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白い魔女に魅入られて  作者: シミシミ/shimishimi
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第一章 運命は巡る BOY MEETS GIRL(1)

 そう、あれは……詩織と出会った日は……数日前だっただろうか。もう何度も経験したから、日にちの感覚が分からなくなった。

 しかし、これだけは分かる。

 自分がおかしくなっていることだけは分かる。



 やっと授業が終わった。時計は五時五十分。時間きっかりかよ。

 大学に入って一ヶ月経った。

 一ヶ月もいれば大抵のことは慣れるし馴染むし分かることがある。分かったことは、どの講義もびっくりするほどつまらないことだ。

 あんなに受験勉強頑張ったのに、現実はこのありさまか。とは言っても望んだ大学じゃないことがあるのかもしれない。それにしてもこんなに面白くないとは思っていなかった。かといって、行きたかった大学に行ってたほうが余計失望しただろう。

 こんな風に辻褄をあわせるのは人間の得意技だなと思いつつ、一息つこうと席を座り直した。

 周囲は疲れただの、これからバイトだのサークルだの 、部活だの各々が思ったことを口にしながらぞろぞろと出て行く。

 それを横目に、俺はこんな普通で居たくないなと思う。俺は特別な人間になりたい。特別な人間でありたい。天才になりたい。天才と言われたい。何者かなりたい。唯一無二の存在になりたい。誰かのために何かしたい。

とは言っても、自分はその大勢の中の一人であって映画で例えるなら村人Aっていうその人自身の名前じゃなくて役名で書かれる感じというのが言い過ぎなくらいなので、


 エキストラ出演〜的


 なぐらい大勢居るうちの1人だろう。俺の代わりなんていくらでもいる。それが――嫌だ。何か俺だけの役目でもあればなー。

 そう思いつつ、荷物を片付けた。

 携帯を取り出した。

 こんなどうしようもないことを考えていたせいで、六時になろうとしていた。

 ため息が出る。

 五時間目まで授業を取ると、こうも一日が無駄に終わる気がして仕方ない。

「つまんな」

 思わず声が出る。

 俺の大学生活こんなはずじゃなかったのにな。

 未読のLINEに目を向けた。二件。見なくても誰かわかる。あいつだ。

 LINEを押して携帯のロックを顔認証で解除し開いた。

 便利な世界になったな。

 

 山崎結希(やまざきゆき)「「それで、結局サークルは入るの?

     「「私はなんとなく決まったよ。

 新島悠矢(にいじまゆうや)「「俺はいいのがあったら入るよ

     「「ざきさんはなんのサークルに入るの?

 

 突然、肩がグイッと寄せられた。

 肩に腕を回してくる絡み方をする柄の悪いやつは一人しかいない。


 神城聡太(かみしろそうた)


 大学で仲良くなった。イカツイ男。髪は常にワックスであげている。こいつの特徴はこんなもんだろう。あと、意外とちゃんとしてる。

「ん?……何?彼女?」

 ニヤニヤしながら言ってきた。

 呆れた。すぐそうやって彼女だの付き合ってるだの言いやがる。

「彼女じゃない。昔からの友達。それに勝手にLINE見るなよ」

 ここで何も言わないのも尺だったから、つい言い返した。

「ふーん、それでもう帰んの?」

「もう帰るけど、聡太は?」

 携帯をズボンにしまった。

「俺もそのつもり」

 笑顔で言った。

「絡み方いかつ〜」

 煽りが入った。

 聡太は腕をどけて飛んできた声に後ろを向く。

「はぁ? なにがいかついねん! 孝基(たかもと)、お前の図体のデカさの方がいかついわ! なぁ、大河!!」

 聡太は、孝基のすぐ後ろに居た大河に怒鳴りつけるようにして同意を求めた。

「いや、お前の方がいかつい」

 大河は淡々とした口調で言った。

 聡太は それに対してはぁぁって文句を言ってたりしてた。

 三人とも大学のクラスで知り合った。たかもとは水泳部の癖して上半身の筋肉量が異常だ。ボディービルダーにでもなる気?って知り合ったときに聞いてしまったことがあるくらいにやばい。

大河はとっつきにくい雰囲気を醸し出しているが話すと良いやつで、アニメとサッカーが好きな奴。あとすぐ人を煽る。

「んーまぁ今日は帰るわ。それで、三人はどうするの? あ、たかもとは部活か」

 聡太の質問に答えた。

「そか、俺も今帰るとこやし帰ろうや」

「そや、今から部活や。泳いで来るわ」

「大河はどうする? 今日サークル?」

「ん、俺も今日は帰る」

 それから俺らはいつもみたいに何の脈絡の無い話をしながら扉へ向かった。

 扉をスライドして開けて出ると女の人とぶつかった。

 いや、正確には出ようとした時に教室のドアから入ってきた女性に軽くぶつかった。


 ドサッ。


「あっ」

 弱々しい声がした。

 その女性は手提げのカバンを落としてしまった。

「すみません。大丈夫ですか?」

 鞄を拾いながら謝った。

「だ、大丈夫ですよ。あなたこそ大丈夫ですか?」

 その女性は髪を耳に掛けながら右手で鞄を受け取った。


 目が合った。

 彼女は黒髪ロングでかるく前髪だけを巻いていた。身長はそこらにいる女性と同じくらい、155センチくらい?

 のような印象だっだが、童顔のせいかその印象に拍車がかかる。

 童顔のせいで見た目は同年代かそれよりも一層若い印象だったが、彼女を取り巻く空気が大人びていた。

 しかし、そんな印象は意味をなさなかった。彼女は見るからに俺たちと違う人間だった。


 彼女は()()を着ていた。

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