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光陰矢のごとし。
ふとこんな言葉を思い出した。
まだ1ヶ月もあると思っていた時間も気が付けば残り1日となっている。
そうは言ってもどれほど矢が早いのかなんて見たこともない。
この場合は光陰何のごとしと言うべきなんだろうか?
RPGでなら光陰魔法のごとしかな?
そんなどうでもいいことを考えていると次々に召集をかけた仲間たちが部屋へとやって来た。
「マスター、いよいよ明日が決戦ですね」
「ああ、そうだな」
「なんであんたはそんな他人事みたいに言ってるのよ!」
「いや、そんなつもりはなかったんだがな……」
そんなに腑抜けた返事をしていたのだろうか?
それとも明日の決戦を前にミリスがナーバスになってるだけ?
「それで三厳殿、此度は何の用であるか?」
「ああ、そうそう。さっき魔王から書状が届いてな。──明日の決戦のルールが本決定した」
書状を取り出してこいつらに見せる。
決定も何も俺はかなり前から知っていたことだが、今の今まで説明なんてしていなかったからな……
そんなこともあってかゼノを通じてわざわざ魔王に書状をしたためて貰った。
それにしてもあいつ顔に似合わず達筆だな……
「るーる? でござるか?」
「戦う上での決まりのようなものだ」
「魔王なのにそういうところはしっかりしてるんだね……」
やっぱりそう思うのは俺だけじゃなかったか。
エリスはアホな子だけどこういうところは普通の感性をしてるんだよな。
うん。
「それでルールについて簡単に説明しておこうと思う。──戦い方はそれぞれ7人ずつ代表を出しての個人戦。先に5ポイント獲得した陣営の勝利だ」
「4勝ではないのだろうか?」
「大将戦──まあ相手は魔王が出てくるんだろうが、その試合だけは3勝分を賭けた戦いになる」
「つまり両陣営がそれぞれ2勝した時点で大将戦までもつれ込むというわけでござるな」
さすがはアークと正成。
いい質問といいまとめだ。
「まさかそんなルールを飲んだとか言わないわよね!?」
「そうだよ! それじゃリリィの負担が大きすぎるじゃん!」
「えっと、2人とも落ち着いてください。──魔王と戦うのはマスターですから」
「は?」
「えっ!?」
なんだよアホ姉妹。
俺が大将じゃそんなに不満なのかよ……
不満だろうな。
むしろ心配だろうな。
リリィの方が明らかに強いんだもんな。
分かってるよそんなこと……
「──そんなに心配ならお前たちが魔王が出てくる前に5勝してしまえばいいだけの話だ」
「それはそうだけど……」
1ヶ月ぶりにこっちに戻ってきたゼノがミリスを宥める。
明日は敵になるというのにこいつもこいつでお人好しなんだよな。
「──それでどういう順番で戦うつもりでござるか?」
「それはまた明日試合前に決めることにしようと思っている」
「それじゃ準備が整わないじゃん」
「相手との読み合いでもあるんだ。悪いがそれくらいは許してくれ」
「そうですね。元から決めてしまっていたらいざという時にどうしようもなくなりますからね……」
本当は既に順番は決まっている。
しかしそれを明日まで明かせない別の理由があった。
「それともう1つ大事なルールがある。勝敗の決し方なんだが、相手を殺すか降伏をして相手に認められた場合にのみ試合が終わることになる」
「何よそれ……」
「相手はこっちを殺す気でいるじゃん……」
「それに対しても召喚士が既に策を練っている。明日使用される闘技場を下見してきたが、そこは結界で外部と遮断された空間だった」
「そしてその空間内から反応が消えたら死亡したものと認められるみたいだ」
「なるほど……」
「それならば一安心でござる」
男性陣はこれだけで俺が何をしようとしているのか納得したようだ。
それに対して表情を変えないし話にも入ってこないサシャだけは分からないが、残りの3人は首を傾げていた。
「いざという時には俺が召喚を解除して結界外に引きずり出す。だから安心して戦ってくれ」
「それならいいけど……」
「それじゃこの話はこれで終了だ。──解散!」
そしてミリエリ姉妹、アーク、リリィの4人が部屋を出ていく。
前もってゼノには残るようにと言っていたが残りの2人はどうしたんだよ……
「サシャどうしたんだ?」
「…………お兄さん……やっぱりなんでもない……」
そしてサシャは何かを言いかけるも逃げるように部屋を出ていった。
いったいなんだったのだろうか?
俺のことが心配だったとかかな?
「それで正成はどうしたんだ?」
「召喚士殿が何を考えているのかを聞いておきたいでござる」
「何についての話だよ? やっぱり巨乳がいいか貧乳がいいかってやつか?」
「それはどうでもいいでござる。召喚士殿が好きなのは巨乳でござる」
なんでそれを知っている!?
「──そんなことよりも召喚士殿とゼノ殿は何を考えているのかを教えてほしいでござる」
「俺はただ勝つために戦うだけだ」
「拙者たちと……でござるか?」
「ござる何を言っているんだ?」
「ああゼノ、正成はお前の素性について気付いてるから」
「なんだ……それなら先に言えよ……」
誤魔化そうとしたゼノ。
追求をした正成。
長い間ともに過ごしてきた仲間と戦うのだから2人ともの言動が間違っているとはいいたくない。
「むしろ間違った行動を取っているのは俺だからな……」
あっ、声に出てた……
すごく恥ずかしい。
「自覚はあったのか」
「ああ、それなりにはな。──それで正成」
「なんでござるか?」
「詳しい説明は明日みんなの前でする。今はそれでおさめてくれないか?」
「分かったでござる……」
渋々ながらも正成は部屋を出ていく。
そして俺とゼノだけが残された。




