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第一章:「 月子 」 「 小百合 」 の出会い

 初めまして『えだいち』と申します。

初投稿です。本サイトのエディターの使い方(ルビの付け方)等、初心者で良く解りません。また、誤字・脱字・書き方などなど・・・読み難い点、多々あるかと思いますが、よろしくお願いします。

 うぅ~ん!!……、楽しみ。明日あしたから小学校1年生!!


「明日から新1年生だね、ピッカピカの1年生には、してあげられなかったけど……、ランドセルは、おねぇちゃんのお下がりね」と、母さんは言っていた。そして、箪笥たんすの奥から綺麗な洋服。

それも、おねぇちゃんのお下がりだったけど、うちでは珍しく、クリーニング屋さんでちゃんとクリーニングして貰っていた、いわば何かのイベント用の一張羅いっちょうらだった。


 でも、明日、私にとっては、憧れの1年生である。

本当はお下がりじゃなく、ピッカ! ピッカ! のランドセルが欲しかったけど……。

こんな田舎で、1年生に入学する子の全員が、ピッカ! ピカ! のランドセルで来るはずもないし、まして、うちの家庭事情では……。

もう諦めていたし、そんな事より、「新1年生だ! 」の期待、楽しみで膨らんでいた。


 *


 楽しみとちょっとばかりの不安? が入り混じる小学校への道。体育館にはみんなが集まり始めていた。


 すると、早速、うちの隣に住んでいる幼馴染みの耕介が、ちょっかいを出してきた。

「おい月子、上着の後ろに何か付いてるぞ! 」

「えっ! 」 と思い、上着を脱いで見てみると、悲しいかなクリーニング屋さんのタグだった。

(クリーニング屋さんに出すことなど、滅多にない我が家、『やっちまった』…… と)


 自分でも赤面したのは解っていたが、さすが荒波をくぐり抜けてきた、百戦錬磨の月子(私)。そうやすやすと引き下がる訳もなく、

「耕介、今日はいつものイガグリ頭じゃないんだね」 長髪気味の髪型。

「ちょっと、かっこ付けて来たの? 」

ちょっと耕介も照れ笑い? をしていたが、間髪を入れないのが私。

さっきの仕返し! とばかりに、

私の知る限り耕介の長髪? は、初めて。

イガグリ頭からちょっと伸びただけ、だったけど……。

「右と左で裾の長さが違うよ」

ちょっとちゃかすと、耕介はすぐに赤面し、洗面所に行った。

顔を赤らめたまま、頭をポリポリ掻きながら戻り、

「かぁちゃんめ、……」、その後も何かブツブツと言っていたが、とりあえず、入学式前での決戦は1勝1敗。


 私と耕介、お互いに盛り上がっていると、事務? の人かな?

「もうすぐ入学式が始まりますから、おしゃべりはもうお終い、静かに、ちゃんと整列して」 と、

唇に人差指で 『 シー 』 の合図を、ニコニコと優しそうな顔でみんなに示していた。


 入学式も無事終わり、いよいよ、自分のクラスに入る。

そう、こんな片田舎( 南辺なんべ村立小学校 )だから、新一年生のクラスといっても、ひとつしかない。

みんな、公園で滑り台やブランコ、高鬼さん? …… とか、遊んだ友達ばかり、そんなに不安はなかった。


 教室に入ると、大っきな教室だな~、と思った。

すると、事務員さんが、ただ事務的に、

「自分の席に座って下さい!」 と。

(その言い方、正直、1年生の私でも冷たさが感じとれた)

みんなの席は、黒板に、机にも『ひらがな』で名前が貼ってあった。


 でも、1席だけは空白のまま、何故かその空白の席は私の隣だった。


 そして、みんなが自分の席に座ると、担任先生が入って来た。

(ちょっと年配ぎみの先生。でも、母さんみたいな? 優しそうな先生だった)


「皆さん、ご入学、おめでとうございます。これから、みんなで仲良くがんばろうね! このクラスは全部で6名です、ちょっと寂しいですが……、

でも、新しい子も引っ越して来ましたよ。『高橋小百合』さんです。では、紹介しますね」


 その子は、ちょっと、伏し目がちに教室に入って来た。


「この子が、これからみんなの同級生になる高橋小百合さんです。まだ、引っ越して来たばかりなので、解らない事とか、一杯あると思います。皆さん、仲良くしてあげて下さいね」と、先生が言うと、

「高橋小百合です、仲良くして下さい」と、小声ながら自分の名前を言い、会釈をした。

そして、先生が、

「あなたの席は、あそこだから」と指差した席は、私の隣に空いていた席だった。

私の名前は、高橋月子、『あいうえお』順なら、そして、たった6名の生徒の中で同じ『 高橋 』なんだ、と思っていた。


 先生は、みんなに、

「何を話してもいいですから」と、入学したばかりのたった1年生の私達に、自己紹介をさせた。


(こんな小さな村なんだから、お互いに解っているはずなのに、何が好きで嫌いか。得意なもの、苦手なものとか、全部知っているはずなのに……。転校生に気を使ったのか? は、解らないが、

