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【完結】限界まで機動力を高めた結果、敵味方から恐れられている……何で?  作者: うどん
第三章:希望の星は、流れ墜ちていく

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082:公国軍人としての責務

 船から去る事を皆に伝えた。

 驚き戸惑いながらも、彼らは俺の状況を考えて納得してくれた。

 最早、船の中も安全とは言えない状況で。

 唯一、俺が安全に生活する為には、国家に属するしか道は無かった。


 まぁ納得はしてくれても、寂しいものは寂しい。

 その日の夜は、皆で一緒に集まって楽しく過ごした。

 酒を飲み、歌を歌って、最後の一時を楽しんだ。


 トロイは、また会えると言ってくれた。

 マルサス君も兄と一緒に待っていると言ってくれた。

 オッコは、レノアと共にゴースト・ラインの情報を集めると宣言していたな。

 レノアはそれを聞いて悲鳴を上げていたけど……アイツ等らしいな。


 最後の時間はあっという間に終わる。

 俺はマクラ-ゲン中佐と共に、待機していたヘリに乗り込んだ。

 仲間たちは笑顔で手を振りながら俺を見送ってくれて……約二名、同行していた。


 チラリと目を向ければ、揺れるヘリの中で器用に爪の手入れをする女子高生が一人。

 そして、俺の隣にはヘッドフォンを装着して目を閉じ音楽を聴いている相棒がいた。

 何故か、この二人は俺と共に公国へ行くことになっていた。

 ヴォルフさんに理由を聞けば、彼は真顔のまま何も言わなかった。

 マクラ-ゲン中佐は「気心の知れた人間がいた方が良い」と言っていて。

 彼女なりの配慮なのだろうと思いながら、俺は付いてきてくれた二人に心の中で感謝していた。


 公国に着けば、俺は晴れて軍人となるのだろうか。

 今までは傭兵と名乗っていたが、結局はメリウスのパイロットというだけで。

 軍人という職業について、俺は何も知らない状態であった。


 果たして、俺は上手くやっていけるのだろうか?


 俺はヘリの中で考えながら、ゆっくりとマクラーゲンさんに視線を向けた。

 彼女は優雅に本を読んでいる。

 何を読んでいるのかは分からないが、難しそうな内容の本であった。

 タイトルからして俺には難解そうな気がするそれ。

 俺は話しかけてもいいのかと迷いながらも、意を決して彼女に声を掛けた。

 マクラ-ゲン中佐はゆっくりと視線を向けてきて、どうかしたのかと俺に問いかけてきた。


「……その、俺、軍に入った経験が無いんですけど……やっていけますかね?」

「……難しく考えないでください。表面上は貴方は軍人となりますが、私との関係は変わりません。今まで通り接してください」

「え、で、でも。仕事とか」

「勿論、仕事はしてもらいます……仕事さえしていただければ、貴方にそれ以上を求めることはしません。まぁその仕事いうのが、普通の人間からすれば難しい事ですが」


 彼女はにこりと笑いながらそう言った。

 仕事というのは、やはり戦う事だろう。

 要するに、きちんと敵と戦って勝てば、俺に軍人らしいふるまいを求める事はしないのか。

 まぁ今から礼儀作法や軍の規則を教わったところで、覚えられる自信は無い。

 その点に関しては、俺にとってはありがたい条件であると思えた。

 

 小さく揺れるヘリの中で、俺は遠くの景色を眺める。

 離れていく母艦を眺めながら、俺は目を細めて――



 ~~



 公国に着いて偉い人たちから歓迎されて。

 軍服を着させられて軽いテストを受けさせられた。

 その結果は合格であり、俺は晴れて公国軍人となる事が出来た。


 配属されたのはマクラーゲン中佐指揮下の部隊であった。

 正式名称は公国空軍第08大隊の中の第一中隊である。

 彼らは主に前線にて戦闘をしていたようだ。

 しかし、先刻の帝国との大規模な戦闘にて第08大隊も再編成を余儀なくされたと聞く。

 今は新兵の訓練をする為に、大隊規模での作戦行動は控えさせられているようだった。


 再編成までの時間は一か月ほどで完了するらしい。

 元々、公国内では新兵の訓練に力を入れていて。

 新たに技術や知識を教え込む必要はそれほどないらしい。

 優秀であるからこそ、上を目指す野心も高いようで。

 マクラ-ゲン中佐は、そんな新兵に負けないように頑張ってくれと俺に言った。


 

