保安隊海へ行く 42
誠は一人、和室の布団から起き上がった。つぶれはしなかったものの、地下のバーで何があったのか、はっきりとは覚えていない。要にはスコッチなどの蒸留酒を多く勧められたせいか、頭痛も無く二日酔いでもないがなぜかすっぽりと記憶だけが抜け落ちていた。
「起きやがったな」
髭剃りを頬に当てている島田が目をつける。隣のキムも少し困惑したような顔をしていた。
「何か?」
「何かじゃねえよ!人が寝ているところドカドカ扉ぶっ叩きやがって!お前、酒禁止な」
島田は指をさして怒鳴りつける。キムも頷きながら誠をにらんでいる。
「島田先輩ー!」
取り付く島の無い島田を見送ると、誠はバッグを開けて着替えを出し始めた。
「あのなあ、あの怖え姉ちゃんと何してたかは詮索せんが、もう少し酒の飲み方考えたほうがいいんじゃないか?」
準備が終わったキムが苦笑いを浮かべている。
「そうは思うんですけど……」
「無駄無駄!そんなに簡単に出来ないって」
島田は髭剃りを置いてベッドに腰掛ける。誠はシャツを着ながら昨日のことを思い出そうとするがまるで無駄な話だった。
「じゃあ次は僕が」
誠も髭剃りを持って鏡に向かう。島田は立ち上がった誠の肩を叩いて呟く。
「まあ、あれだ。あの席にいて西園寺さんを切れさせなかったのは褒めとくよ」
言うだけ言ってさっぱりしたのか、島田はそう言うと新聞を読み始めた。
「そうだな。傍から見ててもあれは針のむしろって感じだったからな」
うなづきながらキムが髪を撫で付けている。褒められているのかけなされているのか良くわからないまま誠は髭を剃り続けた。
「それにしてもいい天気だねえ」
髭剃りをしている誠を見ていても面白くないと言うように、新聞を手にしながら振り返った島田の後ろには、水平線と雲ひとつ無い空が広がっていた。
「まあなんだ。今日はとりあえず馬鹿の菰田を徹底的に叩きのめすと言うことで行きますか?」
島田がそう言うと読みかけの新聞を投げ捨てた。髭を剃り終わった誠は頭をセットにかかる。
「神前、腹減ったから俺達先に行くぞ」
そう言って立ち上がる島田とキム。誠は振り返って後姿に目を向ける。
「すいません、先に行っててください」
そう言いながら二人を見送り、誠はジーンズを履いた。




