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道化の花冠  作者: 道草屋
8/15

8


高安は受付の男にもらった缶ジュースを手に、ロビーのソファでぼんやりと佇んでいた。


ほんの数分電話を借りただけだというのに、よほど暇だったのか、男は高安のことを根掘り葉掘り聞いてきた。警戒を露骨に示すと、別れた嫁についていった娘とよく似ていたからだと釈明してきた。高安はちょっと考えて、


「俺、男です」


男の慌てっぷりは録画して斎藤に見せたいと思うほどであった。謝罪の言葉と共に渡されたのが缶ジュースである。


斎藤が出て行ってから、もう一時間は経っている。全くどこへ行ったのやら。高安はただ、小さな声で外出を告げられただけであった。


しばらくベッドの上で過ごしたおかげで歩けるほどに回復した体も、電話のやりとりですっかり疲弊していた。缶の表示を見てみる。果汁が三割ほどを占めるリンゴジュースだった。これならば飲めるだろうかと、プルタブを開けてにおいを嗅いでみる。


飲んだ。


(……飲めた)


三口で気持ち悪くなったが、久しぶりに味わう甘さに頬が緩む。


「ん?」


ポケットの中に何かあった。取り出してみると、それはリンドウの花だった。車で目を覚ましたとき、枕元にあったのは覚えている。無意識にポケットにしまっていたようだ。そういえば、赤い花が自分の下敷きになっていたが、あれはなんだったのだろう。


リンドウの花の先は色あせて皺が寄っていた。高安は熱心にそれらを伸ばしていき、なんとか元の形に近づける。捨てるにはもったいない。にこやかに見つめてくる男に会釈して部屋に戻ると、そっとポーチに入れた。中に入っていた例の手紙は、びりびりに破いてゴミ箱に捨てた。


斎藤はまだ帰ってこない。読む本もなく退屈で、テレビをつけてみる。ニュースは自分たちのことを取り上げていなかった。バラエティ番組の内容はちっとも頭の中に入ってこなかった。


スポーツドリンクをちびちびと飲んで、栄養ゼリーも少し食べた。胃の不快感は拭えないが、せっかく買ってくれたのだからと頑張った。


「早く、帰って来いよ」


テレビの電源を落としてベッドに寝転ぶ。秒針の音がやたらと耳につく。一度気にするとなかなか耳から離れてくれない。それでも、目を閉じてふわふわと浅い睡眠に浸かるのは気持ちよかった。


どれほど経ったのか、幸せな夢の途中で目が覚めた。壁掛け時計を見やると、日付が変わっていた。だいぶ寝てしまったようだ。


「すぐに戻るんじゃなかったのか?」


電気はつけっぱなし、隣のベッドは空のまま、部屋のものは一切動かされていなかった。


暇を持て余した高安は、不安と好奇心に背中を押され、外に出てみることにした。まだ頭は重かったが、どこまで動けるのか確かめたい気持ちになったのだ。


気がめいるようなこれからのことを考えると、自分の意思で好きに動けるうちに動いておきたかった。今のうちに少しでも自由を味わっておきたい。


帽子をかぶり、ポーチを肩から下げる。鍵はかけずにおいた。すれ違いで中に入れなくては困るだろうという配慮である。念のため、外を歩いてくるというメモも置いておいた。斎藤の真似である。


廊下は照明が落とされて薄暗かった。ロビーよりも非常口のほうが近く、こちらを使うことにした。音を立てないようそっと扉を開ける。外は正面玄関の灯りがわずかに届くだけでかなり暗かった。さすがに人の姿はない。高安は夜の湿った空気をいっぱいに吸い込んだ。


駐車場にワゴン車はなかった。他に止まっているのはバイクと軽自動車だけであるから見間違えるはずもない。あの大きな車がないと妙に喪失感がある。高安は足元に散らばった煙草の吸殻を蹴飛ばした。


「どこ行ったんだよ」


ワゴン車の停まっていた場所、駐車場の中ほどまで行き見上げると、明かりが一つもないホテルの壁が、街灯のオレンジ色に上塗りされていた。何の面白味もない。つまらない。斎藤はいつ帰ってくるんだ。そこまで考えて、くっと喉が詰まった。


情けない、今からこれでどうするんだ。いじけた自分を叱る。入院生活を送るうち、一人でいることにも退屈にも慣れたはずだった。それなのに、無性に寂しさがこみ上げてきたなんて。誰のせいかといえば、ピエロが悪い。


ざぁ、と風が吹いた。汗は乾いていたが、寒気を感じた。もう少しだけ歩いたら戻ろうと、高安は植え込みに沿って歩きだした。


ホテルの周りをぐるりと一周し、再び駐車場の出入り口が見えたとき、高安は棒のようなものに躓いた。暗がりでよく見えなかったのと、ちらほらと見える星に気を取られていたのだ。声こそ上げなかったが転ぶ一歩手前までつんのめり、なんとか持ちこたえた。


