春の嵐と桜の木
春の嵐
薄曇りの世
ほどけない結び目
解せない砂あらし
迷う風の手
啼きながら
変わり目を探る
桜の木
見えない蕾
掴めない気持ち
はがゆい場所
刺さる雨の筆
塗り込めて
黙り込んでゆく心
春の嵐
四季の初めを綴り始める
誰かがいなくなって
何かを連れ去って
また始まって終わって
突然は足早に平然となって
暖められて通り過ぎる
何度も繰り返して
連れて行くもの運んでくるもの
桜の木
振り向かず何処にも行かず
喜びもせず憂いも見せず
媚びもせず苛立ちも見せず
逃げることもせず
寒くても痛くても
何も語らず
ここに立つ
その先があることを
咲きほこれることを
知っているから