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世界の理から外れた存在  作者: ユウミ
2/7

思い出話

2019/01/8 大幅修正しました。前の方が好きだった人はごめんなさい。

「.....ヴァ、...ルヴァ、ねぇ、アルヴァってば!」


長いこと呼んでいたのか、ちょっとムスッとした顔で叩き起こされた。


「あと5年待ってくれ……」


少し寝ぼけながら答える。


「いい加減にしてよ!何時だと思ってるの!」


俺は視線を横に向けてサイドテーブルにある時計を見る。時計の針は11時17分を示していた。


「もうこんな時間か。今起きるからどいてくれ」


起こしてくれたのはいいのだが、エリィはなぜか俺の上に乗っかっている。起こすだけなら上に乗る必要はないと思うのだが...


髪を整えて居間に行く。


「今日のご飯は少し気合い入れてみたの!アルヴァの好きなリゾットだよ!」


「おぉ!それは楽しみだ。まあ、エリィのご飯は何でも好きだけどな」


「恥ずかしいこと言わないでよ!でも、嬉しい。ありがとう」


エリィが照れながらご飯の準備を手際よくしていく。


「一緒に住み始めてからもう11年か」


「そっか、あれからもう11年も経ったんだ」


「11年前までの俺は一体どんな奴だったんだろうな。なにも覚えていない」


「とても優しくて、強かった。誰よりも優しくて、誰よりも強い心を持ってた」


エリィが昔を懐かしむように言った。


「優しくて強かった、か。でも、前の俺は何もかもが普通だったんだろ?それなのに誰よりも強かったのか?」


「うん。確かに魔力も戦闘も普通だったよ。でもね、心は誰よりも強かったよ」


「心?」


「私ね、昔イジメられてたの」


「え?エリィが?」


今のエリィからは想像もできない話だった。


「うん。いっつも男の子たちに物を取られたり、捨てられたり、ひどい言葉もいっぱい言われた。時には暴力だって振るわれた」


「女の子に暴力を振るう奴なんて最低だな」


「ふふ、やっぱり、変わらないね」


「え?」


「昔のアルヴァも同じこと言ってた。その時、一番強かった子に臆することなく立ち向かってくれた。当然、男の子たちの注目はアルヴァに向いて、ボッコボコにされてた」


「今の俺にはボコボコにされるなんて想像もできないな」


「でも、どれだけボコボコにされてもアルヴァは絶対に逃げなかった。それでね、私その時アルヴァに聞いたの。なんで逃げないの?怖くないの?って」


「俺はなんて言ったんだ?」


「怖いし痛いけど、僕が逃げたら君がまたイジメられちゃう。君は女の子だから体に傷をつけたらダメだよって」


「よくそんな恥ずかしいこと言ったな俺」


「その後も何度も何度も殴られて、だけど何度でも立ち上がって私を守ってくれた。ただ私が女の子ってだけの理由で。その後、男の子たちが逆に怖くなったみたいで逃げていったんだけど、アルヴァが倒れたの。すぐに走って先生を呼びに行ったけど、まだ小さかった私はアルヴァが死んじゃったって思った。それからアルヴァが目覚めるまで泣いたのをよく覚えてる」


俺はその時のエリィを見てなんとなくわかった。俺たちの関係はそこが始まりだったんだと。


「だからアルヴァが目覚めたって聞いた時本当に嬉しかった。あざだらけで動くだけで全身が痛かったけど、無視してアルヴァのとこまで走った。アルヴァ、私を見て最初になんて言ったと思う?」


「なんて言ったんだ?」


「大丈夫だった?って、微笑みながら言ったんだよ。私よりずっとずっと重症だったくせに。その時、私は誓った。アルヴァに一生ついて行こうって、いつかアルヴァが困った時の支えになってあげれるように」


「そして今に至るってことか」


「うん。そうだね。今も昔も変わらずに私はアルヴァが大好き」


「俺もだよエリィ。その時のことは覚えてないけど、例え悪魔や神様を敵に回すとしても、エリィは絶対に守るさ。そういえば、昔の俺も金髪に赤色の瞳だったのか?」


「ううん、昔は髪も瞳も黒色だったよ。アルヴァがあの石を拾ってきて、金髪に赤色の瞳になってた時は驚いたなぁ。私はカッコいいと思ったんだけど、大人の人たちはなんだか大騒ぎしてた。悪魔がなんとかって」


「悪魔?」


俺は何故かその言葉に言いようのない不安を覚えた。


「言い伝えにあった悪魔がアルヴァと同じ姿だったんだって」


「そうか……」


「アルヴァ?」


「いや、なんでもない。それより、明日はエリィの装備を買いに行く日だったな」


「うん!ついに私も迷宮レビューできるんだ!」


「そんなにいい所じゃないけどな」


「アルヴァがいるならどこでもいい所だよ!」



この時、止まっていた歯車が動き出したことは誰も知るはずがなかった。

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