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「然る筋からの情報提供によると、この場所で冒険者としての登録ができるとのことでござる」
始まりの街の中心地。
王宮の次に高いであろう建物。
その受付前で正成にそう語りかける。
「こんなに目立つ建物なのにこれまで何なのか気にしたこともなかったでござる……」
「まあ、とりあえず登録を済ませてくるでござる」
「御意!」
二人ともござるござると言うものだからゲシュタルト崩壊とかそんな感じの何かが起こっていたような気がする。
しかし、我ながらよくこんな馬鹿らしい事をしていたな。
俺が受けたのと同じ職業適性の検査を受けるのならばこれから小一時間程はフリーになるわけだが、さてどうするか……
そう頭をひねったところで今やれることは限られていた。
1、この場で仲間探しを行う。
2、この場で無策に時間をつぶす。
3、正成をほったらかしにしてどこかへ行く。
ノリだけで選ぶなら間違いなく3だろう。
鬼畜とでも何とでも呼べばいい。
「さて、次はどこで仲間を探そうか……」
「──おっ、おにーさん仲間を探しているのかな?」
行動を起こそうと椅子から腰を浮かせたところで声をかけられた。
「ん、あれ? おにーさん何を驚いているの?」
突然の状況に言葉もでない俺に対して、声の主の女は矢継ぎ早に言葉をかけてくる。
何に驚いているのかといえば、まず始めに思っていることを口に出していた自分自身についてだが、まあ単純にそれだけではない。
それだけではない。
そういうよりかはそれ以上に驚くべき事があった。
そう言い換えるべきだろう。
話しかけてきている女の格好があまりにも奇抜すぎる。
冒険者なのに見た目は一部のマニアにしか受け入れられない頭のいかれた地下アイドルのよう。
俺の全神経が、直ちにこの場を離れるべきだと危険信号を送っている。
そしてそれを受信した。
「ちょ、ちょっと! おにーさん、おにーさんに話しかけてるんだから無視しないでよ!」
召喚士は逃げ出した。
しかし回り込まれてしまった。
定番のRPG風にテロップが出るならばこう。
要するに逃走に失敗してしまったわけで……
「おにーさん仲間を探しているんでしょ? このルーズフェルトちゃんなんてどう! ねぇ、どう?」
自分のこと名前プラスちゃん付けって……
そう思わずツッコミたくなるがそれは我慢する。
この手の輩は無視し続けないと後々面倒なことになるからな。
間に合ってます。
そう仕草だけで伝え、再び逃走を試みる。
しかしまたもや回り込まれてしまった……
「もう、そんな照れないでいいから! 今なら特別にルーズフェルトちゃんが毎晩夜伽をしてあげるよ?」
ついには身体を売り出す始末。
こいつどこまで必死なんだよ……
「ねぇ、お願い! 何でも言うこと聞くからルーズフェルトちゃんのこと見捨てないで……」
仕舞いには泣き出す。
見捨てるも何も拾ってすらいないのだが、それは別として周囲の視線が痛い。
何でも言うこと聞くというなら直ちに俺を解放して欲しいところだ。
まあ、そんな俺の気持ちなどいざ知らず、ルーズフェルトと名乗る女は泣き止むことはない。
チラチラこちらの様子を見てくる表情で嘘泣きしていることは分かっているがな。
「はあ……君レベルは?」
「ルーズフェルトちゃんはね結構強いよ! なんと48レベル! 職業もレアなやつだし仲間にしない理由はないでしょ!」
こちらが話しかけると途端に目を輝かせてそう主張する。
こんなやつよりも弱いのかと思うと少し腹立たしいところもあるが、今はそんなことを素直に言っている場合でもない。
「申し訳ないがうちのパーティの平均は600レベ程なんだ。あまりにも力量が違いすぎるから他を当たってくれ」
嘘はついていない。
その内訳のほとんどがリリィのレベルによるものだが、断じて嘘はついていない。
「えっ、嘘……そんな……」
ルーズ某は膝から地面に崩れ落ちる。
いちいちリアクションが大袈裟というか、何と言うか……
「──召喚士殿、無事に冒険者登録が完了したでござる……」
タイミングよく、すっかり意気消沈してしまった正成が戻ってくる。
何をそこまで落ち込んでいるのかは知らないが、この場を離れるにはちょうどいい口実にできた。
「じゃあ仲間も戻ってきたし俺はもう行くわ。ほらさっさと行くぞ正成!」
「……御意!」
正成はルーズ某の方を見て少し困惑した表情を見せながら俺の後を着いてくる。
こうして無事に正成は冒険者になり、物語によっては強制フラグとなりかねない変な冒険者を振り払うことに成功した。
「召喚士殿、先程の女性はどなたでござるか?」
「よくは分からんが仲間を募集しているらしい怪しい女だ」
「仲間を募集しているのであれば相互とも思惑は一致していたのではござらんか?」
やはり想定通りの事を正成は口走った。
あの場でこいつに発言をさせていたらあの地獄のような状況が長引いていただろう。
「仲間といっても誰でもいいわけじゃないからな。俺たちは1年以内に魔王討伐を成し遂げなければいけないんだ。数が多いに越したことはないが、有象無象を集めたところでどうにかなるものでもない」
「なるほど。奥が深いでござるな……」
「それでどうしてお前は落ち込んでいたんだ?」
納得したところで話を蒸し返されないように反らす。
すると正成の顔から笑みが消えた。
「納得いかないでござる……」
その言葉に心でも読まれたかとハッとする。
なるだけ焦りを表情に出さないようにして話の続きを煽った。
「──拙者は忍でござる!」
突然正成がそう叫ぶ。
脈絡がなさすぎて何を言いたいのかよく分からないが、こんなに目立つ忍はいない。
それだけははっきり分かる。
「……それなのに……それなのに適職が盗賊とは納得がいかないでござる!」
怒りに身体をわなわなと震わせる正成の肩に手を置く。
その気持ちも分からないわけではない。
「これはあくまで適性検査だからな。そもそも忍という職業の概念がなかっただけじゃないのか?」
「そうでござろうか?」
「少なくとも俺はこの世界で忍の冒険者なんて聞いたこともない」
そもそもどんな職業があるかすらよく知らないんだけどな。
「そうでござるか……」
「まあ、職業なんて気にしなくても、正成が自分を忍だと思っているなら忍として生きればいいんじゃないか?」
「……そうでござるな」
やっぱりこいつは扱いやすいな。
今は正成の扱いよりも、盗賊の響きに笑いを堪える方が大変なくらいだった。
まあ、いっそのこと大爆笑してやるのも1つの方法だったのかもしれないが。
「それでは早速新たな仲間探しに従事するでござる」
「何か宛でもあるのか?」
「情報収集も忍の得意分野ゆえ。拙者に任せるでござる!」
すっかり元気になった正成は意気揚々と聞き込みを始めていく。
俺はその後を追いながらも、もう1つの問題についてただただ考えていた。




