61
「人族は皆殺しだ!」
仙がオーク共を鼓舞しながら人族の陣営に殴り込みをかける。
「迎撃する、私に続け!」
人族の陣営は隊列の乱れを正す時間はなかった。
女性指揮官は部隊の士気を上げる為に先陣を切ってオークの群れに切り込んだ。
白銀に輝く鎧と焔色の剣はその存在感が先ほどの盾と同等以上に特別なものであることを物語っている。
それが嘘か真かはすぐに分かった。
女性指揮官が腰の鞘から焔色の剣を引き抜くと剣の周りの空気が高温に晒されたかのように揺らめく。
「ハァ!」
人族の一団とオークの一団がまさに衝突しようとしたそのとき女性指揮官が魔力を込めた焔の剣を一閃した。
剣の軌道をなぞるように魔力が放たれ魔力が焔色の炎に変わり巨大な炎の刃となってオーク達に襲い掛かる。
しかし炎の刃はオーク達を切り裂くことはなかった。
オークの先頭に立っていた仙が己の命力を込めた大鉈で受け止めていた。
「あの剣カッコいいなぁ。ちょっとほしいかも。」
『あれはおそらく火炎竜の血肉を素材にした剣っすね。』
「おおぉ、竜を素材にした剣ってファンタジー感満載だな。ん、火炎竜ってのも保護対象なのか?」
このイセカヘウムを正常に戻すためにいろんな種族を人族から助けてほしいって聞いたけど火炎竜ってのはどうんだ。
『厳密に言えば違いますね。火炎竜は炎龍王の眷属が生み出す手駒みたいなものです。炎龍王やその眷属である炎龍は保護してほしいっす。龍脈の正常化や管理に彼らの力が必要っすから。』
眷属の手駒ってことはそこまで貴重な素材を使っているわけではないのか。
見た目はカッコいいのに。
ちなみに炎龍王のほかに水龍王・水龍や地龍王・地龍や風龍王・風龍などいろんな龍や竜がいるらしいけど多くて覚えられないからまた出てきたときに聞こう。
『あの剣より鎧のほうが性能は高いと思うっす。あの鎧は妖精鋼と炎龍の鱗が使われているっす。その証拠に炎の刃に照らされて薄っすらと鎧の表面に炎龍の炎が浮かび上がってるっす。』
う~ん、俺がスライムではなくせめて人型の生き物だったらあの剣と鎧を自分のものにしたのになぁ。
残念だ。
俺も元日本男児として憧れるわけですよ。
カッコいい剣と鎧に。
『まさか旦那にエロ以外に興味を持つものがあったなんて!ちなみにエロと武具を選ぶならどっちっすか?』
失敬なエロ以外にもいろいろ興味を持っているぞ。
エロと武具ならエロをとるに決まっている。
それはこの世の真理だ。
『ま、分かってたっすけどね。』
俺が女性指揮官の装備を観察している間にも戦闘は続いている。
中心にいるのは仙と女性指揮官だ。
何度も剣を交えどちらも一歩も引かない。
「それにしても人族の女性指揮官は良く仙と互角に切り結んでいるよな。それだけ魔力量を多く持っているってことだよな。」
この世界の強さはファンタジー世界のお馴染みで見た目では測れない。
スライムの俺が強いのと同じで保有する魔力量に大きく左右される。
元オーククイーンであり俺の仲間になった後も魔力量を増やしている仙と互角に切り結ぶのだ。
女性指揮官の魔力量が仙以上にないと仙より小柄な女性指揮官は力負けするはずなのだ。
『いや、仙より魔力量が多いってことはないっすよ。おそらくあの鎧の効果で身体能力を底上げしているんだと思うっす。』
ステータスを強化する装備。
う、羨ましい。
俺なんて装備すら無いのに敵は装備を持っているだけでなくステータスを強化しているのだ。
いつか俺もスライム専用の装備を手に入れて見せるぞ。
ドラク〇エⅤのスライムだってはぐれメ〇ルのシリーズを装備させていたんだ。
俺にだって専用シリーズ装備がないわけがない。
スライム専用装備に思いを馳せていると戦況が決まろうとしていた。
「オークとアラクネが以外と良い連携をしているな。」
戦闘の始めはオークだけで戦い人族の重装兵を倒すのに手間取っていたが今はアラクネと協力して優位に戦闘を進めている。
人族の重装兵はオークの攻撃を巧みに盾で守り魔法使いが隙を突いて魔法で攻撃をする連携で戦っていたのを見て学習したのかアラクネが糸と魔法で人族の重装兵を翻弄してオークがその隙に攻撃することで優位に戦っている。
それに対して仙と女性指揮官の戦いは膠着状態に陥っている。
何度も剣と大鉈を打ち合わせてどちらも譲らない。
(ガキン)
一際大きな音が鳴り剣を打ち合う衝撃が周囲に風を巻き起こす。
二人は衝撃の反動を利用して大きく飛び間合いを開ける。
「「ハァハァハァ。」」
互いに全力で打ち合った二人は大きく肩で息をしている。
仙に切り札がないのが悔やまれる。
たいていの相手ならその剛力で粉砕できるが互角の相手となるとそれだけでは勝てない。
『何偉そうに言ってるんすか。旦那だって基本行き当たりバッタリじゃないっすか。』
良いんだよ。
行き当たりバッタリでも上手く対応出来ているんだから。
お、女性指揮官が仕掛けるみたいだ。
今まで以上の魔力が女性指揮官の体と鎧から焔の剣に流れる。
「≪炎龍業火斬≫」
物凄く仰々しい技名を叫ぶ。
仙が両腕を交差し全命力を集めて防御姿勢をとると同時に圧縮された魔力と炎の斬撃が仙の両腕を切り飛ばした。
「何さらしとんじゃ!」
俺の怒りと共に命力と魔力が刃となって放たれた。
ピロリン 仙術 斬空を獲得しました。
女性指揮官の装備がバラバラに切り裂かれた。
「へ・・・キャー!」
女性指揮官は自分の姿に悲鳴をあげた。
(ポトリ)
そしてそのまま事切れた。




