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なんでこうなった?(仮)  作者: 緑葉
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立ち向かえ?いいえ逃げます!逃げさせていただきます!

「今から帰るね、お父さん」


『ああ、うん。しかし、今日は遅いのではないか?』


「仕事だもん。仕方ないでしょう?」


『確かに仕事なら仕方がないが……出来るだけ急いで、しかし気をつけて帰ってくるんだぞ?なんなら迎えに----』


「大丈夫だって。いつもの事でしょう?逆に迎えにきたら絶交だからね」


『わ、わかった。くれぐれも気をつけるように』


「はーい」


通話終了。

と同時に携帯の画面の時間が目に入る。


20:03


残業して、この時間でこの心配様。

毎度の事ながら頭が痛い。

こんなんだから、みんなと一緒におちおち飲みにいけないのよ。


ふかーいため息をひとつついて、会社を出る。


「おつかれー。飲みにって言いたいけど……やっぱ無理だよね?」


出たところで同僚の悠子が話しかけてくれたけど、そっと首を振って断る。


だって、突発の予定なんて入れたら父が面倒くさいことになるし。

あーあ。私も行きたいなー。


「だよねー。今度いける時があるといいねー。じゃあ、お先ー」


賑やかに去っていく一団を羨ましさで見つめ、必死に反対方向を向く。

駅に向かいながら、心配性の父の度を越しまくっている状態をどうにかできないものかと思う。


なんでうちの父は成人してすでに3年も経っているのに、こんなに子離れできないのよ!

母も母よね!

横でにこにこ笑っているだけで、父の暴走を止めやしない。


小学生の門限が16時だったでしょう。

中学生になって17時になって、高校生の時は18時。

短大の時は19時で……

今は社会人になったんだからとあえて聞いてないけど、きっとこの法則でいけば20時?

やだやだ。

バイトだって、憧れてたのに出来なかったし……


もう、どうにかこの状態から抜け出せないかしら!


門限を破った時のお説教から、すぐに涙目になり、最後号泣する父の姿を思い浮かべつつ、また深いため息をつく。


泣くって卑怯だと思うのよね。

なんにもできなくなるんだもの。

良心の呵責に苦しむっていうか……


なーんで父はあんなに心配性になったのかしら?

妹に対しても同じだし。

妹といつも愚痴を言い合っているけど、妹もなんだかんだで父の涙に弱くて二人で門限まもっているのよねー。

妹ももう20歳になったっていうのに。


ここは一発、おねーちゃんがしっかりお父さんの目を覚ましてあげなきゃかしら!

妹のためにも!


……。


で、どうするよ?

具体的に何ができるのよ?


社会人として独り立ちできるってとこを見せなきゃだよね。

とりあえず、仕事はしているでしょう?

派遣だけど。


あとは……社会人としてどうしたらいいかなー。

一人暮らし?

派遣の身だと、結構チャレンジだけど……やってやれなくはない?

夜、ろくろく遊べないから、貯金もあるし。

よし、帰ったらネットで調べてみるか。物件。


開いた扉から、人が出て行く流れにのって一緒に電車を降り、改札を抜ける。

頭は一人暮らしの部屋をどうするかでいっぱい。


食器は白がメインだよねー。

食べ物が美味しく見えるし。

カーテンは何色にしようかな。

やっぱ私の好きな黄昏色かな。


わくわくしながら家に着く。


「ただいまー」


声をかけると


「おかえり。何もなかったか?」


いつもの父の言葉が出迎える。


「ないよー。部屋行くねー」


「あ、ご飯並べたわよ。食器洗っちゃいたいから先食べちゃって」


母の言葉に今すぐ調べたい気持ちを抑え、リビングに向かう。


あ、今日は酢豚だ。

おいしそ。


席について挨拶をして箸を伸ばして口に運ぶ。


うん、美味しい。


あー、一人暮らしになるとご飯を作らなきゃだよねー。

まぁ、共働きの両親だったから、自分で作る事が多々あったわけだけど、絶対母の作ったものの方がおいしいのよねー。

なんでだろうなぁ。

同じ様に作っているのになぁ。


「ごちそうさま」


横で色々今日の出来事を聞きたそうな父の姿を無視して食べ終えると、やっと部屋に着き、PCの電源を入れる。


立ち上がり遅いなー。

会社のと大違い。

やっぱ古いからなあ。

引越しついでにPCも新しくしたいよねー。

うーん、タブレットのがいいかも。

買おうかなータブレット。


父からのお古のPCを眺めながら、一人暮らしの夢が大きく膨らむ。



不動産


と検索入力。

一番最初にでてきたところを開くと、地域選択がでてきた。


どうしようかなー。

自宅から離れたいよね。

会社の近く……っていっても今のところも契約更新なかったら次はどうなるかわからないし。


色々思い描きながら検索を続けて夜は更けていった。


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