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妹にまた婚約者を奪われましたが、今回は計画通りです。~妹に全てを奪われた姉の華麗なる復讐

作者: 真理亜

☆2020/11/30 少々加筆しました。

 私は侯爵令嬢です。今年十八歳になります。一つ下の妹が一人居ます。


 婚約者は居ません...今は...



 かつて私にも婚約者が居ました。十五の時から三年付き合って十八で結婚する予定でしたが...


 妹に奪われました...



 妹は昔から私の物を何でも欲しがります。ぬいぐるみ、アクセサリー、小物、ドレス、化粧品、etc,etc...あげたらキリがありません...


 当然、私は拒否します。だってそうでしょう? 妹は私から奪ったらそれで満足なのか、急に興味を失うんです。私の大のお気に入りだったクマのぬいぐるみが、屋敷の裏庭に雨曝しになって捨てられていたのを見た時は悲しくて涙が出ました...


 でも、妹にだけは甘い両親は、


「あなたはお姉さんなんだから」「将来、侯爵家を継ぐ身なんだから」「妹の我が儘くらい許してあげなさい」


 この一点張りです...



 息子の居ない我が家にとって、長子である私が婿を取って家を継ぐのは当然です。妹は何れお嫁に行く身だからそれまでは好きにやらせてあげたい。それは分かっているんですが、何事にも限度というものがあるでしょう。


 欲しがれば何でも手に入ると思い込んで、我が儘放題に育った娘に良縁なんか来るのでしょうか? 侯爵令嬢として恥ずかしいと思わないのでしょうか? 何度も両親に苦言を呈したのですが、その度に、


「まあまあ、あんな我が儘も子供の内だけだから」


 と絆され、私は泣く泣く妹に奪われ続ける日々を過ごしていました...



◆◆◆



 両親が妹だけを可愛がるのは、妹の容姿も関係しています。妹は父に似て金髪碧眼の可愛らしい顔立ち、私は母に似て黒髪黒目のキツイ顔立ち。


 父は若い頃、かなりの美形でオマケに侯爵家の嫡男という事もあり、当時貴族子女の間ではかなりの争奪戦が繰り広げられたそうです。その争奪戦を勝ち抜き見事父をGETした母は、今でも父にぞっこんです。


 母にしてみりゃその父にそっくりな容姿の妹はそれはそれは可愛いでしょうね。そして父も自分に良く似た容姿の妹はそりゃ可愛いでしょうね。じゃあ母にそっくりな容姿の私は? まぁ推して知るべしですよね...



◆◆◆



 一度試しに両親に頼んで全く同じ物を二つ用意して貰った事があります。結果は...自分が貰った物には目もくれず、私の物を寄越せと言って来ました。



 ...これはもう病気なんじゃないでしょうか...



 どうやら妹の頭の中では「姉から奪った物」だけに価値を感じるようです。これは早目に矯正させないと私のみならず妹の為にもならないでしょう。そう両親に提言したのですが、


「まあまあ...」


 以下同文...


 ...私は説得するのを諦めました...



◆◆◆


 

 その後、私は貴族令嬢としての教育の他に、家督を継ぐ為の勉強もしていました。妹はどちらも嫌がりました。妹に甘い両親はそれを許容し、遊び呆けている妹を叱る事はありませんでした。せめて貴族としての最低限のマナーくらい覚えておかないと、後で苦労するのは妹だと言うのにそんな事も分からないなんて...本当に愚かな人達です...



 そんな私達姉妹もお年頃になり、それぞれ婚約者を宛がわれました。私には侯爵家の三男のお方、妹には伯爵家の嫡男のお方がお相手となりました。私が十五、妹が十四の時です。

 

 貴族の結婚ですから政略絡みなのは否めません。それでもお相手のお方は誠実そうで好感が持てました。同じ侯爵家ということもあり家格も釣り合います。この方となら侯爵家を一緒に盛り立てていけそうです。


 妹のお相手のお方も優しそうで好印象を持ちました。ご実家の伯爵家は古くからある名門で、今回の結婚を機に陞爵も噂されています。妹も気に入ったみたいです。私はようやく肩の荷が下りる思いでした。



 ...だから...油断していました...



 妹の「病気」はまだ完治していなかったんです...


 きっかけは些細な事でした。私からのお誘いを彼が多忙を理由に断って来る事が増えて来たんです。まあ付き合って三年も経てばそういう事もあるでしょう。どうせもうすぐ結婚するんだから、そうすれば嫌でも一緒に居るんだから、あまり目くじら立てる事もないと高を括っていました。


 ...今思えばそれが良くなかったんでしょう...


 ある日、私が家を留守にしている間、彼が先触れもなく訪ねて来ていたのです。しかも何故か妹と楽しげにお茶しています。仲良さそうに寄り添いながら...彼曰く、突然訪れて私をビックリさせたかったようですが、私が留守にしていたので仕方無く妹に相手して貰ったと。


 ...怪しいです。


 だって目が泳いでますもん。これ、今回が初めてじゃありませんね? 私のお誘いを何度も断ったのはこういう事? しかも妹が私を見る目、アレは今までに何度も見た私の物を奪う時の目です。私は戦慄しました...


 今までのように私の持ち物を奪うのとは訳が違います。貴族の結婚は家と家を繋ぐものです。その約束を反故にしたらどうなるか、貴族社会からどのような目で見られるか、子供でも分かります。ましてや妹には歴とした婚約者まで居るんです。


 彼を叩き出した後、私は妹を問い詰めました。婚約者が居る身でありながら人の婚約者に手を出すとはどういう了見か? 何を考えているんだ? と。すると妹は勝ち誇ったような顔でこう言ったのです。


「お姉様に魅力が無いから」「私の方が彼を満足させられる」「彼も私の方が良いって言ってる」


 極め付けは...


