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「ヨシヨシ、見つけたぞ。仙、準備はできているか?」

あの捕まえた(一度殺したけどな)男はバカではなかったみたいだ。

気配を残すように一度全く違う方へ逃げた後、急加速して気配を消して方向を変えて逃げた。

おそらく尾行されている可能性を考えての行動だと思うが魔力感知だけでなく命力感知を持つ俺を誤魔化せない。

ただ急加速したときは一瞬焦ったよ。

命力感知は魔力感知よりカバーできる範囲が狭いからな。

俺より命力感知の範囲が広い仙にどっちに逃げたか確認しないといけない事態になるところだった。

そんな情けない姿を晒すことにならずに済んでよかった。

冷や汗ものだったな。

「準備できてますブ。」

「指揮を頼むぞ、仙。」

オーク共は仙がいるお陰で一応俺の命令にも従ってくれるがどうしても仙が命令するのより反応が鈍くなる。

だから基本は仙に指揮をとってもらったほうが良い。

一瞬の遅れが体勢を分けることもあるからな。

それに引き換えアラクネ達はアンデット化させた俺やアラクネクイーンである風の命令だけでなく仙の命令もキチンと聞いてくれるから不思議だ。

オークはあのなりでプライドが高いのだろうか?

そんなワケで直接指揮をとるのは仙。俺はアドバイザーってところだろうか?

「豚共は矢を番えろ!アラクネ達は網の準備しろ!」

どうやら指揮モードの時も語尾の「ブ」が無くなるみたいだ。

感情が揺さぶられたときだけじゃないんだな。新発見だ。

「放て。」

雨のようにとまでは行かないが人族の野営地全体を覆うように矢とアラクネの糸が放たれた。

「敵襲!」

さすがに矢が放たれても気がつかないほど人族も間抜けではない。

「ギャ!」

「クソッ!囲まれてるぞ!」

幾つかの矢が人族の兵士に命中しているが致命傷のなった者は数えるほどしかいない。

夜襲をかければよかったのだけど相手の動きを読んだりすることなんて俺にはできないから辞めた。

こっちの襲撃を備えられたり、罠を設置したり無い頭で考えただけでもいろいろ思いつくからな。

「もう少し命中率を上げたいな。」

「訓練に今後は弓も取り入れますブ。」

今オーク達に課せられている訓練は主に基礎体力作りと槍による接近戦と連携だ。

弓の命中率が悪いのは自明の理だ。むしろよく命中したほうなのかもしれない。

「落ち着け!アラクネの糸は火を点ければ切れる!重装兵を中心に防御陣を敷け!」

指揮官っぽい人が大声で指示を出し始めた。

見ただけでアラクネの糸って分かるの?

蜘蛛の糸とアラクネの糸の見分けなんて俺できないぞ。

指揮官が優秀なのか兵士が優秀なのか分からんけど混乱も少なく迅速な行動を取っているように見える。

集団戦なんてやったことないから実際のところは分からんけど。

そしても最も気になることがあった。

それは指揮官が女性なのだ。指揮官が女性だ。

鎧を着ているが兜をつける暇がなかったのか金色に輝く長髪が揺れている。残念ながら鎧を着ているので揺れそうな胸が揺れていない。

「第二射用意。・・・放て!」

俺が人族の陣営の様子を観察している間に仙は次の指示をオーク共に出していた。

第二射が人族の陣営に届く前に防御陣が完成してしまった。

オークの放った矢は全て金属の鎧を着た兵士が持つ金属の盾に防がれた。

規則正しくそして隙間なく壁のように並ぶ陣を崩さないことにはダメだろうな。

「風、アラクネ達と一緒に魔法を放って!」

「リョウカイ。」

風はアラクネ達に魔法の指示を出す。

その間に人族が弓で応戦してくるが弓が通用しないと分かった段階でアラクネに乗ってオークは射程外に逃れているので全く当たらない。

「≪石槍≫」

「「「「≪土槍≫」」」」

アラクネが放つ複数の土の槍と風が放つ石の槍が人族の陣営の全方位の地面から飛び出した。

「対魔法防御発動!」

女性指揮官が素早く反応した。

女性指揮官の持つ盾が輝くと同時に人族陣営を囲む兵士の盾も輝く。

アラクネが放つ土の槍は輝く盾に次々と遮られる。

ただ一つアラクネクイーンである風の石の槍のみが人族の防御を破り一撃を加えたがすぐに別の人族が穴を埋めた。

「魔法増幅開始!」

さらに人族の女性指揮官が指示を出す。

陣営の中心にいる魔法使いの持つ杖が光を放ち始める。

俺の作った魔法耐性を持った装備を全員が装備しているが被害を出さないためには俺が対応すべきだな。

「魔法放て。」

「≪ケッカイ≫」

人族の魔法使いが炎・氷・石・雷等々の魔法の矢が次々オーク達へ正確に放たれる。

魔力感知に類する方法で正確に場所を把握しているようだ。

しかし、俺はケッカイを人族の陣営を覆うように発生させる。

もちろん外からの攻撃を防ぐためではなく内側からの攻撃を外に出さないためだ。

フッフッフ、きっと女性指揮官の衣服が炎でボロボロになっているはずだ。

『それは無理っすよ。あの人金属の鎧着てるっすから。』

こ、これはあれだ。

妄想力でケッカイの効果を高めるためだ。

決してホントにそうなると思ったわけじゃないぞ。

『そうっすか。』

すべての魔法をケッカイが防ぎ終わると人族の陣営は変わらずそこにいた。

ただ魔法使い達は茫然となっていた。

うん、分かってた。

ケッカイの効果で魔法をはじき返してもあの光る盾の効果で魔法をかき消すよね。

さて何とかあの防御陣を崩さないことには千日手になる。

ミンスの街へ向かった兵がいたのでそのうち援軍が来るかもしれない。

誤情報を持ち帰ってくれるのかもしれないと思って放っておいたがこうなってくると悔やまれる。

あの時はもっと簡単に人族の部隊を葬れると思っていたからな。

『人族を侮り過ぎっす。仮にもこの世界を危機に陥れている種族っすよ。』

今回はヤスの言葉を素直に受け取ろう。

俺は驕り高ぶってました。すいません。

さて、風の石槍が防御を破ったことから考えて俺の≪バースト≫を使えば防御陣を崩せるだろう。

「仙、俺が人族の防御陣を崩す。タイミングを合わせて責め立てろ。」

「分かりましたブ。豚共と攻勢に出ますブ。」

「いくぞ。≪バースト≫≪バースト≫≪バースト≫」

人族の防御陣に三連続で≪バースト≫をぶつける。

予想通りに人族の防御陣が≪バースト≫で吹き飛んだ。

「よし、行け!」

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