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決まっていた学校代表

一日一話を更新したいです。

 闘技場に集まったのは、六十人ほどだろうか。各学年の人数が、十人ずつとジークから聞いていた。最初は孤児院の子供達の人数よりも少ないから、話を盛っていると考えていたが本当らしい。


「最初は魔力測定ね。前回は五百ぐらいだったから、七百は欲しいかな」


 メアの口ぶりから察するに、七百が平均なのだろう。平均だと、卒業することが出来ないとシスターから言われていたので、九百ぐらい取れば安泰だろう。


 メアに順番が回って来たので、様子を見ていた。石に手を置くと、その人の魔法陣が出現して、魔力を測るみたいだ。因みに、メアの数値は七百六十だった。


「ここに手を置けば良いんですよね?」


「はい」


 教授と思われる女性の方に確認すると、何故か笑われてしまったが、気にしたら負けだろう。石に手を置くと、黒色の魔法陣が現れた。魔力を込めると、段々上がっていく使用だったので、簡単に九百で止めれた。


「九百八十です…」


 教授は先ほどの表情とは違って、何処か引いている気がする。多分平均に届いていなかったのだろう。人の顔が引き攣る時は、理解が出来ないことが多いとシスターから聞いている。


「あと少しで千だったね。やっぱり凄いよ」


「メアの基準ではそうかも知れないね」


「え?」


 雑談しながら他の列に並ぶと、次は的当てをやるみたいだ。指定された線から越えていけないらしいが、これも大丈夫だろう。


「私は、的当てが苦手なんだよね。雷をコントロールするのが難しくて」


「確かにそうかもね。でもメアなら大丈夫だよ」


「ありがとう」


 シスターからの教えで、人と話す時は相手の挙動を確認しろと教えられていたので、メアの事しか見ていなかった。メアの順番が回ってきたので、テストの様子を見ていると、十個中四個しか当てられていなかった。


「やっぱり制御は難しいわ…」


 メアは悔しがっていたので、恐らく全部の的に当てないと、クリアにはならないだろう。


「ごめんね、メア。俺はストレートで卒業するために、一緒に落ちることは出来ないんだ」


「何を言っているのよ…」


 メアの返答を聞いて、的の方に体を向ける。メアに申し訳ない気持ちになりながらも、朝に準備をした札を内ポケットから、丁度十枚取り出した。札を転移魔法で飛ばして、的に貼り付けると的が爆発した。


 周りの人が騒いでいることを確認するが、興味が無いので耳を貸さなかった。


「あの札凄いわね。どっから現れたのよ」


「転移魔法で飛ばしただけだよ」


「何を言っているのよ…」


 理解が出来なかったのか、先程と同じことを言われてしまった。勿論、理解されなくて良いのでスルーして話題を変えた。


「魔法の威力ってどう測るの?」


「さっきと同じ的に当てて測るのよ。普通は壊れないけどね」


 さっき的当てをした時に、全部壊した気がしたが、気のせいだったのだろう。でないと普通では無いからだ。


 威力測定も、的を壊さないように手加減をしようとしたが、札の威力を抑えても壊れてしまった。札に爆発と斬撃の刻印をしていたのが原因だった気がする。


「今回のテストはボチボチかな~陽聖は凄かったね」


「メアが居てくれたおかげだよ」


「そうかな…」


 少し照れているようなので、シスターからの教えは正しかったのだろう。まさに人生の教科書は違うなと思いつつ教室に戻ると、既に結果が黒板に張り出されていた。


「これ百点満点のテストなのに、どうして平均が三十点なんだ?」


「知らないの?世界一卒業するのが厳しいと言われている学校よ?この位当たり前じゃない」


 メアが真面目な顔で言っているので、本当の事だろう。


「十三位でこれなんだ…卒業って難しいね」


「まあ、だから人が集まらないのよ。ここの生徒はアーリル国立学校落ちがほとんどよ。学校の方針を変えないから、三年連続で最下位なんだから」


「へえ、大変なんだね」


「でも陽聖が順位を変えてくれるでしょ?期待しているわ」


「まあ、出来る限りの事はやるよ」


 黒板に映し出されている成績を見ると、明らかにレベルが低かった。力を抑えたにも関わらず、三つのテストで一位で百点だった。メアは八十六点で以降は五十点が最高だった。


 各々が席で待っていると、ベルと同時にモルテが教室に入ってきた。


「はーい。テストお疲れ様でした~。結果はどうだったかな?」


 子供の様な態度を、大の大人がしていたので理解に苦しむが、朝の時とは違い、こちらを見ているようだ。


「うん。良さそうだね~じゃあ四月の序列戦は~陽聖君に決定したよ~」


 モルテはそう言って、陽聖にリストバンドを風魔法で飛ばした。受け取ると、リストバンドから魔力を感じたが、悪いものでは無さそうだ。


「じゃあ陽聖君よろしくね~じゃあ」


 モルテが出て行くと、丁度ベルが鳴った。モルテは時計を見ているかのように、完璧なタイミングで教室から出るので、後ろの人達が盛り上がっていた。実際は一分で鳴るので、脳内で数えることは容易だろう。