「危ねぇなっ」


ゴミ捨て場からはみ出るそれを蹴飛ばしさらに毒づこうとしたが、その正体を視認して言葉を失った。


それは、頭から血を流してゴミ袋に埋もれる、斎藤の足だった。




唇の切れたところがぴりぴりとする。頭がふらつく。四肢が重い。全身が痛い。


赤信号に飛び出して車に撥ねられるなんて。しかも吹っ飛ばされた自分を置いて、車は走り去った。完全なひき逃げである。随分と派手な音がしたから、警察官も気づいたはずだ。彼らにはぜひあちらを追ってもらいたい。いや、パトカーのサイレンがすぐに聞こえたのはそういうことかもしれない。


交通事故の直後に立ち上がれたのは、運が良かったとしか言いようがない。サングラスはお釈迦になったが、人間案外丈夫なものだと場違いではあるが感心してしまった。だが、無傷というわけじゃない。体の中で嫌な音がしたのは、きっと肋骨が折れたからだ。その証拠に、わき腹が焼けるように痛い。


そんな体で大通りに出ることは叶わず、民家の自転車を拝借してホテル近くまでやってきた。興奮作用のある脳内物質が出ていたのだろう、それまで痛覚は鈍かったのだが、ホテルが見えてきた辺りで急激に痛み出した。自転車ごと倒れ込んで、また腕を擦りむいた。


そこからは建物の外壁や電柱を頼りにして歩いてきた。ホテル裏のゴミ捨て場まで来たところで躓き、袋の山に倒れ込んだ。


どれくらいそうしていたか分からないが、何かが足を蹴飛ばして、目が覚めた。子どもが時分を見下ろしていて、それが高安だと分かり、考える前に口が動いていた。


「悪い、遅くなった」


驚愕に目を見開く高安に「なんて顔してんだよ」と笑いかけるも、拭った額の血の量に表情が変わる。どうりで頭がふらつくはずだ。


「何があったんだよ!」


叫ぶ声が頭に響く。


「車に轢かれた」

「血が、血が出てるぞ」

「あっちこっち擦りむいたからなぁ」

「笑ってる場合か!」

「そうだな」

「おい、無理すんなって」


ふらつきながらも立ち上がる斎藤を支えようと、小さな体が寄り添ってくれる。細腕が触れた所がとても暖かくて、体が軽くなった気がした。思ったよりも動くことにほっとする。


「すぐに出発するぞ」

「傷だらけのくせに、何言ってんだよ」

「今すぐ行くんだ」


語気を強くして言い聞かせると、不承不承ながらも頷いてくれた。

とはいえ車は置いてきてしまったし、公衆電話で使おうとポケットに忍ばせた硬貨以外、金は全て投げつけたリュックサックの中である。ホテル周りの民家に車はあるが、キーがなければ動かない。


何かないかとあたりを見回すと、二人乗りのバイクが目についた。宿泊客のものだろう。近づいて見ると、それは以前斎藤が使っていたものと同じ型であった。


苦い思い出であるが、不注意からバイクを盗まれたことがある。ヘルメットをハンドルにひっかけ、その中に鍵を放り込んでコンビニに入ったのだ。盗んでくれと言っていたようなものである。普段はヘルメットの内側の、パッドの隙間に鍵を隠しておくのに、そのあってないような用心も怠った結果なのだから、自分を責めるしかない。


目の前のバイクのハンドルには、ヘルメットが引っかかっている。半球体の底を探る。もちろん何もない。斎藤はパッドの隙間に指を指し込んだ。これはもう癖である。その先に、記憶にあるのと同じ冷たい感触が、あった。


「どうした?」


急に笑い出した斎藤を、ぎょっとして見上げてくる。


(こんな偶然があっていいのか)


バイクの鍵が、斎藤の手の中で鈍い色を放っていた。トランクを開けると、ゴミに埋もれて少しばかり硬貨も出てきた。手持ちの分と合わせれば高速に乗れるだけの額になる。


「バイクが使える」


同じ被害者を出すのに少々の罪悪感はあるが、躊躇いはなかった。


「ただ、お前のヘルメットがない」

「なくても平気だ」

「被らないと捕まるんだよ」


斎藤の服はところどころ血が飛んでいたが今は夜中だ。人はまばらだし、暗ければ分かるまい。しかし、ノーヘルはまずい。帽子でカバーできる問題でもない。これは使えないかと諦めかけた斎藤の足を、高安がつついた。


