私たちの望むこと
私たちの望むことは:彼女の恋人が生きる苦しみや沢山の不幸を忘れて、最も幸せになることだった。生きる喜びを忘れないことなのだ。
彼女の恋人たちがそれまで過ごした時間や記憶、知っていたことにとどまらずにどこかへ飛び立てればそれでいいのだ。たとえ彼女の恋人がそれを誰かに与えられなくても、それを誰かから奪いとることなのだ。
それは彼女を殺すことではなく、彼女と生きることなのだ。
最も多くを忘れ去った頃に、何かが起こる。
私が彼女の恋人から電話を受ける。
「彼女から聞いたんだ」彼女は私に言う。「彼女が電話してきた」
私は何も言うまい。「そんなのあり得ないよ」彼らが思っていることを一つもほのめかさないまま、私は少し考えた。代わりにこう言った。
「ちょうどよかった。みんな聞こうとしていたところなんだ」
彼らの何人かが私に電話して言ってくる。「あの子が彼女から何か聞いたって言っていたよ。でも自分から電話したんじゃないかな」
きっと番号を間違えて交わされた会話なのだと結論付ける。文字が似ていたとか、声が似ていたとか、そうした冗談なんだよと言った。だから何もする必要なんてないと同意した。
すぐに、そんな理由で私や彼らは、彼女の恋人が彼女の電話を受けたことを忘れる。
でも彼女の恋人は私に再度電話してくる。「彼女から受けたのは別の番号だったんだ。彼女は元気だよって言っていた。でもやっぱり淋しがっていた。会いたいって」
私は会議を開く。
「電話が来たことを忘れようとしていないんだ」私は言う、「別の番号からだって言っている」
「彼女がかけてきたって何でわかるの?」誰かがそう訪ねる。
私や彼らはそちらを向き、「そりゃそうさ。彼女がただそうあって欲しいってだけなんだよ。そうすれば僕らも納得してくれるだろうと考えているんだ」
だから私たちはあることを決める。