 でも、今から思うと、『 しっかりと、これから、あなた達の新たな一つの人生が始まるんだから 』 の叱咤激励の意味が込められていたのかもしれない)


「では、早速自己紹介を始めたいと思います。トップバッター、最初は会田耕介君からかな。ちゃんと起立して、きちんと自分の事を紹介するのよ」


 耕介は思わず、

「えっ! 」 と、

その時、何故自分からなのか? 名簿の先頭は確かに俺だったけど……、と思ったに違いない。

(きっと、耕介には、『あいうえお』順 という発想はなく、名簿の先頭になってしまったという偶然の悪戯を後悔していたと思う )

あるいは、もし『あいうえお』順に気がついていれば、何故、会田という姓に生まれてしまったのか、後悔と宿命を感じていたかもしれない。

(どっちにしろ、『あいうえお』順など当たり前であり、親を恨んでもしょうがない話である(笑))


 そして、会田君は緊張した面持ちで席を立ち、

「僕は、会田、こっこっこっ、耕介です!」

と言うと、頭をぺこりと下げ、着席した。

(ちょっと、噛んでしまった? ようだ。無理も無い、いきなりのトップで……。 でも、そのおかげで、クラスのみんなから笑いも取り、なごんだ気がする。その後も数日の間は、誰も決して悪気もなく、「耕介、おまえは 『ニワトリ』 か! 」 などと、幼馴染みの男子達にいじくられていた)


「はい、よく出来ました。では、次は青木智子さんね」


 その後も、自己紹介は続いた。みんな自分の名前と、なかには自慢げに得意なゲームの話を出す子もいて、教室は無邪気に盛り上がっていた。


 そして、小百合さんの自己紹介の順番が回ってきた。

私も全く知らないし、遊んだ事もないので興味はあった。

もちろん、クラスのみんなもそうだったと思う。


「高橋小百合です。父の仕事の関係でこちらに来ました。どうぞよろしくお願いします」

何故?、たかが小学1年生で引っ越して来たばかりで、まだ間もないのに……。 こんなにもハキハキと、すごいな~と思った。


「では、次は、高橋月子さんです」


 いよいよ私の番が回ってきた。普段遊んでいる私を知ってる子( クラスの全員? か)は、私が自己紹介するまでもなく、

「おい月子! ちゃんと挨拶しろよ! 」などと、変な野次も飛んでいた様だったが、

「ぶっちゃけ! 元気っ子です! 」

それだけで終わってしまったような記憶しかない。名前を言う隙さえも、与えて貰えなかった。

そんな、私を見てなのか、小百合さんの緊張もほぐれたのか? 少しの笑みを浮かべていた。


 私の隣の席になってしまったという縁、名字が一緒だから?、(小百合さんにとっては、全く性格の違う 『はっちゃけ娘』 の私の隣の席に! 不幸? というか、宿命なのか) などとも。


 みんなの自己紹介の時間も終わり、

先生から、

「皆さん、教室の後ろにロッカーがあります。明日から自分の私物、ランドセル、体操着などかな? は、自分の名前のところに置いてください。では、これからみんなで頑張る教科書を配りますね」

(教科書だけは、ピッカ! ピッカ! の1年生だ)

そして、

「明日からの授業の時間割り、予定されている学校行事の内容も配りますから、遅刻しないように、みんなで仲良く頑張って下さいね」と。


 みんなで集合写真も撮り、小学校初日が無事終わった。


 次の朝、私は早起きをして学校へ。

私は1年生になった事が嬉しかったのか、

「一番のり!! 」 と意気込んで教室に入った。が、あまりこの辺の土地勘もなかったのか、小百合さんはもう来ていた。

私は、さほど気にもせず、

「おはよう!」と声をかけると、

ちょっとびっくりした様子で、小さな声で、

「おはようございます」と、答えてくれた。


 私は、昨日きのう先生が言っていた通りに、授業で使う物以外は、教室の後ろにあるロッカーにランドセルと体操着を置きに行った。小百合さんとはロッカーも隣、小百合さんのロッカーには、既にピッカ! ピッカ! のランドセルと値段の高そうな体操着袋が置かれていた。

 私は、自分のロッカーに使い古されたお下がりのランドセルと、古着からかき集め、母さんが作ってくれた体操着袋を。

その体操着袋に気がついたのか、

「綺麗なパッチワークの袋ですね」って、言ってくれた。

「うん、ありがとう」とは言ったものの、私自身は、小百合さんのとっても高価そうなランドセル、体操着袋が羨ましかった。


 でも私達は、ほんの2.3日でとっても仲良くなった。(あまりにかけ離れた育ちの違い?、性格の違い?、が功を奏したのか……?、

良く解らないが、何故かとっても気が合った)


