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フーリ国へ

一人の行動で、世界は変わる

 陽聖は夢の中で、とある悪魔と話していた。悪魔は、陽聖に魔法陣を差し出す代わりに、力を貸して欲しいと言った。悪魔は、満身創痍な状態で、他に頼ることの出来る人間が居なかった様だ。


 いつもの陽聖なら、例え相手が悪魔でも力を貸していただろう。だが、もし力を貸さなかったらどうなるのだろうか。力を貸すと言って、裏切ったらどうなるのだろうか。幾つもの未来を想像しながら、陽聖が選んだ答えは、


「わかった、力を貸すよ。ただ、力を貸すだけでは、面白くないだろう?そうだな…今日から君が王になってよ」


 自分が思ってもいないことを、夢の中の陽聖は言った。そして、悪魔は王の座に座ると、悪魔が救いたかった国は、滅んでしまった。


 いつもの夢ならば、自分の意志で物語を変えることが出来た。だが、この物語は修正出来ないらしい。まるで夢の中の自分が、この物語を見せたかったのかもしれない。


 廃れた街で、一息ついている自分に問いかける。


「お前は、王を捨てて何になりたかったんだ?」


「何だろうな、普通の生活というものを、したかっただけかもしれないな」


 すると、時が戻される様に、様々な光景が見えてくる。ほとんどの光景が戦っていた。血だらけになりながらも、陽聖は刀で誰かを守っていた。だが、途中で一人の少女と旅をした光景が続いていく。その少女の事を知らないはずなのに、名前は覚えていた。


「雫か、俺は君を愛していたよ」


 すると、その少女は笑ってくれた気がした。自分が泣いていることに気づくと、現実世界に戻っていた。






「柔らかいな。枕変えたっけ」


 今、目を開けると、何故か涙が止まらない気がしたので、閉じたまま自分の状況を確認する。枕はスベスベで、少し暖かった。寝返りをすると、柔らかいものに阻まれてしまったので、首が曲がって痛い。


 現実に戻されたと感じたので、起き上がろうとすると、何かにぶつかった。


「起きるなら目を開けてからにしなさい」


 目を開けると、氷聖が膝枕をしてくれていたみたいだ。そして、カタカタと音がしているので馬車に乗っているということも理解した。


「悪い」


「まあ、別に良いわ」


 氷聖は、髪をクルクルしていた。この行為は、感謝をしろという合図だった。


「ありがとう。氷聖が一番だよ」


 とりあえず褒めると、不機嫌な態度になった。理由が分からないので、周りを見てみると、もう一台の馬車に沢山人影があった。


「名前で呼びなさい。許可します」


 痺れを切らした氷聖は、少し怒っているようにも見えるが、顔色は良かった。


「文花ちゃん」


「ちゃんは要らないわ、陽光」


 今度はちゃんと怒られてしまった。久しぶりの再会だったので、雑談が弾んでいた。特に、雷都に来た宵姫が暴れているらしく、相手が相手なので、手は出せないと嘆いていた。宵姫らしいと思いながら外を見ていると、車が並行して走ってきた。