「これならどうだ?」


そう言って両手で掲げるものは、自転車用のヘルメットだった。スポーツタイプなのかあちこちにくぼみや穴がある。


「どっから持ってきた」

「あそこの自転車のかごの中」


指さす先にアパートの駐輪場があった。ちょっと目を離した隙に、不法侵入と置き引きをしれっとやってのけるとは。


「これならいいだろ」

「ああ、十分だ」


高安を後部座席に乗せると、絶対に自分から手を離さないよう厳重に言い聞かせた。だが、折れた肋骨に触れられるのはかなり辛い。かといって下の方に手をやられてもそれはそれで困る。


最終的に、子どもの力でも安全に掴まれる場所としてベルトを選んだ。問題が一切ないわけではないが、現状では及第点だ。エンジンをかけると懐かしい音が腹に響いて痛かった。


「で、どこに行くんだ?」


思い出したように尋ねられ、父親に指定された地名を言う。


「そこ、うちの別荘がある場所だ」


驚きの度合いが声に表れていた。


「俺も、そこに行きたかった」

「お前もか」

「なんでそこに?」

「お前こそ、なんでだよ」


高安がだんまりを決め込んだので、この話はお流れになった。


高速道路の入口まで警察に呼び止められることはなく、無人料金所の監視カメラに見られた以外、子どもを乗せたバイクが注目されることもなかった。


深夜の高速道路は、昼間と打って変わってがらんとしている。バイクのエンジン音ばかりがぬばたまの夜に響く。


高安が途中で眠ってしまったら片手で運転してでも支えようと考えていたが、ベルトを握る手は固く、緩む気配はなかった。


しかし時間が経つにつれて、高安の息は荒くなっていった。斎藤はゆっくりと変化する呼吸になかなか気づくことができず、サービスエリアに立ち寄ってようやく知った。


「きついならちゃんと言えっての」


ヘルメットをつつくと、吐きそうだと青い顔で言われた。慌てて障がい者用トイレに連れ込み、間一髪服に吐くことは免れた。


背中をさすりながらちらりと便器の中を見る。吐いたものはさほどの量もなく、ほとんどが液体であった。


「お前、なんか飲んだのか?」

「スポドリを半分くらい。あと、ゼリーも少しだけ」


透明のものをペッと吐き出して、高安はふう、と力みを解いた。


「食べたのか」

「少しだけな」

「すごいじゃないか」

「はいはい」


なぜか難しい顔をして、すたすたと口をゆすぎに行く。どうにも斎藤の知っている嘔吐とは様子が違った。自分の吐きやすい体勢や呼吸法を心得て、楽に胃の中身を出している印象を受けた。


「吐き慣れてるのか」


案の定肯定の返事が戻ってきた。


「何度も吐いてれば、分かる」

「そんなもん、分かりたくないよな」

「だよな」


サービスエリアという名前ではあるがガソリンスタンドもコンビニもない。小規模な駐車場と高速道路の案内板とベンチと自動販売機が一つずつしかない殺風景な場所だった。唯一停まっていたトラックも、トイレから出た時にはいなくなっていた。


じくじくと疼くわき腹を庇いながら、斎藤はベンチに座った。襟元から中を覗くと、そこは赤黒く腫れているように見えた。

「痛むのか?」

「そこそこ痛い」

 折れているなんて言ったら高安はバイクに乗ってくれないかもしれない。何か買うかと持ちかけると、水が欲しいと言う。


「自分で行く」


立ち上がろうとする斎藤を制して小銭を受け取り、高安はポーチをぱこぱこさせて自動販売機に向かう。背伸びをしてボタンを押す姿に、十歳の少女が本来持つべきあどけなさはなかった。それが高安なのだ、高安らしいのだとしみじみ思った。


「吐いた後って喉が気持ち悪いんだ」


斎藤の隣に座り、ばつが悪そうな顔をする。


「確かにそうだな」

「吐いたことあんのか?」

「誰だって一度はあるさ」

「ふぅん」


高安は口の中をゆすぐように水を含んで転がして、ゆっくりと嚥下した。


「あんたは、いつ吐いたんだ?」

「俺か?」

手の甲の傷を確認していた斎藤を、好奇心たっぷりな目が見上げる。


「そうだなぁ」


今度は血のにじんだ腕をじっくりと眺める。視線がそれを追う。


「昔、入院してた時」

「どっか悪かったのか?」

「ここが、ちょっとな」


言いながら、拳を胸に当てる。


「心臓?」

「いや、心のほう」

高安が身を乗り出すも、視線は合わない。真っ暗な駐車場にはワゴン車以外に何もないのに、斎藤はじっと、何かを見据えている。


「家族は死んだって言ったろ? あれ、俺のせいなんだ」


突然の告白に高安の表情が固まる。


「母さんは俺のことをどうしても受け入れてくれなかった。父さんは、そんな母さんに離婚を迫った。俺と一緒に家を出て行くってな。そしたら母さんは、父さんを包丁で刺して殺した。そのあと、一人息子の目の前で、ベランダから飛び降りて自殺した。俺はショックのあまり精神を病んで、病院に放り込まれたってわけだ」