 そうして、現在――俺は戦場にいた。


 

 前線より離れた場所に作られた前哨基地。

 冷たい印象を覚えるコンクリートで出来た基地の中を歩いていた。

 カーキ色の軍服に袖を通して、服の下にはパイロットスーツを着用している。

 何時でも出撃できるようにスーツは常に着ておけと釘を刺されて。

 先輩たちからの熱烈な”歓迎”を受ける毎日で、俺は頭をくらくらとさせていた。


「……ぅぅ、飲み過ぎだ。アイツ等の胃は鉄製か? たくよぉ」


 がばがばと浴びるほど酒を飲んでも、翌日にはケロッとしている先輩方。

 恐ろしいほどの酒豪であり、あの人たちに付き合っていれば命が幾つあっても足りない。

 同じ部隊の仲間であるイサビリさんたちが、気が付けばいなくなっていたのも何となく理解できた。


「……今日は断ろう。絶対に断ろう」

「――何を断るんだぁ?」

「……お、お疲れ様です。アイン・ガードナー軍曹殿!」

「あぁ? 固いぞぉ。アレだけ飲んでもまだ友情を感じねぇなぁ。よし、それじゃ今日も」

「――ガードナー軍曹! あそこに大隊長殿が!」

「何ィ!!?」


 適当に後ろを指さしてやれば、もじゃ頭に褐色の肌の髭軍曹はキョロキョロと視線をさ迷わせた。

 色ボケ先輩に構っている暇は無い。

 俺はさっさとバンカーに行くためにそろりそろりと足を動かした。


 その時に、基地内にけたたましい警報が鳴り響く。


 緊急出動の合図であり、髭軍曹はキッと目を鋭くさせて俺の肩を叩いた。

 いくぞという意味であり、俺は先輩の後を追う。

 勢いを衰えさせたとはいえ、未だに帝国は戦いを挑んでくる。

 水面下ではマクラ-ゲン中佐の穏健派が和平交渉を進めているようだけど。

 未だに帝国と公国の強硬派が戦争を進めようとしているのだ。


 それに、以前、妙な話を聞いた。


 イサビリさんが俺に教えてくれた情報だが。

 敵の数が増えつつあるというのだ。

 帝国は傭兵を雇うほど兵力が乏しい筈なのに、兵士が増えているのは妙だった。


《帝国は無人機を打倒されて。次の一手を打ったのかもしれない……我々はそれを危険視して、魔神を打ち破ったお前の力を求めた》


 イサビリさんは正直な人間だった。

 眉一つ動かさずに、俺の力を利用するとハッキリ言ったのだ。

 初めて会った時の印象は最悪だったものの、あの人のものの考え方は好きだ。

 ハッキリと言ってくれるので、身構えなくて済むから。


 兎に角、帝国はまた何か策を巡らせたに違いない。

 ゴースト・ラインが関わっている可能性は大いにあるだろう。


 前線に兵士を送り込んでくるのは何か狙いがあるのか?


