魔族との出会い
カランカラ〜ン♪
扉を開けると同時に綺麗な鈴の音が室内に響く。
店の奥から20歳ぐらいの女性が現れた。キレイな茶色の髪は腰まで伸びていて、エリィとは違った大人の色気がある。
「こんにちは!なんでも屋のイドベルガです。今日はどのようなご用件で?」
その女性が丁寧な口調で話しかけてきた。
「こんにちは、俺はアルヴァです。今日は家を購入しようと思ってるんですが、物件紹介と購入のサポートをしてほしくてこちらを訪ねました」
「え〜と、家を購入は本人様がいないと購入できないんですが....」
どうやら俺たちが誰かに頼まれて来たと思っているらしい。まあ、そりゃそうだろう。普通は17歳の子供が家を買えるほどの金を持っているはずもない。
「家を購入するのは俺ですよ。予算は4000万Geld〜6000万Geldぐらいを考えていますが、多少前後しても構いません」
そう言うと、なんでも屋の店主”イドベルガ”は少しこちらを疑うような目で
「もしそのお金が自分で稼いだものでなければ、国の法律に反しますので牢獄に行くことになりますが....」
「大丈夫ですよ、ちゃんと自分たちで稼いだ金なんで。どうしても信用できないなら、俺が渡した金を鑑定器にかけてもらっても構いません」
鑑定器とはその物が誰のものか判別できる魔道具だ。
「そこまで言うのでしたら本当なのでしょう。ですが、できたら隠蔽魔法を解いていただきたいですね」
この店主、気づいていたのか....。道理で最初から俺を怪しがってたわけだ。俺は要求通りに隠蔽を解いた。
「.....これは、すごい魔力ですね」
「ええ、ですからいつもは魔法で隠しているんですよ。ですが、よく気づきましたね」
「こういう仕事やってたら、たまに変な人が来るので隠蔽魔法とかには少し敏感なんです」
イドベルガさんはなぜか”敏感なんです”のとこだけ少し色っぽく言った。隣のエリィの目が怖いのでやめていただきたい。
「ところで、どのくらいの大きさをご希望ですか?」
「そうですね、二人しか住まないのでそんなに大きさはいりません。ただ、できるだけ防音が効いてるとこがいいです」
「それはお二人で夜の営みを楽しみたいから、ですか?」
何言ってるんだこの人....。そしてエリィ、俺を獣を見るような目で見つめないでくれ。
「違いますよ。ただ会話を聞かれるのが嫌なだけです」
「そうですか。でしたら・・・・・・」
* * * * *
五、六時間ぐらいイドベルガさんといろんな家を見てまわり、二階建てのアンティークな雰囲気が漂う家を購入することにした。
俺はイドベルガさんのサポートもあって、特に困ることもなく無事家を購入できた。
「今日はいろいろとありがとうございました」
「また何かあったら訪ねてくださいね」
別れの言葉を言って、イドベルガさんは店のほうへと戻っていく。
「さてと、エリィ」
「どうしたのアルヴァ?」
「とりあえずお風呂に入ろう」
「お風呂...って、また私の体を弄ぶの!?」
「いや、一緒に入りたかっただけなんだが.....」
エリィの俺を見る目が完全に獣を見る目だ。
「信じてくれエリィ、俺はただ一緒に「キャァ!」...!?」
「アルヴァ、今の声って!」
「ああ、イドベルガさんだ。行くぞ!」
「うん!って、ちょっと!なんで抱えるの!?」
「俺がエリィを抱えて走った方が速いだろ!」
「それはそうだけど....地味に胸触るのやめてよ!」
そんなやりとりをしながら俺は屋根の上を走りながら声のした方へ向かい、気配探知でイドベルガさんを探す。
「いたぞ!だが、なんだこの気配は....」
「アルヴァ?」
「これは....人間じゃない?」
そしてイドベルガさんを目視できるとこまで来た時、俺は違和感の正体に気がついた。
「おいおい、なんで街中に魔物がいるんだ....?」
本来、迷宮の中と国の外にしかいないはずの魔物がいた。迷宮の中から魔物が出てきたとは考えにくいが、国を囲うように結界が張ってあるので入ってこれないはずだ。もし結界が破られたとしても円形状に防壁があるため侵入は困難だ。
