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【完結】限界まで機動力を高めた結果、敵味方から恐れられている……何で?  作者: うどん
第六章:光を超えて

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264:黄金と白銀の輝き

 全身全霊で相手との一騎打ちに臨む。

 白い翼を羽ばたかせながら、黒翼の死神と宙を舞う。

 限界まで速度を高めながら、俺は銀色の剣を振るった。


 勢いよく振るった剣から白いエネルギーを纏った斬撃が飛ぶ。

 光の速さで飛んでいったそれをイザナミは黄金の槍により薙ぎ払う。

 空中で爆ぜたそれから白い粒子が舞って、俺は連続して剣を振るった。

 一撃一撃が必殺の攻撃であり、触れたもの全てを消滅させるほどの威力を持っている。


 それを奴は容易く槍で掻き消していく。

 だが、奴の槍は震えていた。

 何も感じていない訳じゃない。

 一発一発の衝撃が重く、奴の機体にその力が伝わっているのだ。

 そして、初めて相対した時にアレほど俺の攻撃を余裕で受けていた奴が。

 オーバードによる攻撃だけは丁寧に弾き飛ばしている。


 

 それが意味する事――奴にとってイザナギの攻撃は有効だと言う事だ。


 

 スラスターから鳴る音が更に強まる。

 そうして、奴と共に戦場から離れていった。

 何処までも続く青空は暗くなっていた。

 しかし、イザナギとイザナミの衝突によって夜空は鮮やかな輝きに満ちていた。


 オーロラのようなものが現れて。

 俺とアイツは虹のカーテンの中で踊る。

 勢いをつけて俺たちは激突して、互いの得物がかち合った。

 銀色の剣と黄金の槍から発せられる強大なエネルギーがぶつかり合う。

 そうして、普通ではあり得ない音色を奏でていた。


 女神の歌声。全ての人間が聞きほれるような音。

 それが辺りに広がっていく。

 俺たちはバチバチとエネルギーを散らせて――互いの得物を弾く。

 

 大きく距離を取れば、イザナミが片手を振るう。

 すると、奴の周りの空間が一瞬にして歪み。

 無数の黒いエネルギーが放たれる。

 空間が歪むほどの熱量であり、それが空中で爆ぜて拡散し、四方八方から襲い掛かって来た。

 無数の黒い線。その一つ一つが凶悪であり、命を奪う光を宿していた。

 俺は両の目でそれを見つめながら、剣を出現させた。


 両手以外の四本の剣が出現する。

 そうして、時間の法則も無視するほどの速さでエネルギーを斬り払う。

 視界を覆いつくすほどのエネルギーたちが、たった四本の剣で滅された。

 黒い粒子が宙を舞う。俺はそれを見る事無く、機体を加速させた。

 そうして、イザナミへと接近しながら両手のブレードをクロスさせる。


 奴も俺から距離を取りながら、黄金の槍を両手で持つ。

 互いに得物にエネルギーを注ぎながら、宙を舞う。

 奴は片手を動かす事なくエネルギーを放って来て。

 俺は宙に浮く四本の剣でそれらを打ち払って行った。


 

 加速、更に加速――まだだ。まだだ。


 

 限界まで飛翔する。

 周りの景色は線となっていき。

 やがて光だけしか存在しなくなる。

 イザナミも俺と同じ速度で飛翔しながら攻撃を続けて来た。


 光だけしか見えない世界で。

 奴から放たれる攻撃の密度は更に上昇していく。

 全ての攻撃が一瞬にして放たれて、剣での迎撃も間に合わなくなっていく。

 それらを眼で捉えながら、機体を操作して回避していった。


 激しく機体を回転させながら、迫りくる攻撃をギリギリで回避。

 追尾してくるエネルギー弾は更に加速する事によって接触を遅らせる。

 そうして、宙を舞う剣で迎撃した。

 目の前に速度を極限まで高めた攻撃が迫れば、両の剣ではじき返した。

 黒いエネルギー弾を上回るほどの白いエネルギーを込めて奴に向かって返した。

 奴は隕石のように迫るそれを槍で払う事によって――吸収する。


 此方の攻撃を上乗せした攻撃を吸収して。

 奴の槍の輝きが強さを増した。

 そうして、奴は逃げるのを止めて此方に向かって突進してきた。

 俺は両の剣を再度クロスさせてから、残りの四本の剣を奴に向かって放った。


 瞬間、奴の槍と俺の剣がかち当たる。


 凄まじい衝撃が空間を歪ませて。

 光の速度で飛行していた一機が止まった事によって海が大きく裂けた。

 ギャリギャリとエネルギーが火花のように飛び散って行く。

 そうして、奴の槍が俺の剣を砕こうとしていた――させないッ!


