第4幕
レラには六歳以前の記憶がない。
養母の話によれば、十年前……レラが六歳のときに両親が他界して、この家に引き取られたらしい。
当時の出来事については、養母も多くを語ろうとしない。またレラ自身も、特に不自由を感じることはなかった。
あるいは子供の頃の記憶など、そんな曖昧なものなのかもしれない。
養母リヨネッタは、ここミューキプン王国の首都ミューキプン市の下町で占い屋を営んでいた。占いの評判は上々で、客足も悪くなかった。
二人の義姉……六つ上の長姉シンシアは、幼い頃からレラに厳しかった。掃除や洗濯でこき使ったり、罵詈雑言を浴びせたり、特に理由もないのに折檻をしたりと好き放題に苛めていた。
二つ上のデイジアは、歳が近いせいか話が合う部分もあった。ただよくおかずを取られたり、なけなしの小遣いを巻き上げられたりした。
養母は二人の義姉の振る舞いを知っていながら、特に叱ることもなく放置していた。そして面倒な家事全般は、全てレラに押しつけていた。
それを不満に思ったことはない。彼女たちは、孤児である自分を受け入れてくれたのだから。
だから、決して疑問を持ってはいけないのだ。