神との出会い
少し遅くなってすいません
ドパァン!
ボルティング35階層に響き渡る1つの銃声。しかし、放たれた弾丸は12発。
俺はあの魔族の招待を受けるためにリボルバーをもう1つ作成した。キラスとの違いはグリップ部分が黒色をベースに金色の装飾があることだ。名前は”タドミール”。しかし、リボルバーが2丁になったことで装填がしにくくなったため、キラスのシリンダー開放方式をスイングアウトからトップブレイクに変更し、タドミールも同様に作成した。
2丁のリボルバーから放たれた12発の弾丸は、それぞれ別の軌道を描きながら寸分違わず12匹の蛇の魔物を吹き飛ばし、背後から襲いかかってきた2匹の蛇の魔物をステップで交わしその間にリボルバーの装填を完了させ、頭を撃ち抜く。
その後も蛇の魔物や猪の魔物などの魔物を倒しながら下層へと下っていき、40階層から41階層へと続く階段の前で階層ボスと出会った。
そいつは神話に出てくる旧神の炎の精だった。大きさは普通の人間と変わらないが、実体を持たず全身が炎で覆われている。
30階層にも神話の生物がいたが、この迷宮は一体なんなんだ?
俺はとりあえずキラスを1発撃ってみたが、当たる前に蒸発した。それがわかっていたのか炎の精は微動だにしなかったのがイラっとした。
今度は防御魔法を付与した弾を撃ってみた。
キュバン!
独特な音を響かせながら炎の精に迫る。弾丸全体が防御魔法に覆われているため、撃鉄が防御魔法を叩く独特な音が鳴るのだ。
炎の精に迫った弾丸は蒸発せずに炎の精の肩を撃ち抜いた。
「貴様、我の身を傷つけるとは大したものだ。貴様を我の全力を出すに値する敵と認めよう」
「お前喋るのか....」
魔物、といっても炎の精は神だが、喋るとは思ってもいなかった。
「今の弾は防御魔法と別に、破壊魔法も付与していたんだ。あんたは実体を持たないから、普通の弾丸だと通り抜けると思ってな」
「それは見事な観察力だ。お返しとして我の力も見せるとしよう」
炎の精はそう言うと、俺の前に現れた。そして、炎を纏った拳をストレートに突き出してくる。
動いたのがわかった瞬間に後ろに下がってなければ、この一撃で致命傷だったかもしれない。
「神にも近接タイプっているんだな」
そんなアホなことを考えながら炎の精に10発の弾丸を浴びせる。もちろん全てアミナ弾だ。
壁や天井を使って反射させた弾丸は炎の精を前後左右あらゆる方向から襲いかかるが、その全てを体の捻りだけで躱し、俺の背後に現れ再び拳を放ってくる。これは躱せないと判断した俺は炎の精に向かってアイネ・ドルックを発動した。
アイネ・ドルックは空気を圧縮し衝撃波を生み出すことで攻撃する魔法だ。比較的魔法陣が簡単なため威力や範囲を調整しやすく、魔力のコストパフォーマンスもいい。
こんな魔法を使ったところで炎の精を倒すことはできない。しかし、俺の身体を吹っ飛ばすのには最適な魔法だ。
衝撃波を利用して炎の精から逃れた俺はタドミールを仕舞い、次元空間からアフェクシオンを取り出し、右手にアフェクシオン、左手にキラスを装備する。
身体強化を施し、強化された脚で地面を蹴り炎の精に斬りかかる。それを炎の精は難なく躱し、蹴りを放ってくる。
炎の精の一撃は速い上にダメージが大きいため厄介だ。
炎の精の蹴りを剣で逸らしてキラスを発砲する。
そんな攻防が入れ替わる戦闘を10分ほど続けたが、炎の精が吐血したことで終わりを告げた。
「これは....毒か?」
「そうだ。あんたが拳で剣を受け止めるたびに毒を魔力を通して流させてもらった。気づかれないようにするのが大変だったよ」
「旧神とはいえ、我に毒を盛るとは....変わったやつだな」
「よく言われるよ」
「だが、ここからどうするのだというのだ?貴様が我に対する決定打を持たない、故に貴様が我を殺すことは不可能であろう?」
「本当に決定打を持たないと思うか?」
「....何?」
「確かにあんたは実体を持たないから普通は殺すことなんてできない。だが、神にも魔力がある以上、魔力暴走を起こさせることは可能だ」
「貴様、まさか魂を破壊する気か!?人間ごときに神の魂を破壊することなどできるはずがない!」
「だから普通はと言っただろ?俺の膨大な魔力を強引に体内に流し込むことで魔力暴走は起こせる」
ゆっくりと毒が完全に回って体を動かすことができない炎の精に近づく。
「待て!やめろ!!やめてくゴアッ!」
炎の精の頭をキラスで吹っ飛ばした。
「うるさいから黙っててくれ」
ありったけの魔力を炎の精に注ぎ込み、魔力暴走を引き起こさせる。
魔力暴走は神といえど抑えることはできない。起こったが最後、体内から崩壊が始まっていく。
炎の精の最後を見届けた俺は、41階層へと続く階段を降り始める....
もうそろそろ主人公の過去編を入れようかと思ってます。