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転生なのにチートじゃないなんてひどすぎる…

この世は地獄です。

「なにやってんだてめぇ!!」

貴方の指示した仕事をしたんです。

「ちゃんと考えてやってんのか!この馬鹿!!」

毎日毎日何をしても怒鳴られて殴られて反抗どころかもう何も考えられなくてゼンマイ仕掛けの人形みたいに決められた時間に会社に向かって仕事して上司に理不尽に怒鳴られて。

あぁまた叱られると思うと息をするのも苦しくて眩暈とかして意識が遠のいて、ぼわんぼわんと耳鳴りがする中、女性社員の悲鳴がかすかに聞こえた…。


俺、猫山みのる。

就職してからの記憶が定かでないくらいうろ覚えなんだけどそんな感じで終わった気がする残念な元社畜。

魂をすり減らすだけすり減らして死んでしまっただなっって…自分の事なのに他人事みたいに感じていた。

何せ自分が死んだことより一大事が今そこにある現実として俺の目の前にある。


この世界に生まれた記憶と俺の自我が混濁してオークの少女ミノアに生まれ変わって今前世である『猫山みのる』が覚醒したのだと唐突に理解したからだ。


ちょっとまって。無理しんどい。


俺の中のミノアちゃんが必死に生きてきた記憶がマジしんどい。

異世界転生って言ったら普通チートパワーで俺TUEEEでイージーモードで勝ち組になれるのがデフォでしょ!!

オークに生まれてほぼ原始人生活ってなんなの!?普通勇者とかいっそ魔王に生まれ変わって前世の憂さを晴らさせてくれるんじゃないの!?

そのお話はフィクションですってか!!知ってるわ!!世の中うまい話なんてないのが現実なんだ!!ポイズン!!

異世界転生で幸せになれる…そんな夢物語に心救われてたんだあの頃の俺!!くたびれた社畜の心の支えだったのに…まぁ結局死んだけど……


ひとしきり動揺した後に、冷静にこれからの事を考える。

この集落には今疫病が流行している。まず年寄りが一気に死んだ。

その後じわじわ大人たちが体調を崩している。

おかげでミノアちゃんの心労待ったなし。

子供は無事だ。多分俺という前世をもったミノアに俺の感覚が漏れ出ていたんだと推測されるがミノアはとにかく清潔に留意していた。

自分が世話する子供たちにも口を酸っぱく清潔を心がけるよう躾けていた。

子供が無事なのはそのおかげだと思う。

原始生活、本物の野生で生きてるオークだけに衛生環境が絶悪なのだ。

というか大人のオークの汚らしさがひどい。

茶褐色の皮膚にごわごわした毛を生やし(雌しかいないのに!!)洗うという概念がないのか手はいつも汚れていて彼女らが採ってくる果実は手の汚れがべったりついて黒ずんでいるのでめちゃめちゃ洗ってから食べるようにしていた。

川が近くにあるのに水浴びもしない。

狩りでとって来た獣の肉を生で食べるのを見て幼いミノアちゃんも当時からドン引きしていた。

血まみれの顔を拳で拭って終わりなのでアレが親とかマジしんどい。

てかほんと2足歩行の豚の魔物なのオークって…知性のない虚ろな目でもの食ってる豚頭。

昔観た名作アニメ映画の冒頭で主人公の両親が知性のない豚になってしまうシーンの豚の表情が子供心に怖くて泣いたことがあるんだけどアレを思い出した。

丸っきり豚っていうよりは豚よりの進化した魔物。立って歩くし、指もちゃんと5本ある。

正直化け物としか思えない。

ミノアちゃんは親として慕っていたようだけど俺の自我が目覚めた以上もう近寄るのも無理だと思う。

臭いしおっかないし。生前の上司を思い起こさせる理不尽を強いてくるし。

ミノアちゃんは気づいてなかったけど大人たちはミノアちゃんを奴隷のように扱っていた。

きれい好き過ぎるのを馬鹿にして殴ってきたりもしたからその件も含めて絶対許さん。

といっても弱ったところをぶちのめすとかそんな暴力的な復讐をするつもりは毛頭ない。

こちとら理不尽上司にいじめられるまま過労死した気弱な社畜だ。そんな気力あるわけない。

ただ、アンタたちが年寄りにしたように病気になった奴は放置する。

知恵のないオークにとって弱ったものを見捨てるのは当たり前のことなのだろう。

その教えだけは守ってやる。


それに自分ことミノアには守らなきゃいけない8人(匹?)の子供たちがいる。

あの子たちを守りたい、強い決意は俺がミノアである限り揺らぐことはないのだろう。

なにせ子供のオークはめちゃくちゃ可愛いのだ。

生まれたてのオークは1週間ほどで歯が生えてくるので授乳はそれまででそこから果実を食べさせろと世話を丸投げされていた。

赤ちゃんオークはまんまミニブタしかもピンクの子豚!黒目がちのつぶらな瞳で「きゅーきゅー」って可愛く鳴く。癒しオブ癒し。ミノアちゃんの思い出の中でも子豚ちゃんの天使っぷりは動画で保存したいレベルでやばかった。

成長が早いので今一番下が3歳児くらいの大きさになっている(実際は生後3か月)。体は大きくなったけどまだまだ赤ちゃんでハイハイが上手な双子の女の子、ティナとマヌアはまだちっちゃいので自分の事「ちー」と「まー」って呼んでる。可愛い。肌がピンクでまんま子豚のぬいぐるみみたいで可愛い。

ミノアの事が大好きで「みーちゃ」って呼んでくれる。

次が5歳児(生後6か月)くらいのが3人ゾーイ、ガウル、ダナンはやんちゃな男の子3人。自分で立って歩き回れるようになったので体の洗い方とか自分で洗えるようになったんだけど最初はめんどくさがってたのにいつのまにか熱心に清潔を保つようになってたのでやっぱりきれいにすることが快適で気持ちいいとわかってくれたんだと思う。

そして7歳児(生後8か月~9か月)ユリア、メイ、バルサ、ユリアとメイが女の子でバルサが男の子だ。この子達はもうお姉さん、お兄さんの自覚があってまだミノアよりも全然ちっちゃいのになんでもお手伝いしようと頑張ってくれるし意外に力仕事もちょいちょいできる。さすがオーク…

特に男の子のバルサはお仕事をこなせるアピールが凄くていつもなにがしかミノアの仕事を奪おうとする勢いだ。

なんかね、この子達の目が凄くキラキラしてて表情もすごく賢そうで、動物っていうより絵本に出てくる感じ。絵本の動物も2足歩行で服着たり生活したりするあの世界観にある洗練されている雰囲気に近い。

顔ツキもシュッとしてて、鼻はオークなんで上向きで豚顔なんだけどわりとイケてる感じなんだよね。

そんな健気な子供たちがミノア大好きオーラを隠すこともなく慕ってくれてるから放っておけるわけがない。


ミノア含め子供たちは肌も毎日洗ってるおかげで白よりのクリーム色っぽいすべすべの肌をしてる。

おいおい……今気が付いたけどオーク(成人)の茶褐色ってそういう種族なんじゃなくてもしかして汚れて黒ずんであの色なの?

オークマジ無理すぎんべ!!


俺は絶対にあの子たちを色白愛されオークに育てて見せる!!

色々課題はあるけどまずは働けなくなった大人に代わりに食料調達だな。

ちーとまーをユリアたちに任せて森に行こう。

バルサは連れて行かないと拗ねそうだから連れてくか。







前回はバルサ視点でした。

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