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第7幕~決断~

「いやぁこれは素晴らしい。一度王城に来てもらいたい」


 あ……この人の存在、忘れてた。

 レオンとセイナは同じことを思って顔を見合わせて、内心で苦笑した。


「あ、は、はい。わかりました」


 思考と言葉が一致せず思わず返事に詰まってしまう。


「それより何ですかあれ? どこから道具を出してるんですか? それにあの薬みたいなのは? あんなにすぐ傷を治す薬なんて見たことがありません!」


 何で戦闘前と戦闘後で態度が変わってるんだ、とレオンは疑問に思うが、今問題なのはアイテムボックスの説明だ。ゲームの製作側の管理部責任者を名乗る人物に対応を考えておけと言われていたが、あまり考える時間がなく決めることができていなかった。

 レオンは頭の中をフル回転させて言葉を探す。一方でセイナはこの一件に関して完全にレオン任せらしく考えようともしていない。

 あまり時間をかけると怪しまれるのでレオンは何とか瞬時に思い付いた方法を言う。


「えっと、これはある魔法なんです。魔法で作った空間に道具を入れて持ち運びができるんです」

「なんと……その魔法とやらは?」

「すいませんがそれは企業秘密で言えません」


 衛兵はがっくりと肩を落としたが、これからすべきことを思い出したようで、レオン達を王城へと連れていった。

 歩いている時に衛兵がまだ自己紹介をしてなかったことを思い出し、口を開いた。


「そう言えば自己紹介がまだでしたね。私はセントミアル騎士団副団長のシャビルです」

「僕はレオンで」

「私はセイナです」


 レオン達は自己紹介を経て、この目の前にいる人は衛兵だと思っていたが実は騎士団副団長だということに驚いた。

 ――副団長なら一緒に戦ってほしかったけどなぁ。

 そう思っている間に王城に着いた。シャビルは見張りの兵に敬礼して王城の中に入っていく。

 王城の中はレオンの思っていたよりも広く迷いそうな場所だった。日本には王城に入る機会がないどころか王城というものすら無かったから新鮮に感じながらレオン達は控え室に通された。


「申し訳ありませんが少しの間ここでお待ちください。大した物はありませんがここにあるものは自由に使ってもらって結構です」


 そう言い残してシャビルは控え室から出ていった。


「本当に大した物無いわねこの部屋」


 シャビルが出ていった瞬間にセイナが容赦ないことを言い放ちレオンは思わず苦笑いを浮かべる。


「それは言っちゃだめでしょ。王城の中に入れるだけですごいことなんだから」

「まぁそうね」


 その後、まだまだ時間がありそうだったのでレオンはさっきの戦闘で剣に付いた血を落とすことにした。あれから少し時間が経っていたために少しこびりついていて少し苦労していた。

 何とかそれが終わった直後、シャビルが三十代ぐいの若い男性を連れて戻ってきた。それを見たレオン達はその場に剣を置き慌てて立ち上がる。


「そなたらか。父上の仇をとってくれたと申す者は」

「はい。僕がレオンで、こちらがセイナです」


 父上だって? 確か暗殺されたのがセサルセルド国王だって言ってたから……

 そのことを察したのがシャビルに分かったらしく頷いて紹介した。


「こちらはアンセンド・セサルセルド様だ。前国王グレサン・セサルセルド様がお亡くなりになられた今、次の国王になられる方だ 」


 紹介された側のアンセンドはあまりその話題に触れられたくないらしく顔をしかめた。だが思いきったように重々しく口を開いた。


「そのことで話があるのだが……」

「はい、何でしょう?」


 さすがにレオンも相手が相手なので敬語で若干固くなりながら返す。


「…………我の代わりに次の国王になってはくれぬか?」


 レオンとセイナは一瞬何を言われたのか解らなかった。それを理解するにつれて今度は意味が解らなくなる。


「…………はい?」

「だから、我の代わりにこの国、セサルセルドの王になってはくれぬか?」


 どうやら聞き間違いなどではないらしい。確かにこの目の前にいるアンセンド時期国王はレオンにこの国の王になってくれないかと頼んでいるのだ。

 今日この世界に来たばかりのレオン達はこの日に起こった急展開についていけず、呆然とするしかなかった。


「なぜ……なぜ僕なんです? なぜアンセンド様じゃないんですか?」


 レオンが訊ねるとアンセンドは少し黙りこんで重たげな口を開いた。


「我でには国王になる資格がない」

「そんな……」

「我は……父上が殺されたというのに何もできなんだ。何も考えられず動くことさえできなんだ我とは違いそなたらは勇敢に戦い、そして仇を取ってくれたではないか。冒険者であるそならには全く関係のないことだというに、全く見知らぬ兵の頼みに応え、結果的には我の父上の仇を取ってくれたではないか。我は父上の為にさえ動けなんだ。王になっても国の民を守ることが出来ぬ。だから、そなたらに頼む!」


 頭を下げて頼むアンセンドを見てレオンとセイナはは慌てる。


「か、顔をあげてください! 僕達はそんな大したものじゃありませんよ!」

「そ、そうですよ!」


 どうしよう。僕はこの世界に来たばかりのでこの世界のことや勝手、政治なんかは何一つ分からない。それにそもそもこの世界に逃げてきたのは現実で特別扱いされるのがだったからだ。いや、違うな。自分で気がついていなかったけど高等な身分が嫌だったののかもしれない。

 レオンは心底でそう考え、自分に言い聞かせた。僕には、無理だと。


「どうするの?」


 そんな時セイナの声が聞こえ、思考を中断させる。しかしまたすぐに再開させる。

 確かに僕は高等な身分が嫌……なんだと思う。でも……だとしても……そこから逃げっぱなしで本当にいいんだろうか。どうせこれからしばらくは元の世界に戻れないんだ。この世界はあの世界と違う。だからせめてこの世界でぐらい本当の自分見詰めたい。逃げてばかりいず。政治に関してはどうにかなるだろう。

 レオンがそう覚悟を決め、決意した表情をセイナに向けるとセイナは無言で頷いた。


「解りました。お引き受けします」

「そうか、本当に助かる。済まぬな」

キャラ紹介No.3

シャビル

38歳

髪色:黒、白髪混じり

セントミアルの騎士団副団長を務めるが、まだ就任されたばかりで戦闘に少し恐怖を持っていたりする。都合がいいのは問題点

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