死せる巨岩鳥の悩み
長いこと放置していてすみません。続きが気になるというお声にこたえて短いですが続けて見ました。
新キャラ視点。
新キャラだけどずっといました。そんな存在。
続きが読みたいあなたの為に書きました。プレゼントフォー・ユー。
死は突然に訪れた。
餌を巣にたくさん持ち帰り上機嫌だった所に空から巨大な岩が降って来て頭蓋貫き岩山に我を縫い付けたのだ。
太古から永く生きてきた我である。生者必滅は理解している。大分昔に滅んでしまった強敵や友達も死して大いなる魂の一つに戻り魂をまっさらにする休息の後に浄められた魂はいつか新しい命を得て一からこの世界に生まれてくる。
だから我もこんなうっかりとした死に様は残念であるが死を受け入れ魂の向かうべき流れに身を任せようと思っていた。
だがそうは問屋が卸さなかった。この我を殺した巨大な岩。どうやらこの世界の外。遥か天空の彼方からやってきた星の欠片であるらしい。
我を殺したばかりか我が魂さえも骸ごとこの地に縫い付けおったのだ。
一瞬の内に死んでしまったので潰された痛みはないがどこにも行けずただ己が骸の回りを俯瞰で眺めることしか出来ない。自由な翼を持ち大空の覇者として生きていた我には例えようもない苦痛に満ちた日々であった。
餌達は我の巣穴に住み着いて繁殖した。
我の亡骸を岩山の一部と思って通りすぎ木ノ実を集めて戻ってくる。
そのまま逃げおおせればいいものだが、我が縄張りを越えるとこんな小さき者では生きては行けない野生の世界があった。
それでも木ノ実でなんとか餓えをしのぐ生活に見切りをつけたのか雄達が雌や子供、老いた個体を置いて旅だった。
無謀な旅立ちと思ったが我にはどうすることも出来ない。
案の定山を降りた道半ばで気配が消えた。
ある夜星がたくさん流れて落ちた。あのひとつが我を……複雑な想いがあるが光る尾をなびかせて落ちる星達は美しかった。
その時同じく星を見ていた子供が覚醒した。
何をどう覚醒したかは、わからないが元々精霊に愛される資質を持つ子供だ。
それなのに本人は全く精霊を感知出来ないようで愛し子に尽くしまくっているのに気づいてもらえない精霊達を哀れに思っていた。
この覚醒で精霊達と愛し子が交流を持てば彼らが住みよい場所まで旅立つ事も可能だろう。
死して縫いつけられた我と違い彼らは生きているのだ。
初めは餌と認識していたが死して動けぬ身では食欲も霧散したし、眺めているだけで彼らは我の無聊をなぐさめてくれた。
少しワクワクしながら様子を見ていたがどうやら『知識』の覚醒らしかった。
誰に学ぶ事もなく、アレほどの知識。
よほど祝福された魂で魂の大元の加護があるのだろう。
そして精霊はやはり見えないままのようだった。