賢者な魔王の黄昏
一応言っときます。
これは夜に見た夢に若干の加筆したものです。
20161204
私は賢者の域に有るもの。
今の棲家は魔王城。
何故か魔王が拾ってくれた。
研究に明け暮れ、何か出来ると魔王は積極的に使ってみてくれた。
気さくな狼王だった。
私が作ったゴーレム達が球技する様子を、自前の三輪車で見に行った帰りに、彼らが使っていた回復アイテムに興味を持ってしまい考え込んでフリーズして帰りが遅くなった時も心配していた。
「マイペースなお前を見ているのが楽しい」
そう言っていた魔王が死んだ。
魔王城に入り込んだ勇者とか呼ばれていた人間に討伐されたらしい。
そう人伝に聞いた。
私の部屋には彼らは来なかったので魔王の良さを語って聞かせられなかったのがとても残念だ。
しかし城がなくなった訳ではないので、私は今も人から放逐されたのを拾ってくれた魔王の城の一室に住んでいる。
少数だが残った者達と魔王が作った自給自足の管理方法を模しての生活だ。
人員が足りなければゴーレムを増やしたので何とかなった。
私自身に管理能力はないので使えそうな者を探しに行ったりもした。
そんな旅先で暴れる獣人を見つけた。
姿は怒っているのに、私には泣き叫んでいるように見えた。
私に心の中まで見透す力はなかったはずなのだが……
とにかく周りが遠巻きにしているうちに声をかけた。
暴れたいなら暴れて発散すれば良い。
場所も相手も用意すると話せば喜んで付いて来た。
周りが安堵のため息をついたのを見かねたが、そういえば私が魔王に拾われる前もこんな感じだったのを思い出せた。
人のいない岩石地帯で発散相手のゴーレムを作ってやって戦わせて観察して見ると、彼は力の調整が出来ていないのがすぐわかった。
しかし私は戦闘指南は出来かねる。
なので城に部屋を与えて自由にさせた。
時々様子を見ると、溜めた力を発散して技としたのを嬉しそうに教えてくれた。
そんな彼が城の皆に慕われ始めた頃、魔王城に勇者が来た。
彼に従者を伴い城の補強用の石材を取りに言ってもらい、私が相手をした。
自給自足の魔王城の何を怖がるのかわからないが、勇者は私を「魔王」と呼んだ。
ため息をはく。
私の姿はそこまで人間からかけ離れたものになってしまっていたのだろうか。
この城に属さない者達が人の村を襲うのまで私のせいになっているようだ。
その村を襲ったという者だとて、おそらくは飢餓によるものだろう。
人の強迫観念と言うやつだろうか。
外に出した彼に申し訳ない気持ちになりながら……私は勇者に討伐された。
……魔王として。