理由を考えるのは後にして、とりあえずイドベルガさんを助ける必要がある。
俺は魔物のそばに降り立ち.....それが魔物なんかじゃなかったことを知った。
金髪の髪に赤い瞳、そして整った美形の顔....こいつは魔族だ。
「アルヴァさん、早く逃げて!こいつはアルヴァさんをねら....ぐぁっ...は..なし..て!」
魔族がイドベルガさんの首を締め、魔族の手を引き離そうと頑張っている。よく見ると彼女のキレイな身体に殴られた痕がいくつかある。おそらく魔族に拷問されたのだろう。俺の居場所を聞かれたのだろうが、今までの様子を見る限り、言わなかったらしい。
「おいそこの魔族、お前が探しているのはアルヴァ = リーコックだろ?それは俺だ。話を聞くから彼女を離してくれないか?」
「私を見ただけで魔族と気づきますか。さすがですねアルヴァ = リーコック」
「その独特の魔力は魔族特有のものだからな、気づく奴はすぐに気づくさ。それより、彼女を離してやってくれ」
「おっと、これは失礼」
魔族はそう言って、イドベルガさんの首をつかんでいた手を離した。
「イドベルガさん、こっちに」
「ケホッ、ゴホッゴホッ....あ、ありがとうございます、アルヴァさん。でも、早く逃げたほうが....」
「逃げれるなら逃げたいですが、あまり逃がしてくれる気はなさそうですよ?」
実際、逃げたところであの魔族は追ってくるだろう。
「こっちの自己紹介はしたんだから、あんたもしてくれないか?」
「そうですね、私はレプシウスといいます。以後お見知り置きを」
「一生出会いたくねぇよ...」
「フフフッ」
この魔族、何が目的なんだ?俺を殺したいわけでもなさそうだ。
「ところで、何が目的だあんた」
「あなたに招待状を渡しに来ただけですよ」
「招待状?魔族が集まるパーティーになんか行きたくないぞ?」
「会場には私しかいませんよ。それに、あなたは来ざるを得ないでしょうから」
「は?それはどういうことだ?」
そしてレプシウスと名乗る魔族が魔法を発動した。俺は咄嗟にディスペルしようとしたが、発動するほうが早かった。
俺はイドベルガさんを横に押しのけて、エリィの前に立つが....
「ぐあっ!?なに、これ!?」
エリィが苦しげな声で叫んでいた。エリィの首には見たことのない毒々しい赤色の模様が刻まれていた。
「おいてめぇ!エリィに何しやがった!?」
「安心してください、この魔法に人を傷つける効果はありません。ただ、ちょっと感じやすくしただけですよ」
なんともタチの悪い魔法だ。エリィを見てみるとすでに顔が赤くなって立っているのも辛そうだ。
「....クソ、会場はどこだ」
「話が早くて助かりますね。会場は、ボルティングの50階層です。彼女を連れてきてくれないと魔法を解除できないので気をつけてください」
「迷宮の50階層だと?そこがお前らが住んでる場所か?」
「詳しいことはそこでお話しするとしましょう。それでは私はこれで失礼します」
そう言い残してレプシウスは消えていった。
「エリィ、大丈夫か?」
「アルヴァ、もう、ダメ、耐えれない....アルヴァが欲しい...」
エリィの目が蕩けている。スカートの中から少しトロっとした液が垂れてきているので、本当に限界なんだろう。厄介な魔法を掛けてくれたもんだ。
「エリィ、俺が背負って家まで帰るから、もう少し我慢してくれ。あと、イドベルガさんも俺の家に来てください。傷の手当てをしないといけませんから」
「ごめんなさい、ありがとうございます」
俺は背中にエリィを乗せてイドベルガさんを脇に抱える。エリィが甘〜い声でハァハァ言っているが、今は気にしている暇がない。俺は屋根の上を走りながら家まで帰る。
屋根と屋根を飛び越えるたんびにエリィが絶頂していた.....
次回からがっつり戦闘になると思います。
更新遅くなるかもしれないです。