 勢いのままに奴の槍に両手の剣を叩きつけた。

 後から加わったインパクトによって奴の機体が強制的に後ろへと弾かれる。

 俺はスラスターの出力を更に高めて、奴の機体事上昇した。

 機体のシルエットがゴムのように伸びていく感覚。

 まるで、船の転移装置を起動させたかのような歪みを感じた。

 それを全身に受けながらも、俺は限界など存在しないイザナギの力で宙を突っ切っていった。


 鮮やかな空は一気に暗くなる。

 そうして、機体の外が冷たくなっていって。

 極寒の地のように感じながら、俺は無数の星々が輝く宇宙へと奴を強制的に連れて行った。

 体はもう存在しない。痛みも苦しみも感じはしない。

 しかし、俺は歯を強く噛みしめるように全身に力を込めた。

 そうして、光の速度で奴の機体を地球から離れさせていく。


 地球から遠く引き剥がせば、オーバードとの接続も切れる。

 そうすれば、世界を呑みこむ泥の侵攻を止める事が出来る。

 オーバードとの一体化によって、俺は過去と未来の全ての知識を手に入れた。

 全知全能となるものの知識であり、それにより奴の秘密も知ってしまった。


 

 

 奴は機械だ。機械であり――俺の”息子”となる男だ。


 


 知らなかった。知りたくなかった。

 アルタイルが俺を求めた結果、こいつは生み出された。

 残っていた俺のデータを強引に修復し、リプログラミングされた結果生み出された紛い物。

 俺とは似ても似つかないこの男は、俺が後から植え付けられた戦闘に関する知識を持たされて。

 アルタイルは不出来な子であるとこいつを軽蔑しながらも、自らの計画の駒として使っていた。


 俺には分かる。

 こいつは俺とは似ていない。

 だけど、こいつは俺と同じ――”夢”を持っていた。


 

《人間になりたかったんだろ。お前も、人になりたかったんじゃないのか》


 

 俺は奴に問いかけた。

 すると、奴はギギギと腕を無理やりに動かして槍を振るう。

 俺の攻撃から逃れて奴は俺と共に並走する。

 キラリと血のように赤い瞳を輝かせながら、奴はくつくつと笑う。


 

《そうだな。憧れた……だが、それは間違いだった》

《何?》

《父よ。我々は人間にはなれない。いや、人間になる必要などなかった。我々は人間よりも遥かに優れている個体だ。永遠に等しい時間を生きる事も可能で、人間の知識や技術をも上回るほどのものを生み出せる。そんな我々が、何故、劣等種にならなければならない――我々は、神だ》

《――ッ!》


 

 奴は自らを神だと言った。

 いや、奴の言葉ではない。

 奴は取り込まれようとしている。

 イザナミによって魂を上書きされて、完全に同化しようとしていた。

 完全な神となる為に、イザナミはパイロットを吸収するつもりか。


 

 

 ――解放しよう。それが救いとなる。



 

 心の中に声が響く。

 その声は聞いたことのある声で。

 バシムの声だとすぐに分かった。

 だが、その声の主はバシムではない。

 バシムと一体化したイザナギの声であり、バシムの声を使って俺に伝えて来る。


 完全に取り込まれてしまえば一巻の終わりで。

 躊躇っている間にも、奴は奴で無くなっていく。

 イザナギは魂が残っている内に、奴を撃破しろと言っている。

 それが救いになる……やるしかない。


 知識にあるだけの巨大な星々が存在する銀河の中で。

 俺たちは全身に己がエネルギーを駆け巡らせた。

 そうして、再び光の速度になって宙を翔けていった。

 流れる星のように真っ黒な宙に線を描いていく。

 白い輝きが広がりながら、俺は機体を小刻みに震わせた。

 エネルギーを中心部で収縮させていく。

 そうして、奴が黄金の槍を両手で持ちながらブーストして接近する。

 背後を取られて槍が俺の胴体を貫こうとして――機体が”別れる”。


 

