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「──ところで召喚士、あれはどんなイカサマを使ったんだ?」
「あれって?」
「あの回胴だよ。あんなもん4回で揃うわけがないだろ」
「確率的には超絶低いけど、揃わない訳ではないからな……たまたま運が良かっただけじゃないか?」
「嘘だな」
「嘘ですね」
「嘘だよ」
我ながら自白が早いな。
てかこいつらなんでこういう時だけ息が合うんだろうな。
「やっぱりイカサマしたんでしょうか?」
「どうだろうな。俺がやったことはイカサマと言えばイカサマになるし、攻略法と言えばそうなるからな」
「どういうことだよ」
「簡単に言うと、あのスロットで七が揃わないと思われているのには2つの細工があるんだ。1つ目は高速回転するリール。あの早さでは普通は七を捉えて目押しすることはほぼ不可能なまでに難しい。2つ目はリールが止まるタイミングがそれぞれのリールごとに少しずつ違っている。──まあ、この2つさえ攻略することができれば実は簡単に七が揃っちゃう仕組みなんだよ」
「えっと、ほぼ不可能なのにどうしてマスターは7を止められたのですか?」
「動体視力とリズム感には自信があってな。昔やってた仕事もそういうのが必要な職だったし」
「そういうことだったならやる前に説明くらいしとけよ……」
「だってそんなことしてたら店から目をつけられるだろ? 巨人賭博のところで年齢制限がどうこうなんて嘘をついたのもそういうマークをつけられないようにしたかったからだし」
「あれ嘘だったのかよ……」
「敵を欺くにはまず味方から。俺も俺なりに頭使ってやってんだから許してくれや」
「まあ、結果として魔石が手に入りましたからね」
「そういうこと。それじゃ早速鍛冶屋に行くぞ」
「ああ、それなら俺はあいつらと合流しとくわ」
「は?」
「なんだよ……」
「ゼノの武器を作るんだからお前が来なくてどうするんだよ」
ゼノは俺の言葉を理解できていないのか、頭にはクエスチョンマークを浮かべている。
もちろん実際にはそんなもの浮かんでいないんだがな。
「ちょっと待て。何故俺の武器を作る必要があるんだ」
「そんなのレーグスとかいう大蛇と戦ってもらうために決まってるだろ」
「俺が戦うなんて一言も聞いてないぞ!」
「ああ、ゼノに戦えなんて一言も言ってなかったからな」
「開き直るなよ……」
開き直ったっていいじゃない。
人間ですもの。
「まあ、ライドラを正式に仲間に加えるなら倒さないといけないモンスターだからな。氷属性の魔法を使えるメンバーがいない以上、氷属性の武器を作って一番白兵戦の上手いやつに使わせるしかないだろ」
「剣の腕だけならお前がやっても問題ないだろ……」
「いや、俺はダメだよ。死にたくないし」
「おい!」
ゼノがキレる。
それと同時にリリィもどこか呆れた表情をしていた。
思ってることを簡潔に伝えるのってやっぱり難しいな。
「ゼノが近接戦で戦った場合ならもしもの時には俺が召喚を解除すればそれで離脱ができるだろ」
「そうだが、お前はどこまで他力本願なんだよ」
「仕方ないだろ! 召喚士なんだから! 召喚が生命線の召喚士から他力本願を除いたら何が残るっていうんだ!」
「それは確かに……」
「そうですね」
自分で言っててなんだが、こうも素直に同意されてしまうと少し胸に刺さる。
いっそのこと転職しようかな……
「まあ分かったよ。戦えばいいんだろ」
「そうそう倒せばいいんだ」
「んじゃ今度こそ武器を作りにいくか──」
それから30分後。
鍛冶屋で注文を済ませた俺らはエリスたちと合流した。
「正成、お前忍者みたいだな」
「拙者は正真正銘の忍者でござる!」
「ござるは盗賊だろ……」
「忍者でござる。──それと正成でござる」
こんな風に俺とゼノにネタ扱いをされているが、正成の戦闘技術は相当高い。
気配を消す技術こそはまだまだ未熟なところがあるが、それでも下級のモンスター相手ならば一瞬でバックを取ることができている。
背後に回って一撃で仕留める。
卑怯なやり方にも見えるが、忍者としてはそれが正当。
召喚なしでこれだけやれるのだからこれは掘り出し物だ。
「エリスも信じられないほどの急成長をしてますね」
「召喚士のおかげかな。自分の実力以上の力が発揮できるから迷いはなくなるよね」
「その調子でいけばミリスに追い付く日も近いです。──私たちの6年間は何だったんだろうと落ち込みたくなるくらいです」
リリィと話しているエリスも前衛らしい戦いができるようになっていた。
以前ゼノと戦った時にミリスがみせた魔法の防御陣も張れるようになっている。
攻撃はミリスほどに高速の突きを繰り出せる訳ではないが、一撃の正確性がとても高い。
モンスターの急所に吸い込まれるように槍の先端が入っていく。
どうやら正成との息もピッタリ合ってきたし、この2人を結果として組ませたことは正解だったようだ。
「それでライドラは?」
「──ここにいるぞ!」
首を落とされてしまった──
なんてことはないが勢いよく空から降りてくるものだから、風に身体を煽られた。
「それで準備は整ったのか?」
「明日には整うよ。武器ができあがるまでにどうしても時間がかかるんだ。それくらいは勘弁してくれ」
「思っていたより早いから文句のつけようもないな……」
こいつ文句つける気だったのかよ……
「さて今日やるべき事は終わったわけだが、これからどうするか」
「私はもう少し戦っていたかな」
「同じくでござる」
「なら俺もこいつらのお守りをしとくわ」
「私も連携を取りたいので少し参加してきますね」
「俺はお腹が空いた。少し捕食してきたい」
何というかみんなやる気だった。
ライドラだけは何か違う気もするが、好戦的という意味では同じことだろう。
俺戦いたくないし、何か言い訳を考えないとな……
「正成、お前はちょっと来い」
「召喚士殿、いかようでござるか」
「いや、このメンバーの中でお前だけ召喚できないのもどうかと思ってな……」
「契約して貰えるでござるか!?」
何故そこで目を輝かせる。
そう思いたくなるほどに、ゼノの言葉を借りるとすれば、絶対服従の奴隷契約をこいつは心待ちにしていたようだ。
「マスター、6枠しかスロットがなかったのでは?」
「リリィ殿は何を言っているでござるか? リリィ殿、ゼノ殿、エリス殿、ライドラ殿、そして拙者で5枠でござる」
魔王と犬がいて7枠目なんだけどな。
そしてリリィには6枠しか解放されていないと言っていたから当然の疑問。
ホント俺はみんなにどれだけ隠し事をしてんだろ。
「ゼノとエリスが頑張ってくれたおかげで9枠使えるようになっている。これから契約する正成と、俺の癒し役の御犬様を合わせてもまだ3枠余裕ができてるわけだ」
「9枠なら空きは──あっ、そうですね」
9枠なら空きは2枠。
しかしそこに魔王は含まれていない。
そんな俺の意図をリリィは汲み取ってくれたようだ。
「じゃ契約!」
「早速戦ってくるでござる!」
召喚の効果もつけない内に正成は意気揚々と駆け出していった。
それを解散の合図にエリスとリリィは正成の後を追い、ライドラは空腹を満たすため空へと飛び上がっていく。
残ったのは俺とゼノだけだった。
「ゼノは行かないのか?」
「ああ、その前にはっきりとさせておきたい話があるからな」