「そろそろ着きますので用意してください」


 見知らぬエルフに、車から声をかけられると、前方に大きな都市が見えてくる。アーリル国では無いと悟った陽聖は、寝る前の事を思い出す。


「フーリ国か。森の中をずっと走ってるなと思ってたんだよね」


「私が返事をしておいたから、失礼は無い筈よ」


「それはどうも」


 フーリは、世界で二番目に栄えている都市だ。だが、王族が住んでいる場所は、フーリの隣に位置する、ルートと呼ばれる場所だ。





 ルートにある城の入り口に着くと、派手な格好をした、アーレイトが出迎えてくれた。エルフは質素を好むと聞いているが、アーレイトだけは、派手好きだった。


 馬車から降りると、既に他のメンバーは揃っている様だった。文花と一緒に歩くと、アーレイトが走って駆けつけて来た。


「忙しい中、良く来てくれたね。二人に敬意を示そう」


 アーレイトは、軽く頭を下げると人が変わった。二重人格を疑うほどの切り替えの早さだ。


「では、おもてなしをするよ!」


 ニコニコで叫ぶアーレイトの姿に、少しだけ警戒をする。身体が勝手に文花を守る様に動いたが、アーレイは前しか見ていなかった。






 みんなは、大きい長方形のテーブルを囲むように、椅子に座って食事をしていたが、陽聖と氷聖とアーレイトだけは違う席で食事をしていた。料理の味は、まあまあで自分の料理の方が美味いなと感じていた。


「この可愛らしい子が、僕の妹だ。名前は…」


「ハーゼイアです。兄がいつもお世話になっております」


 ハーゼイアは、ドレスを着て登場した。自分と同い年らしいが、自分よりも年上の女性と感じてしまうほど、しっかりしていた。


「兄よりも礼儀正しいわね」


「確かに」


「言い返せないのが辛いよ~」


「恥ずかしいので、ふざけないでください」


 赤面して顔を隠すハーゼイアを見て、まだ子供だと感じる。やはり、外見だけでは、人を判断することは出来ないなと思った。


 この分けられたテーブルに、四席あった理由がわかった気がした。ハーゼイアが座ることを確認したアーレイトは、表情が切り替わる。


「では、真面目な話をしようか。とある人物から、戦争をしていると話を聞いたんだが本当かい?」


 アーレイトは、テーブル並べられた食べ物を見て話したので、誰に言っているかわからない。ただ、二人には心当たりがあった。


「私が知る限りでは、五年前に止まっているわ。陽聖は?」


 称号で呼ぶということは、これは仕事と考えるべきだ。


「アートはどこの国の情報が知りたいんだ?それによって話が変わってくる」


 二人の話を聞いて、アーレイトは口を開く。


「経済の発展のために、鎖国を解除しようと動いたのだが、民から反対されてしまった。理由は、スパイが流れてくると。だが、この国に流れてくる情報など、上辺だけのものでしかない。そこで、信用出来る仲間からの情報が知りたいんだ」


 アーレイトは、陽聖と氷聖の方を交互に見て、魔法陣を展開する。


「陽聖君。報酬は私の魔法陣だ。君の力を貸して欲しい」


 何回も聞く下りに、笑ってしまう。どうやら、内部から情報が漏れてしまっているみたいだ。


「どうしてそこまでする?情報を買って何をするんだ?」


 陽聖は、疑問に思ったことを口にする。情報のために自身の魔法陣を捧げることは、普通ではないからだ。


「フーリ国は崩壊する。民に気付いている者も居るが、魔物の活性化による凶作。王族の権威が無くなっているフーリの方での、他国による破壊工作。いや、乗っ取られたと言った方がわかりやすいか。そして、技術がソクタル国に流れている」


 アーレイトが溜息をして、ハーゼイアの方を見る。


「僕の父さんは、このことに気付いていたんだ。だから、逃げたみたいで、今は何処にいるかわからない。もしかしたら父さんが引き起こしたのかもしれない。情報があれば、まだこの国を捨てずに済むだろ?」


「なので力を貸してください」


 エルフの二人からの願いに、若干戸惑う。情報を与えても、復興は難しいと陽聖は考えているからだ。そして、二人の声が大きいので、みんなの注目がこちらに向いている。大人数の前で情報を話すことになるので、出来るだけ避けたいが、手紙をみんなの前で見た自分の責任でもあるので何とも言えない。