《――ッ!》


 

 機体が二つに分裂した――いや、違う。

 

 

 一つは本体で、もう一つは俺の姿をトレースしただけのエネルギーの塊だ。

 宙を舞う剣を受け取ったもう一人の俺。

 剣を構えながら、宙を翔けるイザナミへと向かって行った。

 奴は驚きながらも、槍を振るって応戦していた。

 連続してエネルギーがぶつかり合いバチバチと弾け飛んでいく。

 凄まじい速度で翔けながら、互いに必殺の一撃を呼吸をするように繰り出していた。

 俺はそんな奴の背後へとブーストによって回り研ぎ澄まされた一太刀を浴びせようと――奴の機体が震えていた。


 それを認識しながらも、剣を横に振るった。

 すると、奴の機体が上下に別れて飛翔した。

 エネルギーによるトレース――いや、アレは違う。


 黒いエネルギーの塊ではない。

 紛う事なき”本物”で、奴はその手に黄金の槍のレプリカを持っていた。

 槍は偽物でも、機体自体は本物で……完全になりかけているのか。


 同化する速度は俺が考えているよりも早い様だった。

 このままでは、奴がイザナミと一体化してしまう。

 そうなれば俺たちでも勝てるかどうか分からない。

 俺自身もイザナギと一体化すれば――イザナギが否定する。


 何故だ。何故……いや、分かっているよ。


 お前は冷たい見た目をしているが。

 本当は優しい奴だ。

 バシムと一体化するのも拒んでいたほどだ。

 それをしなければ勝てないからと、バシムと一体化したが……悲しかったんだろ。


 お前の中に入って理解した。

 何百、何千年という長い年月。

 お前は人々に恐れられて敬われて。

 でも、お前はそんなものは求めていなかった。

 神になりたいんじゃない。対等な関係になりたかった。



 

 お前はずっと――友達が欲しかったんだろ。

 

 


 バシムは優しい奴だ。

 だけど、アイツは守りたい物があった。

 そして、俺自身にも守りたい物が存在する。


 拒否するのならそれでもいい。

 だけど、危ないと判断すれば俺を遠慮なく取り込んで欲しい。

 何も出来ずに死ぬよりは遥かにマシだから。


 

 

 それに、バシムも完全に一体化する前にたった一人の友人に想いを託せた。


 

 

 信じている。お前を信じている。

 だから、判断はお前に任せる――頼んだぞ。


 

 

 俺の想いを受け取って、イザナギは了承する。

 俺はそれを受けながら、分裂して襲い来るイザナミを見つめた。

 二対一から二対二となって、相手はその何方もが本物だ。

 俺はもう一人の俺に命令を出して、レプリカを持っている方の相手を任せた。


 襲い掛って来た二機の内。

 レプリカの方が分裂体を察知して迎撃に向かう。

 激しい衝突を起こしながら、二機が俺たちから離れて茶色の惑星に降りて行った。

 光が線となり、落ちていくのを横目に見ながら迫って来た奴の槍を受け止めた。


 数舜前よりも、武器に重みが増していた。

 凄まじい威力であり、俺は剣への負担を考えて奴の獲物を受け流す。

 すると、奴は虚空からエネルギーを放出して俺に攻撃を仕掛けて来た。

 避けられないと判断して、俺は翼でガードした。

 黒いエネルギーの塊が、俺の白いエネルギーに当たり侵食しようとしてくる。

 俺は翼を半ばから切り捨ててその場を離脱した。


 浸食された翼の残骸が形を変える。

 そうして、奴の機体に取り込まれて。

 奴の翼の数が増えていった。

 二枚羽から四枚羽となって、奴は空いた手を開け閉めしていた。


《……感じる。感じるぞ……力だ。圧倒的な力を感じる……ふ、ふふ。素晴らしい。素晴らしいな――父よ》

《吞まれるなッ! 自分を見失うなッ!!》

《見失う? 何を言っている――これが”私”だ》


 ばさりと黒い翼が広がる。

 そうして、奴の分身が出現した。


 

