《プロローグ》
初の三人称です
おかしいところがあれば指摘下さい
時は二〇六三年七月十日、場所はとあるゲーム製作会社のモニタリングルーム。ここでは現在βテスト中のVRMMO、《InfinityOnline》の内部の様子が部屋いっぱいのモニター画面に映し出されている。そのモニターの前には画面を見つめる男が二人。彼らは社員で《InfinityOnline》の製作部に所属し、ゲームを造ってきた。完成した今では管理部に属している。
「もうすぐサービス開始だな」
二人のうち右側に座っている男が口を開いた。
「ああ。ここまで十年もかかったのか。長かったな」
「あの時からこんな年をとりよって」
「それはお互い様だろう」
二人は声を上げて笑う。
笑うことに満足して笑い終えた二人は、会話をそれきりにし、モニター画面に集中する。
画面に映し出されているようなVR技術が発達したのは今から十五年前の事。それなのに今も尚VRMMOがVR機発売当初の人気を保っているのは、やはりVRMMO特有の《自分の身体と意志で敵を倒す面白さ》というのが大きい。
あまりにも人気があるために、十五年経った今でも毎年十数ものVRMMOが発売されている。
年間に十数という数は少ないように思えるがとてつもなく多い。なぜなら一つのVRMMOを造るのに最低一年は掛かるからだ。にもかかわらず毎月新作が出ているのは多くの企業、会社がVRMMOを製作しているのだ。こう考えるといかにVR技術が発達し、人気が出ているかが解るだろう。
その種類には、対プレイヤー戦の格ゲーや対モンスター戦の王道なファンタジー系、自分のペットやモンスターを育てるのがメインのゆるい育成RPGなど数多ある。
このInfinity Onlineは王道の対モンスター戦でさらにはPK可能の結構激しめのVRMMOだ。この作品はβテスト時にネット上で爆発的に人気が出た作品で、βテストの応募も多くあった。
管理部の二人の軽い会話から少しが経ったとき、彼らの後ろの自動スライドドアが開いて、新たに男が一人入ってきた。最初からいた二人は振り返らずとも入ってきた人物が誰か判っていたために振り返らず声をかけた。
「どうだworldの方は」
すると入ってきた男はフッと不敵な笑みを浮かべて答える。
「順調だよ。online程じゃないがね」
その後は三人で画面を見つめた。
モニターの画面の中では、若い男女の二人が狩りをしていた。若い男子の方は大橋零穏。この世界ではレオンという名でプレイしている。
若い女子の方は倉西聖奈。この世界ではセイナという名でプレイしている。
その二人の様子を見ていた三人は確信していた。彼らがInfinity Onlineを動かす存在だと。
βテスト終了まであと少し。この十年間をゲーム製作に費やしてきた彼らにとって最高の瞬間がまもなく訪れようとしている。だから嬉しそうな表情でモニターを見つめていた。後から入ってきた一人だけを除いて。
その一人は少ししてモニタリングルームから出た。そして自動スライドドアが閉まって少ししたところで男は立ち止まり叫んだ。二人とは違う意味で楽しむように笑いながら。
「さぁゲームスタートだ!」
それだけ叫ぶと再び歩き始めた。