胸のあたりがずきりとして、斎藤は奥歯を噛みしめた。


あの日のことは忘れられない。


その朝も、二人はリビングで口論していた。自分のせいで喧嘩をしていることは知っていた。出て行けば母親が自分に対して暴力を振るうことも知っていた。それを庇う父親の体に痣が増えていくことも知っていた。


普段は母親が自室に戻るまで大人しく待っているのだが、その日はなんだか胸騒ぎがして、こっそりと様子を窺っていた。


母親はヒステリーをおこして喚き散らしていた。食卓テーブルには書類と印鑑が置かれていた。幼い眼には何か分からなかったが、後にそれが離婚届であったと聞いた。


父親は子どもを連れて出て行くと、何度も、静かに説いていた。母親はそれを拒絶し、泣いて縋っていた。


我慢の限界に達したのだろう、声を荒げることなどこれまで一度もなかった父親が、怒鳴りつけた。


次の瞬間、母親が食洗器から包丁を引き抜いて、父親の胸に突き刺した。


あまりにもあっけなく、父親は床に倒れ込んだ。母親は包丁を握ったままその場に崩れ落ちて、広がっていく血潮に呆然とした。


耐えられなくなって飛び出した我が子を、母親はどんな気持ちで見ていたのか。夫と子どもの名を呼ぶ声には様々な感情が混ざり合っていたと思う。それらが結局はなんであったのか、今も分からない。


無防備な子どもを刺すこともできたのだが、母親はそうはしなかった。立ち上がり、しっかりとした足取りでベランダへ出ると、柵に足を掛け、やめてくれと訴える声に振り返ることなく、マンションの七階から身を投げた。


気がつくと、病院のベッドの上だった。血だまりの中で倒れていたらしい。父は心臓を貫かれて即死し、母親も全身を強く打ちつけて死んだと教えられた。家に戻ることは叶わなかった。そんな余裕はなかった。


目を閉じると血まみれの父親の姿がよみがえった。おかげですっかり不眠症になってしまった。開け放たれた窓とはためくカーテンが視界に入ると、飛び降りる母親の背中を思い出してパニックになった。窓は常に閉ざされ、部屋の空気は淀んでいった。


自分を引き取ることになった親戚がたまに顔を出す以外に、小さな一人部屋を訪ねる見舞いの客はいなかった。花瓶に花が挿されることはなく、終いには叩き割った記憶がある。


壁越しに聞こえる親子の声を聞きたくなくて布団の中で耳を塞いだ。目を閉じる恐怖に震えた。衰弱していく自分自身の体に泣いた。


悲しくて、辛くて、点滴の針を抜いて逃げ出したのは両手で数え切れないほどだ。スタンドがベッドにくくりつけられることはなかったが、看護師たちをかなり困らせた。


「何食っても気持ち悪くて、胃に入ったものもすぐに吐き出してた。俺、ずっと点滴に頼りきりだったなぁ」


お前と同じだと高安の肩に手を回した。抵抗はなく、うつむいたまま小さく首を振る。握られたペットボトルがぎちりという。


「初めて会った時に、俺泣いてたろ? あのとき、自分のやってたことに虚しくなって気持ちが落ち込んでたってのもあるけど、やっぱり、昔のこと思い出したんだよな」


語りながらも、斎藤の頭の中は驚くほど冷静であった。涙がこみ上げることもなければ、声が震えることもなかった。


「自分と似たような感じになってたから、感情移入したってことか?」

「それはちょっとあるかも」

「だから俺を、連れ出してくれたのか?」

「んー、それはちょっと違う」


追究されたらその先を答えるつもりであったが、高安は「そうか」と素っ気ない。


「七月でも夜になると冷えるもんだな」


斎藤は寄り添うように小さな体を引き寄せた。怒られるかなと数秒待ったがわずかに身じろぐだけでこれといった反応もない。


長い前髪をのれんよろしく分けて顔を覗き込む。目の下を真っ黒にして、先ほどより青い顔が気まずそうに口を押えていた。


「だから、きついならちゃんと言えっての」

「……ごめん」


殊勝な返事。高安は我慢できず、ベンチの後ろで吐いた。


思ったよりも具合が悪い。早く出発しなくては。


斎藤はベルトを引き抜いて、後部座席に座らせた高安と自分の体をぐるりと囲って縛った。ベルトには余裕をもたせていたが、子どもが一人加わるとそうもいかない。ポーチの紐は短すぎて使えなかった。


腹に食い込むベルトが肋骨を圧迫して激痛が走る。それでも、


「いいか、しっかり掴んでおけよ? 後ろに倒れられたんじゃ助けられない」


もはや聞いているのかも分からない高安の手にベルトを握らせて、エンジンを吹かした。


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