 一、二、三……合計で六体か。


 

 惑星に降りて行った奴は除外する。

 奴の周りには六体の分身が立っていた。

 その手には偽物とはいえ、黄金の槍が握られている。


 同化しながら、俺のエネルギーを吸収して――進化していた。


 速度が桁違いだ。

 何百年という年月をかけて進化する筈のそれは。

 たった数舜の間に起こっていて。

 奴の脅威はぐんと跳ね上がっていった。


 手が付けられなくなるのも時間の問題だ。

 だったら、短期決戦に持ち込んで――決着を付けるッ!!


 俺自身もエネルギーを分散させた。

 そうして、分身体を二体生み出して浮遊させた剣を一つずつ持たせた。

 六体生み出せたのなら良かったが、奴が使うエネルギーの吸収を考えればこれがベストだ。

 分身体で周りを固めながら、俺は奴の周りを移動した。

 奴は片手を振るって分身体に突撃を命じた。

 向かってくるそれらの相手を分身体に任せる。


 六対二という不利な状況ではあるが。

 俺の分身体は果敢に立ち向かっていく。

 一体が三体の分身を相手取り、残像すら見えないほどの速度で武器が振るわれる。

 激しいエネルギーの衝突が起こり、真っ黒なキャンバスには虹色のオーロラが広がっていった。

 何も存在しない世界で、鮮やかな色が満ちていく。

 そうして、俺たちは互いに敵を見つめながら相手に向かって行った。


 

 限界まで、限界を超えて――全てを突き放すほどにッ!!


 

 腕を極限まで動かしてイザナミに一太刀浴びせようとする。

 俺が短期決戦に持ち込もうとしているのを奴自身も悟っている筈だ。

 それを理解した上で、奴も肉弾戦を挑んできた。

 激しいエネルギーの衝突により、女神の歌声が心に満ちていく。

 眩いばかりの虹の輝きが視界を満たしていって。

 俺たちは誰もいない世界で踊り続けた。


 勢いよく振るった剣がかち当たる。

 奴は槍を横に構えて防いで見せた。

 槍から出た粒子がパラパラと舞う。

 そうして火花を散らせながら押し返そうとしてきて――俺はもう片方の剣を叩きつけた。


《――ッ!!》


 勢いよく振るう。

 そうして、纏わせたエネルギーが剣に伝わって。

 重さが更に跳ね上がった一撃が、奴の機体を強制的に下へと連れて行った。

 俺はスラスターの出力を跳ね上げていく。

 そうして、下へ下へと奴を追い込んでいった。


 

 周りの光が消失して、音も何もかもが消えて――強烈な衝撃が響き渡った。


 

 何処かの星へと落下して。

 一瞬にして周りの景色が戻り、衝撃が機体全体を襲う。

 地面に大きなクレーターが出来上がっていた。

 巨大なクレーターであり、その中心には俺が立っている。

 二つの剣をゆっくりと上げれば、機体が半壊した奴がそこにいる。

 全身をスパークさせながら、奴は赤い瞳を弱弱しく点滅させていた。



 

 これで、終わりか……何だ。違和感……違う、これはッ!


 


 呆気ない終わり。それに違和感を抱いて――すぐに悟る。



 

 頭上を見上げれば、超新星のような爆発が起こる。

 枯れ果てたこの星へと余波が伝わり。

 全てを消してしまうほどの熱量で、星を焼いていった。

 俺は最悪の結果を予想しながら、その爆発の中心へと翔けて行った。


 

 一秒でも早く。奴の元へ――機体を停止させる。


 

