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「まずは1つ目。この山の火口部に棲むレーグスを討伐してもらおう」
「そのレーグスって?」
「手も足もなく、細長い身体をグネグネさせて動く気持ち悪いモンスターだ。体長は4ユーレほどと大型で、様々な生物を丸飲みする」
「つまりそいつにお前は負けたわけか」
「負けてはいない! 戦略的撤退だ!」
それを世間一般では負けと言うんだが……
まあいい、敵はあっちの世界でいう蛇みたいなものだろう。
ただ8メートルほどの普通の蛇がドラゴンに勝てるとは思えない。
もう少し情報が欲しいな。
「分かった。戦略的撤退は必要だよな。それで丸飲み以外にはどういう攻撃をしてくるんだ? やっぱり長い身体で締め付けてきたり、鋭い牙で噛みついてきたりするのか?」
「どうしてそれが分かる!?」
「身体は小さいが同じようなのを見たことあるからな。それと元々火口部を塒にしていたのはお前だろ? それをレーグスに奪われた」
「どうしてそこまで……いや違う、俺は奪われていない!」
こいつあくまでも負けを認めたくないみたいだな。
「ちなみにだが、レーグスが現れたのはいつ頃からなんだ?」
「愚かなヒト種があの街との境界に結界を張ってからだな。それまで奴は火口部に上がってくることはなかった。しかし結界の影響を受けてこの山が雪に包まれるようになると奴は上へ上へと上がってきたんだ!」
「なるほど、やっぱりか。他のモンスターはどうなった?」
「大抵はあいつに呑まれたか、寒さに耐えきれず死んでいった」
俺たちがここに来るまでモンスターに出会わなかった原因はこれだった。
そして生態系を壊した犯人はあのクソロリコンチキンだ。
「──ただいま戻りました」
「おかえり。ところでリリィ、氷系の魔法って使えるか?」
「氷ですか? 私は炎系が専門ですので、反する氷系は使えません。役に立てずすみません」
「いや、謝らなくていい」
「おいヒト、氷系の魔法がどうかしたのか?」
「ああ、レーグスの弱点はおそらく寒さだ。だから氷系の魔法が使えるなら簡単に退治できるんじゃないかと思ってな」
しかし頼りのリリィが氷系の魔法が使えないなら他の方法を考えるしかない。
さすがにエリスと正成は使えるわけないし、可能性があるとすれば後はゼノだけか。
「ちょっと確認するから待っててくれ。コンタクト──ゼノ」
「どうした、召喚士?」
「いくつか質問するから答えてくれ。1つ目、ゼノは氷系の魔法を使えるか?」
「俺は基本的に魔剣での戦闘しかしない。氷系の魔剣があるなら話は別だがな」
「じゃあ2つ目、レーグスって知ってるか?」
「知らんな」
「そうか。分かった。夕方までにはそっちに戻るから詳しい話はその時にする」
「はいはい。また面倒なことに巻き込まれたことだけは分かった……」
ゼノとのコンタクトが切れた。
確かに面倒なことに巻き込まれている。
ただそれはあくまでレーグスが弱点をつかない限り勝てない相手だった場合だ。
「黒龍さんや、火口部まで飛べるか?」
「ああ、身体はもうなんともないが」
「なら俺とリリィを乗せていってくれ」
「今から戦うつもりか?」
「まあな。今回は様子見になるかもしれないがな」
「分かった。しっかりと送り届けてやろう」
「それともう1つ提案がある。今は俺たちも完全に戦闘の用意ができているわけではない。少しでも危険があると判断すれば撤退をするが、その時にこの山を離れて俺たちについてきて欲しい」
「それは構わないが、何のためにかだけ聞かせてもらおう」
「黒龍だけ置いてけぼりって訳にはいかないだろ? それに魔剣の素材を探すにも俺たちだけじゃ移動範囲が限られるからな」
「仕方がない。ここは共闘をするということで受け入れよう」
1つ目の問題を解決するための共闘同盟は締結された。
後はレーグスの強さがどれくらいのものか推し量るだけか。
「さあ、それじゃ火口部まで行くか……って言いたいところだが念のために最低限の準備をさせてくれ」
「何をするんですか?」
「簡易的な氷系の攻撃を用意するんだよ」
そういうと俺はエスシュリー(仮)を操作し、数少ないアイテムの中からとあるものを取り出す。
それは以前元の世界へ戻った際に持ち込んだ食糧の一部。
いざという時のためにと用意していた水筒だった。
「その銀色のやつはなんだ?」
「水筒といって水を中に入れて持ち歩くための道具だ」
「そんなものをどうするつもりなのですか?」
「まあ、簡単なことだ。こうやってまずは中身を飲んで喉を癒す。それである程度中身が減ったらそこに雪を入れる。これでこの水筒の中ではとても冷たい液体が出来上がった」
「それを容器ごとレーグスにぶつけるわけか」
「そういうことだ。一度しか使えないが、寒さに耐性があるかどうかの判断はできる」
問題があるとしたら火口部の熱で中身がぬるくなること。
それは上空から使うなり、なるべく火口部から外に誘き出すなりすればどうにかできるだろう。
「よし、準備完了だ。リリィには前線で戦ってもらうことになるかもしれないが大丈夫か?」
「はい! マスターのためなら問題ありません!」
そして俺たちは念願の黒龍の背中へ乗り込んだ。