「やっぱり陽聖だったね。四月は個人戦だから、この学校は毎年首席が出るんだ」


「なるほど。まあ、三回位勝って終わるよ」


 学生の大会なんてあまり大人は見ていないと思うが、念のため目立った行動は控えたい。メアも陽聖の事情を知っているのか、頷いてくれた。


「おいおい!メアはその男といつ仲良くなったんだよ」


 赤髪ツーブロックの厳つい男が、メアに話しかけたが、メアは聞く耳を持たない。


「ルダードは、メアが取られて妬いているのよ。気にしないで」


「アルフィは引っ込んでろよ」


「あら、図星みたいね」


「うるせえ!」


 子供の様なやり取りに懐かしさを感じたので、少しだけ口角が上がってしまった。それは、メアもそうらしく、ニヤニヤしていた。


「あら、二人から馬鹿にされているわよ?」


「何でニヤニヤしてやがる!」


 ルダードは照れているのか、頭を抱えながら顔を隠していた。


「やっぱり、アルフィとルダードはお似合いね」


「えー?この脳筋馬鹿とお似合いは嫌ね」


 心底嫌そうな顔をするアルフィに、吹いてしまった。確かにルダードとお似合いと言われたら嫌だろう。


「黙れ、四十点のアルフィ!」


 そう言えば、ルダードは五十点と書かれていた気がする。アルフィはルダードに手を払って、メアに話しかける。


「それよりも挨拶がまだだったわね。私はアルフィよ」


「俺は陽聖だ。よろしく」


 アルフィはどうやら、この学校の中ではまともな部類に入りそうだ。ただ、魔力量はテストで測定されているよりも多いと感じた。


「黒髪の男よ!俺がルダードだ。よろしくな!」


 そう言って机を思いっきり蹴られたので、キレそうになりながらも、抑えて冷静に話し返した。


「五十点のルダード君、よろしくね!」


「くっ!」


 これがきっかけで、ルダードに一ヶ月ほど無視され続けてしまったが、メアがいつもより笑っていたので良しとしよう。


 学校は午前で終わりで、午後からはやる事が特に無い。みんなクラブなどに入っているが、陽聖は興味が無かったので、家でゴロゴロしていた。メアも同じ様な人間だったので、クラブに入っていないらしい。


「ここまで静かな空間が久しぶりだから、全然落ち着かないな」


「あの二人を呼べば良かったね」


「確かに」


 二人でソファに座って、ニュースを見ていると、とある事件について報道されていた。それは、雷都と呼ばれている人間の国で、王が殺されたという事件だ。丁度今日で五年が経ったらしい。


「陽聖はこの事件知ってる?私のお父さんも、この日にアーリルの王族の警護として行ってたらしいんだよね」


「知ってるよ」


 この事件は、良く知っている。他の人よりも何倍も知っているはずだ。


「陽聖でも知ってるぐらいなんだ。この事件凄いよね、国際会議場で主催国の王が殺されるなんて」


「確かにね」


 本当は自殺なのだが、情報が隠蔽されているみたいなので、余計な事は言わなかった。


「王以外の王族も行方不明って、凄いよね。もっと詳しく知りたいのに、お父さんは何も教えてくれないんだよね」


「詳しく知ってどうするの?」


「氷聖ちゃんと友達だったから、また会いたいんだよね」


 メアはソファを立って、紅茶を淹れていた。氷聖の友達を把握していたはずなのに、メアという名前は聞いたことが無かった。それもその筈で、王族は公の場で名前を言わないからだ。


「メアの苗字ってヴァルドだっけ?」


 苗字を聞いたら、紅茶を淹れていた手が止まった。苗字を呼ぶのは王族だけというのが、この世界のルールだ。普段は苗字を名乗らないので、知る機会が無い。


「何で知っているんですか?」


「シスターから聞いたんだよ。悪かった」


「それなら良いです」


 そう言って、メアは隣に座って紅茶を飲んだ。確か、王族は視野を広げるために、各国から選ばれた同級生と一ヶ月ほど生活すると聞いていた気がする。勿論、男と女は別れていた。そして、世界共通なので、陽聖も何回か選ばれていた。


 のんびりしながら、ご飯を作って風呂に入ると、一日が終わった。また、メアと一緒に寝たが、昨日よりもくっついてきた気がする。





 陽聖はまた、早く起きてしまった。どうやら熟睡できない体になってしまったみたいだ。昨日と同じ様にご飯を作りながら、装備の手入れをしていると、昨日メアと話したことで思い出した事があった。それは、アーリル王国の王子とも面識がある事だ。


「おはよう、陽聖」


「おはよう」


 メアの服装が乱れていたの事が気になるが、気を許してくれたと、捉えることにした。





 入学してから二週間ほど経った。午前中の授業は知っている事が多く、とても暇だった。札に刻印しようと考えたが、右隣に居る三人がノートを取っていたので止めた。あれからなんやかんやで、アルフィとルダードと話せる仲になった。


「今日はどうする?一応、中々手に入らない紅茶が手に入ったわ」


「良いな!お茶会でもしようぜ!」


「私は良いけど、陽聖はどう?」


 メアが外を見ている陽聖に聞いた。授業中もずっと外を見ていたので、気になっていたみたいだ。


「俺は序列戦の抽選があるらしいから、後で合流するよ」


「そう…」


「そうなのね。待っているわ」


 どうやら気を遣わせてしまっていたみたいだ。ルダードも心配そうにこちらを見ていたので、相当機嫌が悪そうに見えたのだろう。


「じゃあ行ってくるよ。俺の分の紅茶を残しておいてよ?」


「勿論残すわよ!」


 メアにからかうように言うと、良い反応をしてくれたので大丈夫だろう。教室を出ると、モルテとジークが待っていた。


「じゃあソクタル国に行きましょうか~」


 モルテの緩い言葉に少しだけ救われた気がした。ソクタル国は、陽聖が行きたくない国ランキング一位の国だ。何故なら、陽聖の両親が殺された場所だったからだ。

少しずつ情報が出てきましたね。


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