57.旅立ち?
俺たちの微妙な雰囲気に首を傾げるユズの家族と最後の一夜を過ごした翌日。
「スライムさん、また来てね!」
「アンタは仙を泣かすんじゃないよ。仙は偶には主人にガツンと言ってやんな。それも仲間の役目だよ。」
オ、オレは仙を泣かせたりしないぞ!
『思いっきり泣かせてたっすよ。』
い、一回だけだ。
それにこれからは絶対に泣かせない。・・・たぶん。
「サクラ助言ありがとうブ。ただご主人様に不満はないブ。」
「まぁ、仙が言いたいことがなければ良いんだよ。」
村中の鬼人族が集まっていたようで村の入り口はちょっとした人だかりになっていた。
誰もが「ありがとう。」だとか「また来いよ。」などと言って気持ちよく送り出してくれた。
トン・チン・カン?
あぁ、そんなやられ役の三人組みもいましたね。
たぶん見送りにいたと思うよ。たぶん。
おそらくあいつらは俺達が村を出ることを喜んでいたな。
まぁ今までサクラさんと一緒に訓練や町の警備をやっていたのに俺達が来てからはサクラさんは俺や仙といることが多かったから一緒にいる機会が減っていたから気持ちは分かる。
俺も逆の立場だったら喜んで見送っていただろうからな。
そう考えるとトン・チン・カンには悪いことをしてたな。すまん。
ユズやサクラさんも含め鬼人族の人たちは俺達が森の中に見えなくなるまで手を振って見送ってくれた。
「さて、とりあえず森を出るまでは積極的に魔物を倒して全員の戦力を底上げしよう。仙が全体の指揮を、風はアラクネの統率を頼む。オークとアラクネがいれば随時あんでっと化して戦力とする。他に使えそうなやつが入れば仲間にする。」
「おませてくださいブ。でも使えそうなヤツをオークは判断できないですブ。」
仙の訓練で戦闘面ではマシになったが知能面はダメダメだ。
教官役の仙自身が戦闘特化なので仕方ない部分もある。
進化して知能面を強化された固体がでてくるのを期待するしかないかな。
「オークの一小隊で仕留められないヤツは取り合えず仲間候補だな。」
「分かりましたブ。」
オークの巣を壊滅させたけれどこの森にいる全てのオークがいなくなったわけではない。
散発的に現れるオークを駆逐しながら進む。
ただし俺は風の背に乗っているので楽ちんである。
風はロボットスキルのお蔭か疲れを知らないようで一言も文句が出ない。
これで胸が柔らかければ言うことないのになぁ。
『ハイ!セクハラっす。ヤスはとっても不快っす。これが性的嫌がらせっすね。』
イヤイヤ、この世界にセクハラなんてないよね。
前世の日本でも頭の中で考えただけでセクハラにはならなかったぞ。
それに仙や風に言われるのならまだしもヤスにセクハラ扱いされるのは心外だ。
『セクハラは相手がどう思ったかで判断するっすよ。それに常に旦那のエロ妄想にさらされるオイラが一番の被害者っす。』
確かに相手がどう思うかだとよく聞くけどそれってあれだよね。
イケメンならセクハラにならないけどブサメンだとセクハラになるってことだよね。
元ブスメン寄りのフツメンとしては明確な線引きして欲しいと思うんだよな。
電車に間に合いそうにないから走って息切れした状態で電車に乗ったら悲鳴上げられるとか理不尽極まりないと思うよ。
呼んでも返事がないから肩を叩いたらセクハラ扱いとかどうしろってんだよ。
しかも下手に触ったらセクハラ扱いされるのは分かっていたから指先で肩をトントンって叩いたのに。
思い出したら段々腹が・・・違う違う。
決して俺は腹を立ててないぞ。
これは俺の友人の話だ。決して俺の身の上話ではない。
『それはご愁傷さまっす。でも気持ち悪いのは仕方ないっす。ゴキブリだって悪いことしてないのにあんなに嫌われているっす。』
えっ!?
ゴ、ゴキブリと同じ扱いって酷過ぎる。
同じ人間なのに虫と同列に扱うなんてなんてヤツだ。
これだから女は嫌いなんだ!(※ヤスは女性らしい)
『旦那はスライムっすからほぼゴキブリと同じっすよ。』
そ、そうだったのか!
イヤイヤ、俺が思ってたのはあくまで友人に起こったことだから。
友人は間違いなく人間ですからね。
そもそも何で今更セクハラ扱いするんだ。
今まではエロとか鬼畜とか言ってたけどセクハラとは言われなかったぞ。
鬼畜と言われるよりもセクハラって言われるほうが心が傷つくんだぞ。
『何か最近旦那がエロいことに開き直ってるっす。このままだと何時か取り返しのきかないことをしでかすっす。そうなったらビジアンヌ様の名前に傷がつくっす。だから旦那に釘を刺すためにセクハラで訴えてみたっすが効果てきめんっす。オイラのファインプレーっすね。』
・・・確かにこの世界に来たときはエロに抵抗感というか羞恥心があったはずなのに今は全くと言っていいほどないな。
よく異世界転生もののラノベで精神が身体に引っ張られるって設定があるけど俺も精神がドエロ仙人スライムに引っ張られているのかもしれん。
出来るだけ気をつけよう。出来るとは言わないけど。
『これからは遠慮なくズバズバ言っていくっすから。これも全て旦那のためっす。』
これからはってこれまでもズバズバってたよ。
俺のためって言ってるけど、さっきビジアンヌの名前に傷がつくって言ってたよな。
『文句あるっすか!』
いえ、ありません。
ヤスにゴキブリと同列扱いされていると妙な気配を感知した。
魔力感知ではボンヤリとしか感知できないのに命力感知にハッキリ感知できる生き物だ。
人型だがゴブリンやオークじゃない。
「仙、風。妙な気配の生き物がいる。木の上に隠れて様子をみるぞ。オークやアラクネにも指示しろ。」
「分かりましたブ。」
「ワカリマシタ。」
さてさて、一体何者でしょうかね。
魔物なら仲間候補だな。




