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木の上に仙と風と共に隠れて息を潜めていると人型の生き物がゆっくりと周囲を警戒しながら現れた。
「ご主人様。あれは人族ブ。」
人族を見たのはミンスの市場で見たのが最後だったな。
「この森に一人でやって来たってことはないだろうから斥候か何かだろうな。」
出来ればあいつから情報を得たいけど俺にそんな技術ないしどうしたもんかなぁ。
女だったなら殺した後にあんでっと化スキルを使えば素直に情報を吐いてくれるだろうがどうやらあの斥候と思われる人族は男だ。
え?なんで分かるかって?
フッフッフ、俺の命力感知を甘く見るなよ。
サクラさんに言われていただけでなく俺の新しいスキル仙術には命力と魔力両方の操作能力が重要だから常に魔力と命力の操作訓練をしているからな。
ジビアンヌの寵愛を持った天才が努力した命力感知を使えばまるでスリーディスキャナーでスキャンしたように詳細な映像を取得しているのだ。
そんな高性能な命力感知でみると斥候と思われる人族は筋肉質で骨格もガッシリしており肩もいかり肩だ。
そして決定的なのは胸が無い、慎ましいではなく全くないのだ。
これはどう見ても生物学上オスだろう。
『筋肉質で骨格がガッシリした胸の無い女性かもしれないっすよ。』
いや、それってホントに女性なのか疑問に思う俺は差別主義者じゃないよな?
仮に女性だったときはあんでっと化スキルを使って情報収集すれば良い。
だが俺には分かる。
アイツは男だ。そして俺の感が正しければ仙の力で情報収集できるはずだ。
仙や風に良いアイディアがなければ俺の案を実行だな。
「ご主人様。どうしても私はコイツを踏みつけとかないといけないブ。」
結局、仙からも風からも良いアイディアはでなかった。
まぁ、二人とも情報収集系のことが得意でないことはスキル構成で分かってたことだから問題はない。
今後情報収集が出来る仲間も必要だよな。
「ああ、そのまま踏みつけて置いてくれ。くれぐれも力を入れすぎないようにな。仙が力を入れたら簡単にコイツが潰れちゃうから。」
「大丈夫ですブ。ご主人様を抱きしめれるように日々訓練しているブ。だから力加減は大分出来るようになったブ。」
ウウゥ、仙ありがとう。
いつか、いつかきっと俺も仙の胸で天国を体感したいと思っているぞ。
『ハイ、ダウトっす。セクハラっす。意志薄弱っす。オイラは旦那に失望しそうっす。』
ハッ、そうだった。エロを出来るだけ我慢するんだった。
だがしかし、これは仕方ないのだ。
最初の起因は俺だったとしても仙はやる気になっているんだ。
サクラさんの胸を俺が堪能しようとすると泣くほど使命感を持っているんだ。
だからこれは俺のためではなく仙のためにやらねばらんことなのだ。
『ア~、ハイハイ。正直オイラの旦那がエロを止めれるとは思ってないっすから。』
え?
いや、良いの?
『ア~、良いっす、良いっす。』
なんかこう急に突き放させれると戸惑うぞ。
ヤスに見捨てられた感じがするけど・・・。
ま、いっか。
それより今はこの人族の斥候っぽいヤツから情報を取得しないとな。
「≪あんでっと化≫」
死んだ人族の斥候に俺の魔力が浸透しアンデットとして蘇る。
「ハッ、何が起きた!ム、スライム!グ、俺を押さえつけているのはお前か!」
男にあんでっと化スキルを使っても反抗的なアンデットが出来上がるだけで仲間になる気配は全くないのは魔物も人族も一緒だな。
魔物は支配系スキルを持ったメスの魔物を仲間にすれば解決した。
人族も同じようにすれば解決できるかもしれない。
もしそれが可能ならば戦力補強がさらに進むな。
それはおいおい確かめよう。
「いや、お前を踏みつけているのは俺の配下だ。」
「魔物が俺を踏みつけているだと!ふざけるなぶっ殺して・・・な!」
男は背後を振り返って背を踏みつける仙を見上げるとなぜか驚きが表情に現れた。
フッフ~ン、仙の美貌に驚いたな。
俺の自慢の配下の一人だ。鼻がちょっと残念だけどそこがチャームポイントとも言える。
「な、なぜ獣人族が魔物と一緒にいる!ま、まさか獣牙連合ゴランが攻めてきたのか。しかしゴランとアラインは不可侵条約を結んでいるんだぞ。こんなことをしてはただではすまんぞ!」
ア、アレ何でかスッゴイ勘違いしてるぞこの男。
ま、まぁ。俺にとっては好都合な勘違いだから構わんけど。
このままゴランってのとアラインってのが仲たがいして戦争でも初めてくれたら俺も動き安くなりそうだし。因みに獣牙連合ゴランって何?
『獣牙連合ゴランってのは神獣を捉えた人族がその因子を取り込んで神獣の力の一部をもつ獣人族となった複数の国の連合っす。獣人族は手に入れた神獣の力で獣や魔物を操れるっす。』
魔物を操れるって俺の天敵じゃん。
最初にぶっ潰さないと不味いことになるのか?
『大丈夫っすよ。獣人族はすべての魔物を操れるわけじゃないっす。犬系の獣人族は犬系の獣と魔物を鳥系の獣人族は鳥系の獣と魔物をと言う具合に自分と近い獣や動物を操れるっす。しかも操れる数に限りはある上に自分より弱いものしか操れないっす。それにアンデットは操れないから旦那の天敵にはなりえないっす。』
ウムなら安心だな。
俺の仲間って基本アンデットだから。
・・・全然悲しくないからな。ホントだぞ。
仙も風も俺のこと気持ち悪がらないし、優しいし。
まぁ、この男が非常に都合の良い勘違いをしてくれたからこのまま誤情報を持って帰ってもらったほうが良いのかな。




