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RPG~召喚から始まる魔王討伐~  作者: 柊雪葵
第3章 魔王城への道
59/89

 あれから既に10ヶ月の月日が流れた。



 魔王討伐の期限までは後28日。

 時間は刻一刻となくなっているが、それでも俺たちに焦りはない。



 現在地はとある城内部。

 魔王城までの距離は残り1バルユーレあまり。



 順調なまでに目的地へ到着できたと言っても過言ではない。

 後は決戦の日まで悠々自適な生活を送っていればいいんだからな。



三厳(みつよし)! もう食糧が底をつきそうなんだけど!?」



「えっ!? マジで!?」



「マジだよ。マジ。マジって何だか分からないけど」



「エリス、分からないなら使うなよ……」



「三厳が意味が分からない言葉を使うのが悪いんじゃん」



「俺のせいかよ……」



 思わず溜め息を漏らす。

 悠々自適の生活とは何だったのか……



 そんなことを少し思うが、これくらいならすぐに解決できるから瑣末なことだろう。



「──リリィ! リリィいるか?」



「はい、マスター。どうなさいましたか?」



「食糧不足らしい。調達してきてくれないか?」



「分かりました。ひとまずは3日分くらいでいいですよね」



「腐らせてもしょうがないからな……手間はかかるがリリィがそれでいいなら」



「問題ありません。それでは行ってきます」



「もう見慣れてた光景だけど、ホント三厳って自分で行動しようとしないよね」



「これは適材適所だろ……」



 俺がワーティの1つや2つ使えたんなら買い物くらい行ってくるわ。

 使えないから仕方ないだろ。



「ならせめて料理くらいは手伝って欲しいものだよ」



「食材を無駄にしてもいいなら手伝うぞ?」



「はぁ……もういいよ」



 エリスは呆れ顔で下がっていく。



 やっぱり10ヶ月経った今でも俺の扱いは変わっていなかった。

 悲しいな……



「三厳殿」



「はいはい、三厳です」



 エリスと入れ替わりでやって来たのはアークだった。



「このような書文を預かったのだが、いかがなさろうか?」



 書文を受け取り内容に目を通す。



 何だか長ったらしく文字が書かれているが、要約するとこうだ。



 俺の城を返せ。



 だが断る!



「1ヶ月くらい我慢しろって返信しといてくれ」



「相変わらず鬼畜だな……あい分かった」



 それにしても丁寧に書文を送ってくるあたり、やっぱり魔族というわりにはすごくまともな奴らなんだよな……



 アークにはよく鬼畜だと言われるが、正直俺のやってることの方が悪役みたいだし強ち間違いではないんだろう。



「召喚士!」



「次はゼノか……どうした?」



「もう何もすることがないなら俺は帰りたいんだが構わないか?」



「帰らずに寝返らない?」



「そんなことするわけねぇだろ……」



「やっぱダメ?」



「当たり前だ」



 こちらの戦力に自信がないわけではないが、お約束みたいな感じにゼノを引き留めてみる。

 もちろん断られた。



 少しくらい情がわいてくれてもいいのにな……



「仕方ないな。2つほど誓約をつけるがそれでもいいなら帰ってもいいぞ」



「はぁ……また無茶ぶりかよ」



「無茶ぶりするつもりはねぇよ……ただこちらの情報を公開しないことと、決戦前日には送迎のためにこっちに戻ってくることだけだ」



「1つ目はいいとして何故送迎なんてしなきゃならん」



「だって魔王城に着くまでに消耗とかしたくないじゃん?」



「そんな奇襲みたいな卑怯な真似はしねぇよ……お前じゃあるまいし」



 魔族なんだったら卑怯な真似くらいしろよ!

 されたら困るけど!



 てかそれじゃ俺が卑怯な真似を──

 してたわ。

 しまくってたわ。



「その言葉信用するから帰っていいぞ。後はこっちも決戦に向けて調整するだけだからな」



「ああ。仕方ないから前日には迎えにきてやるよ」



「このツンデレさんめっ!」



「なんか分かんねぇが馬鹿にされてることだけは分かるわ……当日は覚悟しておけよ」



「俺とゼノが戦うことはないから覚悟なんてしねぇよ」



「ちっ」



 舌打ちだけ残してゼノは移動呪文を唱えた。



 しばらくゼノとは会えなくなるのか……

 寂しくなるな。



「──野放しにして良かったんでござるか?」



「あ? 別に構わないだろ。てかお前気付いていたんだな?」



「隠密ゆえ、情報収集はお手のものでござる」



「そうか。──口封じに殺しておかないとな」



「物騒なことを言わないでほしいでござる……」



「冗談だ。──ああ、そうだ。後でまた特訓手伝ってくれるか?」



「もちろんでござる」



 出会った当初は気配すら満足に消せていなかった正成(まさなり)も成長したもんだよな。

 今じゃ正真正銘の忍者になったし当然なんだけど、なんか感慨深いものがあるわ。



「それで決戦の勝算はいかようでござるか?」



「それなりにあるんじゃないかな。問題は俺が魔王を倒せるかどうかだろ」



 エスシュリー(仮)を操作して仲間のステータスを確認する。



 もちろんパーティー最強は賢者のリリィ。

 レベルは62,000を超え、相性さえ悪くなければ魔王以外には勝てるところまで強くなっている。



 逆に最弱は聖者のサシャ。

 彼女は回復専門だから元から戦力としては計算していないが、それでも45,000を超えているから防御の面ではそれなりに期待ができるだろう。



 後はみんな揃って5万レベルは超えている。



 職業の変化があったのは正成だけだが、その他のメンバーは元々上級職だったからこれも問題ではない。



 順調すぎてすることがないもないのは不満っちゃ不満だけどな。



 決戦までは後28日。

 しばらくはすることがないし、あの長いようで短かった10ヶ月の思い出でも振り返ってみるか……



 主にライドラの背に乗って移動していただけだったが、それなりにいろいろなことがあったからな──

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