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初戦の相手ウレーヌスはゼノの言う通り人の形を取った銀髪の美青年だった。
容姿からも見てとれるように生活はナルシスト。
派手な戦いを見せたいがために初戦を選んだ急進派の魔族。
そんな相手にサシャをぶつけたのにはもちろん理由がある。
「さあ! 両者出揃った! そして結界が展開されます。これからは何人たりとこの闘技場の中へ入ることはできません。──勝敗を決するは相手の死をもって! 一応対戦相手が認めれば降伏による決着もありますが、ここにはそんな臆病者はいないでしょう。──それでは注目の第1試合開始!」
実況の声に闘技場の左右を囲む魔族のボルテージが上がっていく。
かけられる声は「殺せ! 殺せ!」と血生臭い戦いを望む声ばかり。
魔王やゼノとの関わりが深い分これまで魔族らしさを感じていなかったが、こうなってくると魔族らしさが出てくる。
この状況下なら心置きなく戦えそうだ。
「はぁ……初戦なら痺れる戦いができると思っていたが、まさか相手がこんなガキだとはな……」
サシャの対戦相手であるウレーヌスは呆れたように肩を竦める。
まあ事実サシャには戦闘のスキルは皆無だからな。
肩透かしをくらっても仕方がない。
「こんなやつを倒したところで俺の見せ場がないじゃないか」
そう落胆するウレーヌスを尻目に、サシャは俺の指示通りその場で戦闘体勢を取ったまま動かない。
「宣言しよう! 俺はこのガキを一撃で仕留める。我が華麗な魔法をご覧に入れよう!」
「おおっと! いきなりウレーヌス様が瞬殺宣言だあ!」
ウレーヌスの宣言と実況の煽りを受け会場の「殺せ!」コールは最高潮を迎える。
割れんばかりの声は少し耳障りだが、最後には黙らせるから今は我慢しよう。
そして俺はきたる決着の時に向けてエスシュリー(仮)を起動させた。
「闇の中に光なし! 深き混沌の中へ誘え──バルシュレード!」
ウレーヌスは大方の予想通りに上位魔法を展開する。
ゼノによると暗黒属性の魔法で対象物を包み込み、そのまま闇の彼方へ消し去ってしまう技。
捉えられると回避はほぼ不能だと言っていたが、そんなことは俺たちには関係ない。
「光よ……我が身を守り給え──」
サシャも対抗すべく防御魔法を展開する。
リリィのバリードシークとは異なり自分を守るためにしか使えない魔法だが、団体戦でないこの戦いであれば有用な魔法の1つだろう。
そしてウレーヌスの魔法が広範囲からサシャを包み込み、次第に縮小していく。
さあ準備は整った──
「──解除!」
サシャの防御魔法によって縮小のスピードが止まったことを合図に俺はそう呟いた。
そして闘技場の結界が破れる。
「──勝負あったあああ! さすがは第3貴族ウレーヌス様! 非力な冒険者を一撃で葬ったああ!」
会場に設置された魔法で作られた画面には『勝者ウレーヌス』と表示されている。
それに合わせて観客は大きく盛り上がる。
こちらの策に泳がされているとは知らず、ウレーヌスは両手で観客に手を振っていた。
「召喚! ──サシャ、怖くなかったか?」
「…………大丈夫……お兄さん……信じてたから……」
「そうか、ひとまずはお疲れ様。ただこれからがサシャの仕事だから頑張ってくれよ」
「…………」
サシャはコクコクと頷く。
これでこの後死闘を繰り広げたとしてもサシャの魔法で回復させることはできる。
魔王に勝ったとしても他の急進派がすぐに納得するとも思えない。
うてる策は全てうっとかないとな。
「それじゃ控え室に戻るぞ」
そしてサシャと2人控え室に戻る。
俺を待っていたのは仲間からの罵声だった。
「あんた何がしたいの? あっさり1敗しちゃったじゃない!」
「そうだよ三厳! なんであのうるさい魔族たちを黙らせないの!」
「まあまあ2人とも落ち着くでござる。きっと何か策があってのことでござる。そうでござるよな召喚士殿?」
最近何かある度にキレているミリエリ姉妹に思わず溜め息を吐きそうになる。
ホントこいつらみたいな単細胞は羨ましいわ……
「まあな。どう戦うにしろサシャが敗けを喫するのはほぼ確定的だからな。それならば最初に敗けを確定させていた方が残りの計算がしやすい。──それにこれで相手はこちらが弱いと慢心を誘えるし、サシャを回復に専念させることができる」
「なるほど。確定的な1敗を上手く布石にしているわけか」
ゼノに情報を吐かせた甲斐があって相手の出方はある程度理解できている。
その上での問題が降伏を認めないであろう急進派の3人に対して、どのように勝負を決めるかだった。
今回みたいに姿が一切周りから見えなくなるような状態であれば召喚解除を使える。
だからこそそういう攻撃をしてくるであろうウレーヌスにサシャを当てる必要があったんだけどな。
「それじゃ時間もないし次の試合の話だ。次はアクルセイド──お前に任せた」
「了解だ」
そして俺は再び闘技場への通路へと戻る。
「某はどう戦えばいい?」
「そうだな……悪いがアークには策を用意してない」
「えっ?」
「次の相手はお前と同じ剣の使い手なんだ。魔法も使えない様だし小細工は必要ないと判断した」
「そういうことであったか。それならば負けるわけにはいかないな」
「ああ、アーク絶対に勝って戻ってこいよ」
「勿論だ!」
心強い言葉を残してアークは闘技場へと向かっていく。
そしてアナウンスが鳴り響いた──




