3
目覚めた俺は身なりを整え、訓練場へ来ていた。
「召喚士よ、よくぞ来た」
玉座に座った国王が俺を出迎える。
てかあの玉座移動式だったのか。
なんか現実的ではあるけど、俺の中の世界観が崩れるからやめてほしい。
「ほっほっほっ。今日はお主に召喚獣を呼んで貰うぞ。ここならば充分に広いし、暴走されても大丈夫なだけの兵力も整っておる。安心して呼び出すが良い」
確かに大きな召喚獣を呼び出したとしても問題のない広さがある。
まあ、問題はそんなことよりも呼び出した召喚獣が暴走する可能性があることだろう。
呼び出されたなら大人しく俺に従えよ。
そんなことを思いながらブレスレットに手を当てて、召喚に関する情報を引き出す。
それは意外と簡単で、左手を振りかざして『召喚』と言えば出てきて、『解除』と言えば引っ込むらしい。
今の俺に与えられた召喚できるスロットは3つ。
なるべく強いやつが出てきてくれと思いながら左手を振りかざした。
「召喚!」
地面に魔方陣が描かれて、そこから召喚獣が姿を現す。
現れたのは5メートルほどの大きさはある人の形をした何かだった。見た感じは結構強そうである。
「お前、名前はなんだ?」
言葉が通じるかは分からないが、とりあえず名前を聞いてみる。
その後ろにちらりと見えた爺さんや国王たちの顔が青ざめているように見えるのは気のせいだろう。
「人に名を尋ねる時はまず自分の名を名乗るべきではないか? 小さきものよ」
そいつは至極全うな正論を述べる。
言葉が通じるだけいいが、なんかやりにくい。
「俺は召喚士。俺、お前、呼び出した。ドウユーアンダースタン?」
何故かは分からないが、気分的にジェスチャーを交えて自己紹介をしてみる。
「……そうか、お前がこの私をこんなところに呼び出した犯人か!」
何か怒っているようだが、俺はそんなこと気にしない。
「それでお前の名前は?」
「さっきからお前、お前と身の程を知らぬガキだな。私は魔王。この世界の魔族を統べるものだ」
えっと、今なんて言った?
魔王?
魔王ってあの、この世界で討伐する魔王か。
なんかとんでもないもの召喚してしまったんじゃね?
「まあ、良い。この国もろとも滅ぼしてくれるわ」
魔王は腕を付きだし呪文を唱えようとする。
こんなところで死ぬのも御免だったので、
「解除!」
と叫んでお引き取り願った。
いや、俺の機転さすがだな。
「……死ぬかと思ったわ。魔王を召喚するなんて馬鹿なことができるとはの」
爺さんはもう後先ない寿命が尽きるのではないと思う青ざめた顔でそう言った。
なるべく強いやつを呼びたいとは思ったが、魔王を呼びたいなんて思っていない。
つまり俺悪くない。
「気を取り直して次の召喚するか。召喚!」
「ちょっと待たんか」と爺さんが叫んでいた様な気がするが気にせずに2回目の召喚を行う。
昨日までいた現実とは違ってなんか楽しい。
そして次に光の中から現れたのは犬だった。
「ワン!」
健気に吠えている。
ちょっと可愛い。
でもこれは戦力にならないからいいや。
「解除!」
これで召喚のスロットが2つ埋まってしまった。
そこにはしっかり『魔王』、『犬』と書かれている。
残ったチャンスはあと一度。
それならどういうものを召喚したいだろうか……
それなりに戦力になりそうな召喚獣。
欲を言うならば、可愛くて強い女の子がいいななんて思いつつ、
「召喚!」
と後先考えず最後のスロットを使った。
まあ、こうしなければ冒険に出ることすら出来ないから仕方ない。
「あれ? 王様や老師……懐かしい顔が見えます。あっ、これが走馬灯ってやつですか……私、死んだんですね」
現れたのは杖を持ちローブを羽織っている魔法使いのような女の子だった。
耳の尖り方から推測するとおそらくエルフと呼ばれる生き物だろう。
「おおっ、お主はエルフの女賢者ではないか! 無事に冒険出来ていたのじゃな!」
するとその少女を見て国王が声をあげる。
この喜びよう……あいつはロリコンに違いない。
「あれ、走馬灯……じゃない?」
意味の分からないことを言っている少女。
まったく、意味の分からないことを言うやつを召喚したものだと思う。
まあ、可愛いから許すけどな。
「賢者よ、動転しているようだが、何があったのじゃ?」
「え、えっと……一緒に冒険をしていた女パラディンとはぐれてしまい、一人で近くの街まで戻ろうとしていたところを魔物の群れに襲われて、あっ、私ここで死ぬんだと思って目を閉じたんですけど、そうしたら何故かここにいて? あれ、やっぱり私死んでますよね?」
過去の出来事を思いだす少女であったが、余計混乱してしまっている。
つまり要約すると仲間とはぐれて死にそうになったところを俺がここに召喚したってことだな。
うん、我ながらさすがである。
「ふむ、賢者よ。お主は死んではおらん。偶然ではあるが、絶妙なタイミングでそこにおる暴走召喚士が召喚獣として召喚したようじゃ」
「そ、そうなんですか?」
そう言って俺の方を見た少女と目が合う。
うん、可愛い。
出るところはしっかり出てて、引っ込むところはきっちり引っ込んでいる。
成長したら素晴らしい美人になることだろう。
そんな馬鹿みたいなことを考えていたら、突然立ち上がった少女に抱きつかれた。
すごく柔らかい感触がする。
「あ、あの、助けていただき、あ、ありがとうございました」
泣きながら感謝をしてくれる女の子が今俺の腕の中にいる。
すごく役得な展開である。
「不束者ではありますが、マスターと共に冒険をさせてください!」
その上仲間にもなってくれるらしい。
後衛と後衛でバランスの悪いパーティーではあるが、この展開は最高だと思う。
「ああ、こちらこそよろしく頼む」
これが運命の出逢いでないと言うのならば何をそれというんだと言いたくなるような甘い展開。
しかしそんな都合のいい展開は往々にして長続きしないものであった──