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第5幕~事件勃発Ⅱ~

 襲ってきた暗殺者はレオンに斬りかかってた。それをゲームでずっとやってきた弾き防御(パリィ)し、逆にレオンが今度打ち込む。

 しかし、暗殺者の反応も素早く、逆に弾き防御で防がれてしまう。

 次はフェイントを使って、胴を斬ると見せかけておきながら左から脚を狙うがそれも反応されて弾かれてしまう。その弾かれた勢いを利用して回転し、右からも斬りかかるがこれも通用しない。最後に突きを放つが、軽い動きで一歩斜めに踏み出して半身になり受け流されてしまう。

 もう攻撃マニュアルがなくなり、どう攻めるか迷っていると暗殺者が一瞬で距離を詰めてきた。咄嗟に反応するが暗殺者の動きの早さに対応がやや遅れ気味になる。

 その後も連続して繰り出される斬りになんとか反応するのが精一杯で徐々に後ろに押されていく。

 そんな状況で次にレオンに向けて繰り出されたのはレオンがさっき楽々避けられたのと全く同じ軌道の突きだった。

 ただでさえ反応が遅れているレオンは突きに対して素早く下がるが完全には避けきれず、切っ先が少し突き刺さりそこから血が赤く滲んだ。

 完全に避けたと思っていたレオンは目を見開き声を漏らす。


「がはっ……」

「レオン!」


 それを見たセイナが慌ててレオンの横に駆けつける。そして庇うようにセイナが愛剣のグローリースラッシャーを抜いた。


「大丈夫? 一旦下がって。後は私がどうにかする」

「ごめん。ポーションを飲んで回復したら戻ってくる」


 痛みで顔を歪めながらもセイナに返すと、言葉に甘えてポーションを飲むために一旦下がるレオンの動きは鈍く、そんな状態のレオンにとどめをさそうとした暗殺者だったが、その前に立ちはだかったセイナに邪魔されて追うことを諦めると、次はセイナに狙いを変え剣を向けた。


「これ以上レオンを追わせない!」


 ――ありがとう。ちょっとの間だけ頼んだよ。

 レオンは代わりに出てくれたセイナを一瞥し衛兵の前まで戻ると、おぼつかない動きでアイテムボックスを出し、残り十とある瓶に入った緑色の液体(ポーション)を口に入れる。

 一口飲んだだけで元の世界の薬よりも凄い苦さで更に顔を歪めるが、全て飲みきらないと効果が現れないため残りの量を一気に飲み干す。

 ゆっくりと痛みが引いていき、血の出ていた腹と右肩の傷が治り完全に元の状態に戻った。

 ここまでおよそ五秒、痛みが治まったり止血する程度だと思っていたポーションの効き目が傷さえも完治させたことはレオン自身が一番驚倒した。しかしそれと同じくらい驚愕したのはやはり衛兵だった。それに、変なものから薬が出たことに驚嘆し、その薬がほんの数秒で傷さえも完璧に治してしまう凄さに愕然としている。

 そんなことなは気がつかないレオンが戦闘に戻り二対一になったがそれでも暗殺者は逃げない。それどころか辟易すらしない。子供二人に負けるわけがないという自負でもあるのだろうか。それよりもただ単に嘗められているのか。

 レオンは何だか腹が立ってきた。その感情に身を任せて剣を振る。しかしそのどれもがいとも簡単に弾き返される。

 今度はそのまま押し込み鍔迫り合いにもっていく。


「感情のままに動く奴など……大したことはない!」

「うるさい!!」


 暗殺者の言葉は熱くなっているレオンに更に火をつけた。もう既に冷静さを欠いているレオンは誰が見たって初心者以下に見える。

 力任せに暗殺者を押し返し思うがままに振る。だがそんなもので通用する訳もなくまるで剣が振られる軌道が判っているかのように止められる。

 そんな状態が少しの間続いた。後ろでセイナが叫んでいるが、血が上っているレオンの耳には全く入ってこない。

 遂に暗殺者は痺れを切らした。レオンの剣を大きく弾き、完全に防御が無くなった胸を斬り裂き、レオン肉を抉ろうとした。だが、それより前に突如現れた剣によってそれは防がれた。

 もうダメかと諦めかけていたレオンは突如として出現した剣に驚く。だがそれはセイナだった。剣が弾かれて危険と判断し、来てくれたのだ。


「セイナ!」

「危なかったわね……」


 剣と剣が接したままの状態だったのでセイナは剣を力強く押し返し、一歩前に出てレオンの横にきた。そして不意打ちをくらわないように視線を暗殺者の方に向けたまま強い口調で吐き捨てた。


「レオン! ちょっとは落ち着きなさいよ! 訳の分からないことで血が上って冷静さを失うなんていつものレオンじゃない! あんなんじゃ戦闘をしたことの無い人でも勝てるわ!」


 セイナの陳ずる通りだ。僕は一体どうしちゃったんだろう。こんなことは今までに無かったはずなのに。

 セイナに一喝されて少しは落ち着き反省するレオンにセイナの言葉は途切れない。


「それにレオンは格好つけすぎ! あなたは何でも一人で全てを抱えて……私なんか邪魔? 足手まとい? ふざけないで!」

「せ、セイナ、そんなつもりは……」


 ここまで強く、激しく憤慨するセイナを見たのは初めてだった。確かにレオンには何か問題を一人でどうにかしようとする悪癖がある。それでもセイナが邪魔だったり足手まといだなんて感じたことは一度たりとも無い。でも初めて見るセイナの逆鱗に呑まれ、口を開くが言葉が出ない。


「私はレオンほど剣捌きも戦闘も巧くない。それでも剣を使えるし戦闘も出来る。自分でもレオンの横に立てるだけの力があると思ってる。こっちに来てからレオンを助けられるのは私しかいないんだから」


 ふっ、言ってることが矛盾してるよセイナ。

 大分精神的に余裕が出来た思考でそんなことを突っ込んだ。当然声には出せないが。

 でも実際そうなんだ。この世界で助けてもらえるのはセイナしかいない。だから僕がこんなんじゃいけないんだ。

 落ち着きを取り戻したレオンは心中で反省した。もっとセイナを頼ればよかったと。そしてこれからは何でも一人で抱え込むのは止めようと。


「だから…………もっと私を頼ってよ?」


 セイナはこれまた見たことの無い、今度は最高級の笑顔を見せた。


「うん、ごめん、わかった」


 二人は同時に頷き、改めて暗殺者の方に向き直る。


「もうお喋りは終わったか?」


 暗殺者らしからぬことに待っていてくれたらしい。


「行くよレオン」

「……うん!」


 今度こそ二人で駆け出した。


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