 停滞気味であった前線に動きが出始めている。

 にらみ合いが続くと思っていれば、前のように侵攻してくるのだ。

 それが出来るのは国力に余裕があるからか……いや、違うな。


 公国も帝国も、あの戦争によって力を大きく減らされた。

 大規模な戦闘をする余裕も、前線に休むことなく兵士を送る事も不可能である筈だ。

 それなのに、兵士を送り続けられる余裕があるのは……バンカーに着いた。


 俺は軍服を脱いでから、パイロットスーツを表面に出す。

 控えていたスタッフは脱ぎ捨てられた軍服を回収して、俺たちの武運を祈ってくれた。

 整備スタッフの中にはゴウリキマルさんもいて。

 彼女に声を掛ければ、雷切の整備は万全だと教えてくれた。


 前哨基地に着て、初の仕事となる。

 一週間ほど此処にいて、仕事が無いのではないかと心配していたが稀有だった。

 コックピッドに乗り込んでバーを下げる。

 そうして、AIからの挨拶を受けながら、カタカタとコンソールを操作する。


 システムに異常は無く。AIによる簡易サーチにも異常は検知されない。

 コアの出力は安定していて、スラスターの調整も問題なかった。

 姿勢制御システムも良好であり、センサー類の動作確認も合わせて済ませた。


《よぉマサムネ上等兵。それが噂の新型か》

「えぇ相棒の雷切です……ちょっと目立ちすぎますか?」

《はは! 気にするな。目立てば目立つほど、お前の仕事は捗る。何せお前の仕事は遊撃だ。敵の狙いを全て引き受ける気で臨んでくれ。もしも初仕事がうまく行ったら、その時は……最高の酒をお前に》

「あ、通信が――音が、聞こえ――」

《お? 通信機の不調か――》


 ぶつりと通信を切断する。

 AIから通信装置に異常は無いと言われる。

 俺は無言のまま、ショーコさんに通信を繋いだ。


《はいはーい。どうしたの、おじさん?》

「……ガードナー軍曹に帰ったら酒盛りだって言われた」

《……ガンバ!》

「ちょ、ま――き、切れた」

《無理も無いと思います》

「……え、AIにまで見放された」


 最早、俺がアル中に変えられてしまう未来は確定のようで。

 俺はガックリと肩を落としながら、誘導員の指示に従って機体を動かした。


《マサムネ。お前の仕事は敵を一手に引き付ける事だ。マクラーゲン中佐の顔に泥を塗るような失態は犯すな》

「……了解です。イサビリ中尉」


 遊撃とは聞こえが良いが、要は暴れまわればいいのだろう。

 軍人としての連携も知らないし、今から学んでも遅い。

 だからこそ、個としての力を充分に扱えるように遊撃という役割を与えてもらった。


 軍人としての働きは期待しないで欲しい。

 でも、傭兵としての経験であるのなら――十分期待してもらおうッ!


 誘導員の合図により、俺はペダルを一気に踏んだ。

 スラスターが音を立てて推進剤を燃やして機体を前へと進める。

 凄まじい加速によって機体は上昇していき、一気に空へと飛びあがった。

 俺は久方ぶりの大空に歓声を上げながら、仲間たちの編隊に加わる。

 イサビリさんから声を押さえろと注意されて、俺は小さく謝罪をした。


 イサビリさんとの通信を切れば、気を見計らったかのようにAIが声を掛けてくる。


《武装が更新されました。プロミネンスバスターからアサルトライフル――”レイジング・ソル”に変更されました》

《レイジング・ソル?》

《ゴウリキマル様が設計された突撃砲です。実体弾での運用で設計されていた本武装を改修し、雷切のエンジンである”プロメテウス”により生成された熱エネルギーをコアである”未来”により凝縮し、弾頭として使用しています。特殊なシェルを使う為、残段数には限りがあるのでご注意を》

「……つまりエネルギー弾を使うアサルトライフルってことか?」

《その通りです》

 

 やや特殊な形状をしているレイジング・ソルと呼ばれたアサルトライフル。

 銃身は短めで、胴体部分が太くマガジンも変わった形状をしていた。

 弾倉には250発の弾丸が込められていて、予備のマガジンを入れれば……1000発か。

 

 武装の確認の終わらせて、俺は息を吐く。

 そうして、眼前に広がる景色を眺めていた。

 

 自由に大空を飛びながら、暗雲が立ち込める前線に目を向ける。

 無人機は倒した。次の相手は人間で、帝国軍人が俺の相手になる。

 例え、生きた人間であろうとも俺は戦う。

 操縦レバーを握りしめながら、俺は笑みを深めた。

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