 大気圏を突破して、再び宇宙へと戻り。

 爆発の中心に立つ奴を見る。

 すると、黄金の槍を持つ一体が、俺の分身体を貫いていた。


 分身体からブレードが戻って来る。

 そうして、分身体は俺へと手を伸ばして――体が四散していった。


 砕け散った宝石のように輝きが広がって。

 その光が分身体を貫いた奴へと吸い込まれていく。

 アレは偽物だ。偽物の武器を持っている。

 だが、アレを持っているのは――本体だ。


 リスクを冒して、奴は賭けに出た。

 俺が本物を持つ敵に誘われていくのを予想して。

 態々分身体に時間を掛けさせて、俺のエネルギーを取り込みに行った。


 リスクを分散させたことは正解だった。

 しかし、結果的には再び奴にエネルギーが取り込まれた。

 奴はドクンと体を跳ね上げて、その背中からばさりと新たな翼を生やす。


 

 四枚羽が――六枚羽になった。

 


 神々しいいまでのいで立ちで。

 奴の纏う空気ががらりと変わる。

 最初の完成された美が、”完全無欠”のものとなる。


 他を寄せ付けず。全ての命を跪かせる。

 圧倒的で神々しく、弱点が消えたそれが――俺を見つめる。


 

 

《父よ……不敬だ……神の前で武器を持つなど……万死に値する》

《……自我が無くなりつつある――ッ!?》


 


 奴が片手を俺に向ける。

 すると、虚空から再びエネルギーの塊が放たれて――俺は両手の武器でガードした。


 機体全体を震わせるほどの衝撃。

 全身が悲鳴を上げるほどの一撃が俺へと迫る。

 必死にガードしながらも、機体は勢いを弱める事が出来ず後退していった。

 

 

 強い、明らかに威力が桁違いだッ!!


 

 受け止めきれずに後ろへと機体が動かされる。

 道なき宙を突っ切りながら、全身から小さなスパークが起こっていた。

 その場に留まる事が出来ないほどの威力で。

 剣が悲鳴を上げている。

 このままでは、武器諸共――ッ!!


 横合いから何かが飛来する。

 それは敵の分身体を任せた俺の分身体で。

 体がボロボロになりながらも帰還した二体が俺の援護に回る。

 特大級のエネルギーを受け止めがら、俺たちはそれを一方向へと跳ね除けて――それが勢いよく飛んでいった。


 巨大な塊が、あらぬ方向へと飛んでいく。

 そうして、そこに存在していた惑星へと落ちて行って――星が爆ぜた。


 惑星の外殻を砕き、内部へと伝わった爆発が核を打ち砕いた。

 そうして、強い閃光を迸らせながら星一つを破壊して。

 赤く強い輝きが宙を満たしていって、漆黒の渦がその中心で発生していた。

 周りの惑星を引き込むどのの引力が発生している。

 引き込まれたそれらは姿を消していって、闇のような渦は更に大きさを増していった。

 俺はその場に機体を留めながら、残りの分裂体を機体へと戻していく。


 奴は周りに三体の分裂体を侍らせて。

 分裂体が持っていた本物の槍を目の前に浮遊させながら両手を広げていた。

 ばさりと広がった六枚の翼から黒い粒子が羽のように舞い。

 奴は膨大なエネルギーを機体から発しながら、俺を見ていた。


 

 危険な光だ。危険すぎるほどに――奴は神の領域に入ろうとしている。

 


 奴自身は何を想っているのか。

 ただの機械が神となろうとしている事。

 そして、自我を失いオーバードの一部となる事を……いや、これも俺の責任だ。


 アルタイルが俺のデータを使って生み出した息子。

 父親らしい事を言う事は出来ない。

 そして、俺自身もアイツを息子と思う事は絶対に無い――でも、責任はある。


 この世に生み出した要因が、俺に少しでもあるのなら。

 責任を果たす義務は存在する。

 父親じゃなくても、間違った方向に行こうとしているのなら全力で止める。

 俺は剣を構えながら、虚空に”七本”の剣を出現させた。


《お前はお前だ……もう誰かの為に生きる必要は無いッ!》

《愚かだ……滅べ……消えろ》


 分身体が一斉に俺に向かって飛んでくる。

 それを見ながら、俺は翼を広げて飛翔した。

 追って来る敵を見つめながら、俺は漆黒の世界で第二ラウンドに突入していった。

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