 別に友達の生い立ちなど、あまり気にもしない私だが、自然に会話は弾み、

でも、いっつも、私ばかりが喋っていたような気がした。

そんなある日、小百合さんが、

「自己紹介、面白かったね。月子さんはみんなの人気者なんですね。いっつも明るいし、いいな」と、ポツリ。

私も、

「小百合さんって、しっかりしてるね。引っ越して来て初めての自己紹介で、あんなにハキハキと喋れるんだから……」

そして、小百合さんの自己紹介の挨拶の事を思い出し、

「自己紹介では、お父さんの仕事の関係で来たって言ってたけど、どこから来たの? 」、何の深い意味もなく、つい、口から出てしまった。

「うん、東京から来ました。だから、この辺の事よく解らないし、よろしくね。いい友達になって下さい。今あそこで工場作ってるでしょう? 父は、そこで働いているの」

普段無口な小百合さんが、自分のお父さんの事まで話をしてくれた。

私は、自分の自己紹介の時でさえ、名前も言わせてもらえなかった『はっちゃけ娘』である。素直に嬉しかった。


 でも小百合さんは、いつも、ちょっと寂しげな、物静かな子だった。


 そして数日後、きっと小百合さんに興味のあった男子から広まったのだろう、

「高橋小百合ちゃん、同じ高橋でも月子じゃないぞ! あの子は東京から来て、東京でも有数の名門私立幼稚園にかよってたんだって。そして、とうちゃんはなぁ~、あの今作っている、でっかい工場の工場長なんだって」

「同じ高橋でも、月子とは大違いだな、東京から来たんだから、家もすごいらしいぞ! 」


 私はそんな噂話を聞き、正直羨ましかったが、でも月子は月子、そう、私は 『はっちゃけ娘』 である。


 それから数ヵ月後、小百合さんは、国語、算数、・・・、など、ほとんど全ての科目でクラスのトップだった。

 そのせいもあってであろうか、小百合さんは、何の意識もして無かったようだが、その上品さと、雰囲気でクラスの人気者になっていた。

(今から思えば、小百合さんには成績トップクラスの自分が、そして、自分の雰囲気が 『 嫌 』 だったのかもしれない。でも、『はっちゃけ娘』 の私にとっては、到底真似のできない、ある意味憧れでもあった)


 ただ、体育と美術だけは苦手のようだった。体育の時間は見学することも多く、私には、ちょっと気掛かりだった。


 それからも小百合さんと私は、ずっと仲良しで、学校生活を楽しんでいた。


 数ヵ月後、私は学校から帰ると、宿題も無かったのでお気に入りの近所の川へ行った。別に何の目的も無いが、その土手に座り、そこからの穏やかな川面を見るのが好きだった。そして、河原にりて何気なく歩き、気に入った石を見つけると拾い、磨いて、コレクションにしていた。

(我ながら、お金のかからない、いい趣味である。 ふむふむ )


 そんな中、いつものお決まり、

『みなさん、5時半になりました。公園などで遊んでいる子は、家に帰りましょう』 聞き慣れている村内アナウンスである。

 ここから20分位で家まで帰れるし、門限にも余裕、私は家に向かった。ここのちょっとした小高い丘を越えれば、すぐ我が家である。

 すると、小高い丘の辺りで、突然、

「失礼ですが、高橋月子さんですか?」と、上品そうな年配の方から声をかけられた。

私は、

「はい?、月子ですが、何か?」 と答えると、

「いつもお世話になっております。

私は、こちらの高橋様のお宅で、小百合お嬢様の身の回りのお手伝いをさせて頂いている者です。

お嬢様はいつも、月子さんの事ばかりを嬉しそうに話しています。

失礼かとは思いましたが、入学式の集合写真を見させて頂き、貴女あなたが月子様かな? と思い、声をかけさせて頂きました。

これからも、小百合お嬢様のいい友達でいて下さい」

「はっ、はい」 と、だけしか答えられなかった。

あの、小高い丘の立派な家は、小百合さんの家なのか……。


 小百合さんは、そんな自慢話など一切しない子だから、初めて知った。

お手伝いさん? そんな事テレビの世界でしか知らないし、うちなんかに比べれば、私がお手伝いさんのような者である。でも、「名字は一緒だ!」 と。


【 何故か、いつもポジティブ思考な事が、月子のいい処だったのかもしれない 】


 1学期の終業式の日、先生がホームルームの時間に、

「今日は皆さんにとっては、残念なお知らせになってしまうかもしれませんが……」

突然の一言にみんな、不安そうに、

「えっ!」と、

「みんなと仲良く一緒に学び、遊んでいた西嶋修君が、お父さんの仕事の都合で東京方面へ行く事になり、この1学期で転校する事となりました。

でも、この村で育ち、一緒に入学式を迎えられた事、集合写真にも一緒に居ます……、西嶋修君、前に出て来てみんなに挨拶しましょう」


 前に出てきた西嶋修君は、

「父さんの仕事の都合で、東京方面へ転校することになりました。みんなとあんなに仲良く遊んでいたのに、」 と、半べそをかきながら

「東京なんて行きたくない! もっとみんなと遊びたかった!」と言っていた。私達みんなも口々に、

「なんで、もっと早く言ってくれなかったんだよ!」

「しゅう!」

「しゅう君、東京行っても忘れないから」

「転校先でもいい友達作れよ、がんばれよ!」と。


~~~~~~~~~~~~~~~~~


**予告**

第2章:「ツッキー」そして「ゆり」


~~~~~~~~~~~~~~~~~

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