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第10幕

 ミューキプン王国は、地図の隅にかろうじて載る程度の小国である。

 交通の要衝ようしょうにある訳でも、目立った観光名所がある訳でもない。農作物で細々と生計を立てているような、零細れいさい国家のひとつに過ぎなかった。

 唯一の特産品がカボチャである。

 あるとき汚い身なりをした旅の魔女が、一夜の宿を求めて王の城を訪ねてきた。

 王は臣下たちの反対を押し切り、魔女を手厚く持てなした。

 それに感激した魔女が、この地に祝福の魔術をかけると、たちまち甘くて大きなカボチャが実るようになったという。

 この国に古くから伝わる伝説だ。

 伝説の真偽はともかく、実際にミューキプンのカボチャは隣国でも好評だった。王家もカボチャの栽培は特に奨励しょうれいしている。

 そんなカボチャ王国のミューキプンだが、十年前に、王が急死するという悲劇が起きていた。

 王には嫡男ちゃくなんがいなかったため、やむなく弟が新王として即位した。

 多少の混乱はあったものの、新王の治世は上々だった。むしろ閉鎖的だった先代の兄王と違って、周辺諸国と積極的に外交し、貿易にも力を入れるようになった。

 生活が潤ったことで、国民は新王を支持し、十年前の悲しい出来事はすっかり忘れ去られていた。

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