「伯爵より侯爵の方が上でしょ? 私よりお姉様の方が格上なんて許せないわ。私の方が相応しいんだから譲ってよ?」


 私は開いた口が塞がりませんでした...ここまで馬鹿な子だったなんて...

 

 この子は彼が侯爵家の三男で家を継げないから我が家に婿入りするという事を知らないのでしょうか? 彼と結婚して家を出てどうするつもりなんでしょうか? 平民になる? 伯爵夫人の座を捨てて? それとも...私を追い出して家督の座まで奪うつもりなんでしょうか...


 妹と話しても埒が明かないと判断した私は、両親に墾々と訴えました。私と違って遊び回っていた妹は、これまで家督を継ぐ為の教育も受けていないので継ぐのは無理だと言う事。それは三男である彼も同様だと言う事。あの二人に任せたら、この家は間違い無く没落すると。


 それはもう必死に訴えました。しかしその結果は...


「まあでも結局の所は本人同士で決めた事だから...」


 その瞬間、私は悟りました。あぁ、この家に私の居場所なんか最初からなかったのだと... 

 両親にとっては妹が何より大事で私の事はどうでもいいのだと...

 良く分かりました。それならそれで私にも考えがあります。



 私は復讐を決意しました。



◆◆◆



 私は侯爵令息との婚約が解消され、妹は伯爵令息との婚約を解消し、新たに侯爵令息と婚約を結びました。恥知らずにも程があります...


 私は妹の婚約者だった伯爵令息と連絡を取りました。妹の非礼をお詫びした後、あるお願いをしました。


 社交界でとある噂になっている方に紹介して頂けないかと。


 彼の家は伯爵家ですが歴史のある名家です。顔も広いです。二つ返事でOKしてくれました。同じ傷を舐め合う同士という事もあったでしょうね。


 そして私は彼にある計画を打ち明けました。



◆◆◆



 私は両親にあるお願いをしました。両親にお願いするのはこれで最後です。


「公爵家の嫡男を紹介して貰ったからお見合いをしたい。瑕疵のついた自分は社交界で既に噂になっているから、まともな縁談が来るのは恐らくこれが最後になるだろう。この縁談がダメになったら自分は修道院に入るつもりだから、その時は親子の縁を切って欲しい」


 両親は二つ返事でOKしてくれました。計画の第一段階終了です。


 次に私は妹にあるお願いをしました。


「格上の公爵家とのお見合いで緊張し心細いから一緒に会って貰えないか? 良かったら婚約者も連れて2対2で」


 妹も二つ返事でOKしました。こういう時は馬鹿で助かります。



 -- そして迎えたお見合い当日 --


 

 侯爵令息は私と目を合わせようともしません。そりゃ自分がフッた相手が目の前に居たら気不味いですよね。そして妹はと見ればそれはもう嬉しそうに目を輝かせています。


 私の思惑通り、妹は全力で媚びを売っています。やはり妹の頭の中は侯爵より公爵なんでしょうね。お目出度い限りです。


 私は「今日の見合い相手は私なんだから、あなたはあまり出しゃばらないように」と軽く嗜めながら心の中では「いいぞ、もっとやれ」とエールを送っていました。


 その間、侯爵令息の顔は終止引きつってましたが、相手が公爵家という事で何も言えないようですね。フフフ、良い気味です。


 お見合いの結果...私より妹の方が良いと公爵令息から返事がありました。妹はさっさと侯爵令息をフッて公爵令息に乗り換えました。



 計画通りです!



 公爵家との縁を結び大喜びの両親と妹を尻目に私はそっと家を出ました。



 ~~ 一年後 ~~



 私は伯爵夫人として、愛する夫と産まれたばかりの可愛い息子に囲まれ、幸せな日々を過ごしていました。


 修道院? あぁ、あれは家を出る為の方便ですよ。復讐の計画を相談している内に今の夫と親密になりましてね。


『修道院になんか行かなくていい、ウチにお嫁においで』


 と言われた時は嬉しくて泣いてしまいましたよ。苦あれば楽ありとはこういう事を言うんでしょうね。


 あらあら、それの真逆を今正に体現している元妹が、今日も泣きついて来たようですよ。


「お姉様、あの男をなんとかしてっ!」


 そう、あの公爵家嫡男はとにかく嫉妬深い、その上粘着質で独占欲が強い。

 軟禁? 監禁? されたりするそうで。それ故、女性の方が耐えられなくて何度も破談を繰り返していると。噂は本当だったみたいですねぇ。まぁそれを知っていたから元妹を焚き付けたんですけどね。元両親と元妹は知らなかったようですが。


 元両親の所にも何度も泣きついているとか。でも相手が公爵家だからあまり強くは言えないみたいですよ。あぁそれと例の侯爵子息を養子に迎えたそうですね。せめてもの償いのつもりなんでしょうか。関係無いんでどうでもいいですけどね。せいぜい家督教育頑張って下さいな。


 関係無いと言えばこの五月蝿い元妹も今は赤の他人なんで、公爵家に連絡して引き取って貰いましょうかね。あぁ、そうだ。最後に一言、



 ざまぁみろ!











 

 




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― 新着の感想 ―
[一言] 今回も面白かったです!ありがとうございました!
[一言] 作者様 読者の身勝手なところですが、今回は普通に読めました。 悪くはないですよ。 ただ、最初の短編でのコメディーの強烈な印象が刻み込まれて、つい普通にストーリーが流れていき、うん普通だなと…
[一言] 【妄想劇場】 それぞれのその後 元実家:養子になった元三男坊は噂のせいでマトモな嫁を貰えず、後に降格。 侯爵家:元三男坊とは縁を切る。それだけ。 公爵家:元妹は懐妊するも精神的要因で流…
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