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RPG~召喚から始まる魔王討伐~  作者: 柊雪葵
第一章 始まりの街
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「あら、あんたも冒険者? なんだか頼りにならなそうな風貌ね……」



 RPGの世界、その街並みを眺めていたら街人らしきおばさんに話しかけられた。



 初対面で頼りにならないとはひどい言い種である。



「まあ、いいわ。あんたは真っ先に街の外に出るアホなタイプではないみたいだし、この世界で大切なことを教えてあげるわ」



 そう言うとおばさんは、俺がさっきまでいた場所。

 そう、この冒険のスタートラインを指差した。



 そこでは大剣を背負った屈強な身体の男が、街人らしき男性に怒声をあげていた。



「やから、街の出口は何処じゃって聞いとるんや! ええからさっさと教えんかい!」



「あっ……あ、あっちです。ですが──」



「ああ、うっせーな。お前の役目はもう終わったんだよこの役立たずが!」



 大剣を背負った男、おそらく戦士であろう彼は街人に暴言を投げかけると街の出口へと向かう。



「先に言っておくけど、この後あの戦士の彼は死ぬわ。これは忠告をしようとしたのに聞かなかったのだから自業自得よね……まあ、あまり良い気のする光景ではないけど、貴方もあそこの(やぐら)で様子を見てきたらどうかしら?」



「そうですね。敵の姿や強さがわかりそうですし、行ってきます。情報ありがとうございました」



 俺はおばさんに頭を下げて、急いで櫓に向かう。



 戦士の男が街の外に出る前にどうにか櫓に着くことができた。



「ほう、珍しい職業の男が来たものじゃのー。お前さんもこの世界のリアルを見に来たのかの?」



 櫓に登るとそこには先客がいた。



 黒のローブを羽織った、齢80は過ぎているであろうお爺さん。

 その見た目から判断するとおそらく魔法使いであろう。



「情報を集めていたら、親切なおばさんが教えてくれたので」



「ほっほっほっ。流石に頭脳派の召喚士殿は慎重じゃな。ほれ、そろそろ始まるから見ておれ。これがこの世界のリアルじゃ」



 門が開きそこから戦士の彼が街の外に出た。



 そして近くにいた羊のような姿をした可愛らしいモンスターを倒そうと近づいていく。



 そして剣を抜き、躊躇いなく振り落とした。



「えっ!?」



「毎日の様にこうやって人の話に耳を傾けない冒険者が死んでいくのじゃ。あのモンスターは二面羊(にめんひつじ)と呼ばれておる」



 二面羊は戦士の攻撃をギリギリで回避した。



 そして反転する。

 今まで見えていた羊に見える部分は頭部ではなかった。



 異常なまでに発達した牙を持つ異形の生物。



 その姿に腰が抜けたのか戦士の男は座り込んでしまい、そして捕食される。



 血も骨も関係なく全てを食らい尽くすその獰猛(どうもう)さは、この世界の弱肉強食の縮図なのであろう。



「お前さんはロールプレイングゲームと呼ばれるものをしたことはあるかの?」



「はい、あの有名な竜の王様を討伐しにいく作品とかでしたら」



「それならば話は早いの。今お前さんも、あの死んだ戦士もレベルは1じゃ。そしてあの二面羊を倒すにはレベル30くらいは必要じゃの」



「最初から物語中盤に出てくるような敵がわんさかいるってことですか」



「ふむ、物分かりが良くて助かるの。それがこの世界のリアルじゃ。ゲームの様に主人公に合わせて敵の強さが変わっていくというご都合主義は存在せぬ。さっきお前さんは街人のおばさんと言ったが、彼女らも昔は冒険者だったんじゃよ」



「死ぬ覚悟で冒険に出るか、それともこの街で生涯を終えるか。その2択というわけですか」



 もし冒険に出るとしても、相当の準備が必要だろう。



 そのためにはお金が必要となるが、今の所持金は三千ゴールド。

 武器屋を覗いた時に見た値段が最低でも一万ゴールドは必要だったことを考えると、しばらくはこの街で仕事をして稼ぐ必要があるだろう。



 後は仲間も集めなければならない。

 こんな世界でソロプレイなんてアホみたいなことは言っていられない。

 特に俺は召喚士だ。

 何が召喚できるのか分からない上に、近接戦のできるステータスもふられていない。



 思考をまとめ終わり、早速行動に移ろうとすると、お爺さんに呼び止められる。



「召喚士よ、(わし)について参れ。呪文でお主の考えを読ませてもらったが、合格じゃ。王宮に案内しよう」



「貴方、何者ですか?」



「ほっほっほっ。儂は隠居したしがない魔法使いじゃよ。今は王宮で冒険者の育成に取り組んでおる」



 俺はその言葉を信じるか否か熟考する。



 ゲームならば確実についていかないと話が進まないパターンの展開であるが、この世界ではその常識は通用しない。



 つまり初心者を騙している可能性もある。



 しかし、それを判断するには手元にある情報が少なすぎる……



「用心深いのは良いことじゃが、時には流されてみるのも良いものじゃよ。時期尚早だったかの……まあ、情報を集めて気が向いたらいつでも王宮に来ると良い。この街にはお前さん以外の召喚士はおらぬから、儂が共に居らんでも問題はなかろう」



 そう言って魔法使いのお爺さんは王宮の方向へ帰っていく。



 その背中を見送った後、まずは街の情報を集めようと思い、俺は行動を開始した。

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