事は思いの外早く進む
「え?魔法学校?」
「そう1週間後、荷物まとめて城下町に引っ越すからそれと同時にミオには魔法学校に通ってもらいます」
「・・・なんでまたそんな急に」
その日の夕食のこと。
はいっと渡されたのは小さいからからこの森で育った為にこの国ついて全く知らない私でも聞いた事があるこの国の魔法学校の入学案内である。
突拍子なのはいつもの事だが、
そんな簡単に前に住んでいた場所に戻っても大丈夫なの?と母に疑問をぶつければ、にっこりと黒い笑みを浮かべられたので余計な検索はしないでおこうと行き止まった。
触らぬ母に祟りなしである。
ぺらぺらと入学案内についての要項を見ていれば、私自身の大まかな情報が入ったプロフィールらしきものが書いてある資料があった。
なるほど、手続きはもう済んでるらしく、私が入学するのは強制らしい。
「この国の子供達は個人差はあれど魔力というものを生まれつき持っているわ。その魔力を原動力にした魔法という力を使える様になるために子供達はその魔法学校へいくのよ」
「ええっ、でもそれは裕福な家庭の子供達だけでしょ?」
「それは一昨年までの話。去年から優秀な人材発掘のために1年間だけ入学費を含め授業料は全て無料になったの。有能と見なされた子はそのまま無料で学園生活を過ごし卒業できるの」
「有能じゃないと見なされた子は?」
「学費が払えるならば勿論そのまま進級できるし学費が払えないならきっと退学よ。表向きは自主的に退学となっているらしいけど、ほとんど強制退学よ」
森羅万象を全て見通す瞳。
現役をやめた今でも、その瞳の力は衰えていないらしい母の言葉は信じるいがい何もない。
力の無いものは用無しか・・・。
きっと入学すれば弱肉強食の巣であろうに違いない。私にとっては一番苦手な世界である。
それでも今すぐに断ろと思わないのはきっと、
空気はいいし食料もあるし自然豊かで素敵な場所ではあるが親子2人で住むには不自由なこの生活のせいだと思う。
それにきっと今のままでは、
母の身体は良くならない。これは確信に近い。
何より治療魔法も知らない今の自分では、
母の手助けにもならないと思う。
・・・しかしやはり。
明らかに力と権力が物を言うであろうこんな学校に行っては自分の心労に負担がかかるのは間違いないし、
明らかに在籍中は魔法についての勉強や自主練を頑張らないといけない事も目に見えている。
あーやだやだ頑張りたくない。
母を想う気持ちもあるが自分の今のそこまで頑張らなくても過ごせている生活に対してのもはや執着心ともいえる気持ちも捨てきれない。
資料とにらめっこしていると母は両肘をおき、手を組みそのうえに顎を乗せてにっこりと笑う。
「いろいろ悩んでるみたいだけど・・・」
「え?」
「ミオに拒否権なんてないわよ?」
「・・・あっ、はい」
どうやら悩むだけ無駄だったみたいだ。