「アート、少し話をしようか。フーリ国を乗っ取った国は見当がついているよね?」


「おそらく、ソクタル国だ」


「ソクタル国だと仮定した時に、何故雷都やアーリル国では無く、フーリ国を狙ったと考える?」


「技術が欲しかったからじゃないか?後、父さんが役に立たなかったとか…」


 アーレイトは、悩みながら話すが、どれも中途半端だ。


「それなら雷都を狙った方が技術は発展するし、王族のレベルで言ったらアーリル国を俺なら狙う。フーリ国にしか無い所を探せ」


 陽聖は、魔力切れによる頭痛と静かな空気に耐えられずに、王族に対して命令をする。氷聖は笑っているが、おそらく気付いているだろう。


「五年前は、魔王が雷都に来ましたね。魔王が変わってからリデビル国と仲が悪いようですよ」


 氷聖が少しずつ情報を与えると、ハーゼイアは少し気付いた様だ。


「フーリ国には、ダンジョンが有ります」


 実は、フーリ国の地下は、魔物が自然に湧いてくる場所が在る。ダンジョンと呼んでいるらしい。


「だが、ダンジョンがどうしたんだ?」


 何も分かっていないアーレイに笑ってしまう。多分、フーリ国の民で知っている者は少ないかもしれない。鎖国をしてきた代償だろうか。


「魔物を倒すと魔石が手に入るよな。魔族は、その魔石を食べることによって力が増すんだ。そして、ダンジョンはフーリ国にしか無い。さらに、森には何故か魔物が沸くから尚更欲しいだろう。フーリ国を取れれば、アーリル国は魔族の国に挟まれるし、一国を取ればもう一つの国が自動的に手に入ったようなものだね。これは俺の妄想に過ぎないから情報では無いよ」


 陽聖はそう言って、席を立って自分の部屋に帰って行った。残された者達は、ただ、陽聖の考えに驚いていた。


「なるほどな、筋は通っていると考えられる」


「陽聖は本調子では無いので、明日また、聞いてあげてください」


 氷聖も席を立って、部屋に帰って行った。


「陽聖って頭を良いのか?」


 ルダードは、大地に聞くと風香に笑われてしまった。大地は、ルダードの肩を叩きながら話す。


「陽聖は、九歳の頃には、姫様の護衛で働いていたからな。そのぐらいで学校を卒業してると考えて良いんじゃないか?」


「そうそう、十歳の頃には、転移魔法を覚えていたんだよ?頭が悪かったら無理でしょ」


 風香は、ルダードを馬鹿にするように煽ったが、動じなかった。それよりも、先ほどの話が衝撃的すぎたからだ。


「そう言えば、ソクタル国の中でも内乱が起こっていると聞いた気がするわ」


「俺もだ。五年前に魔王が変わってからおかしいよな」


 アスフィの言葉に、大地が反応した。すると、次々と話が出て来る。静かに聞いていたアーレイトも加わって議論をし始めた。


 起きていた組は、一睡もしないまま、朝まで情報の確認をしていたみたいだ。一方、陽聖は文花と一緒に朝まで寝ていたことは、言うまでもない。





 朝起きると、文花に抱きついて寝ていた様だ。一緒に寝た記憶が無いのだが、多分後から入って来たのだろう。文花を起こさないようにベッドから出ると、食事をした大広間の方に体が動いた。


 大広間の扉を開けると、テーブルの上には沢山の紙が散乱していた。ルダードは、寝ていないのか欠伸をしている。


「みんな起きるの早いね。この紙は、何だ?」


 机の上にあった紙を一枚取って見ると、企業の情報が沢山書かれていた。中には、不正取引と書かれているものまで有る。


「持てる限りの情報を、数時間で纏めたんだ」


 アーレイトが笑いながら言うので、陽聖は絶句してしまう。


「この情報で何をするつもりだ?」


「勿論、この国を救う」


 アーレイトは何かを決心したようで、説得することは不可能だろう。陽聖は、アーレイトの行動で簡単に世界が動くと考えている。


 世界が動いた先に何があるのか、陽聖は考えたくもなかった。

 

 アーレイトは、情報をどの様に使うのでしょうか。


 陽聖は、一体何者なのでしょうか。


 気になる人は、いいねをしていただけると励みなります!では次話で会いましょう。

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