兄は何らかの作品の主役になりたいと言った。
でも僕はそういうものがない、将来何がしたいかなんて考えたくないんだ。
いいじゃないか、だらだらとゲームしたって、なんとなく生きてたって。
……向こうからの応答はない、でもこの空間には変化が起きた。
巨大な渦がすごい勢いで回転を始めた、流れに身を任せて僕は渦の中心に向かう。
この先に答えがある気がする。
何故かそれだけは確信した。