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「陛下! 大変です。城下町に魔物の群れが押し寄せています! その数およそ千!」
「なんと! そんな数の魔物をどうしろというのだ……」
「ふむ、儂でも精々10体が限度じゃ」
思案している暇もない緊迫した状況にも関わらず、統治者たちは思案して狼狽える。
やっぱり国王はクソだった。
まあ、そんなどうでも良いこと考えてる場合じゃないな。
「賢者ちゃん、行くよ」
俺は抱き付いている女賢者に声をかけて引き離すと、魔物の群れが来ているという門へ向かって走った。
途中までは彼女もついてきていたが、体力がなく途中で足が止まってしまったから置いてきた。
「召喚!」
そして置いてきた賢者を呼び出す。
既に敵は城門を突破しようとしている。
残された時間は少ない。
「この数、どうにかできそう?」
「はい、はぁはぁ……なんとか……やってみます。……はぁはぁギルフレイン!」
まだ息が整っていないのか、凄く頼りない感じで呪文が発動される。
しかし、その威力は非常に高く、一瞬の内に50体程のモンスターが灰になった。
「まだまだ……はぁはぁギルフレイン!」
そして続く第二撃。
また同様にモンスターが消滅していく。
しかしこのままでは埒があかない程に敵の数が多すぎる。
「仕方がないな、召喚!」
モンスターが向かってくる城門の前に魔王を召喚する。
「おい、魔王! お前の部下だろ。どうにかしろ!」
「おい、クソガキ! 何故私がお前に手を貸さねばならんのだ!」
魔王は機嫌が悪いらしい。
それでも魔王を前にモンスターの進行は止まっている。
「賢者ちゃん、しばらく時間を稼ぐからその内に次の攻撃の準備できる?」
彼女にだけ聞こえる小さな声で指示を出す。
すると小さく頷いて、そのままボソボソと呪文を詠唱し始めた。
「おい、魔王! 手を貸さないなら三日間くらい召喚と解除を繰り返すぞ!」
「おい、クソガキ! やっぱりこの国もろとも滅ぼしてくれるわ!」
ああ、やっぱり駄目だった。
地味に辛い嫌がらせだけど、そのくらいで折れるようなら魔王なんて務まらないよね。
「解除!」
本当に攻撃されても困るからとりあえず魔王を消しておく。
そうすると今まで足止め出来ていたモンスターが再び動き出すわけだが、
「──等しく滅びを与えんことを! デスラーム!」
もう賢者ちゃんは上位呪文の詠唱を終えている。
これで形成逆転だった。
その呪文によって放たれた光でモンスターの大半が消滅した。
残ったモンスターも恐れをなして散々に逃げ帰っていく。
「無茶させてごめんな。お疲れ様」
俺は魔力の使いすぎて倒れそうになった賢者ちゃんを背負い城に戻った。
その後賢者ちゃんを部屋で休ませた後、俺たちは地下牢に集まっていた。
「つまりはこの牢屋の中では魔力が使えず、物理的にも壊すことができないってわけか」
「その通りだ。しかし、こんなことを聞いてどうするつもりなのだ?」
何をするのか?
そんなの簡単なことである。
「ここにある一番大きな牢屋はここか。すまないが、ここに入っている囚人を全て別の牢に移してくれ!」
あまり衛生環境のいいとは言えない集団監禁を行う牢屋を指差して指示を出す。
10人の移動魔法が使える衛兵が他の空いている牢屋に囚人たちを移し変えた。
余談だが、そのせいか他の牢は人口密度が凄いことになっている。
「どうするのか? もちろん、こうする。召喚!」
「クソガキ、またお前か……もういい加減にしろ」
魔王を牢屋の中に入れる。
その光景はなんともおかしなものである。
「そんな口聞いていいのか? 飯抜きにするぞ?」
「これは堅牢石で作られた牢屋!? おい、クソガキ! それは卑怯じゃないか? この鬼! 悪魔! 大悪党!」
状況に気付いた魔王が俺に罵詈雑言を投げつける。
まあ、その全てがお前が言うなと言いたくなる内容過ぎて逆に笑いそうになるが……
「こうでもしなきゃ口を開く度に、国を滅ぼす、国を滅ぼすってうるさくて会話にもならないからな」
「……」
「まず最初の質問だ! あのモンスターの群れにこの国を襲わせたのはお前の仕業か?」
「否! この国を滅ぼすときは私自ら滅ぼしてくれる。あんな有象無象の雑魚は使わん!」
「なら、魔物を統べる王と名乗った魔王様の求心力はほぼ皆無に近いわけだ。有象無象の雑魚ですら統治できないなんてダサいなお前」
魔王は顔を真っ赤にする。
さすがにプライドが傷つけられただろう。
だが、それでいい。
「今は放任しているだけだ! 私が指揮を取れば従わぬものはいない!」
「本当かなー?」
「おい、クソガキ! いい加減にしないと──」
「いい加減にしないと? 何? 何もできない魔王さん」
そして魔王が泣き出した。
少しやり過ぎたかもしれない。
「まあ、そんな魔王にチャンスを与えよう。俺は魔王討伐を楽しむためにこの世界に来た。しかし、その魔王がこんな腑抜けでは興醒めも甚だしい。そこでどうだ、まずは今日この街を攻めてきたモンスターの指揮者を従わせてみないか?」
「ど、どういうことだ?」
「要するに俺がお前のカリスマ性を試す。俺を楽しませてくれるようならこの牢から出してやろう。駄目ならここで死ね」
「わかった……仕方がないから説得に行ってやる。だから早くここから出せ」
「それはできない。俺が魔物の巣窟についたら呼んでやるよ。それからがお前の仕事だ。ああ、分かってると想うが裏切ろうとした瞬間にここに強制的に戻って貰うがな」
我ながらどちらが悪か分からないほどである。
いや、この世界は楽しいわ。
とりあえず賢者ちゃんが復活するまで魔王は放置しておくとしますか。