自動販売機
皆さん、どうもこんにちは。私は宇宙飛行士の豊崎健太だ。つい先日まで宇宙ステーションの方で仕事をしており、地球に帰還した。愛する家族が出迎えに来てくれた時は、相変わらず涙を堪えることができないものだ。それは宇宙が危険な場所であるからであると思う。一つ間違えれば星の大海へと投げ出されたり、爆発して一瞬に命を落としてしまったりするからだ。まさに流星のように。
……プロとして発言していいものか疑問だが、そんな宇宙に身を投げ出してみたい時がある。宇宙は幽玄で厳かな世界だ。多くの星が存在しているのに、ある星を目立たせるためにひっそりと輝く。しかし自分の存在の主張は絶対にやめない。その大小が、強弱が、濃淡が実に胸をときめかせてくれる。一体どれほどの広さがあるのだろう……と想像するだけでも身が震えるほど興奮してしまう。私はただそれだけの理由で志願したのだ。……笑い話にもほどがあるだろう?
さて、そろそろ話を戻そうか。皆さんはこの言葉をご存知だろうか? ……〝シンクロシニティ:Synchronicity〟。これは簡単に言うと〝意味のある偶然の一致〟だ。かの精神科医であり心理学者でもある〝カール・ユング〟が唱えた言葉だ。詳しくはご自身で調べていただきたいが、要するに〝ある複数の出来事が何の関係もなくても一斉に発生する作用〟というニュアンスだ。
なぜ私がこれを話題に挙げたのか? それは宇宙と関係があるからだ。カール・ユングは他に〝集合的無意識〟(人間の無意識の深層に存在する、個人の経験を超えた先天的な構造領域)というのも提唱している。夢や空想が持つ典型的イメージが人類全ての無意識に定着している、という感じだ。人類個々の脳みそがインターネットのような回線で繋がれており、どこかのサイトへアクセスしているようなものだと解釈している。それはどこへ? ……そう、宇宙だ。実は宇宙の構造は人間の脳の神経細胞〝ニューロン〟に酷似していることが明らかになっている。つまり、人類全ての脳みそは宇宙へと通ずる、ということになる。……〝シンクロシニティ〟や〝集合的無意識〟もそれなりの信憑性が出てくるだろう? 脳みそが連結されているのだ。〝意味のある偶然の一致〟や〝集合的無意識〟がありえたとしても不思議じゃない。
……いや、すまない。そもそもなんでこんな話をしているのか、というわけだな? それは……実は私は体験してしまったのだ。この〝シンクロシニティ〟をね。これからが君たちにとっての本題であろう。今から話すから落ち着きたまえ。
それは地球に帰還してから半月後のことだった。私はある病院に入院し、リハビリを受けていた。宇宙に長く滞在していると、重力の関係で身体がぼろぼろになるのだ。簡単に言うと、骨がスカスカの状態になり、筋肉が著しく衰えてしまう。帰還したばかりでは自分で歩くどころか立つことさえもできないほどだ。
それで、リハビリを終えて休憩に入った時、ふと自動販売機を見かけた。真っ先に目についたのは〝青い缶ジュース〟だった。清涼飲料水だ。汗もかき、疲労している今この瞬間、もっとも身体が欲していたのだ。
私は吸い込まれるようにそちらへ向かった。もちろん、周囲を厳重に警戒して、だ。無断では看護師さんに怒られてしまうからだ。するとどうだろう。
「……!」
私の隣に同じような格好をした患者がいるではないか。しかもサイフを取り出し、お金を投入しようとしている。これ自体はそこまで不思議なことではない。しかし私の目には不思議で仕方ないのだ。なぜなら持っていたサイフが同じで、百円玉の年数まで一緒だったのだから。私は思わず話しかけた。
「奇遇ですね。同じサイフを持っているなんて」
「……」
その患者は私の声を聞きつつも、こちらを見ていた。この人は話すことが難しいのかもしれない。脳の障害で口を動かす筋肉がマヒしてまったり、言葉の理解が難しくなったりすることがある。確かに、足を引きずっているようにも見える。
私は軽く会釈するだけにし、〝青い缶ジュース〟のボタンを押した。しかし、缶ジュースは出ない……。連打しても出てこないのだ。おかしい、おかしすぎる……。そう思いながら、おつりを見てみると……百円玉が入っていた。この百円では使えないというのかっ? しかも私のサイフの中には小銭は百十八円しかない。お札の方は二千円入っているが……。
ふとして、ちらりと隣を見てみると、なんとその患者も百円玉が出てきてしまっていたのだ!
なんという偶然であるかっ! いや、待て。同じ硬貨が返却されてしまったということは、この自動販売機はある年数の硬貨を受け付けない構造になっているのではないか? 他の百円玉がないために実証できないのが惜しまれるが、そう考えれば納得がいく。しかし、なんという偶然……。しかも相手もサイフの小銭をチェックし、百円玉がないことを悟ったようだ。……くそ、もう少し持ってくればよかった。
仕方があるまい。お札を使おう。そして百円玉が出てきたら、この盟友と交換して差し上げたい。私は何とも言えぬ興奮を抱きつつお札を投入した。機械音とともにお札を飲み込み……吐き出した。向きが違っていたか? ぴしっと折り目をなくして再び投入した。……また吐き出された。ならば別……ん? これは……千円札じゃない、一万円札だっ! なんということだ! これでは買うことができないっ!
ふとしてまた隣を見ると……一万円札を手にした盟友の姿があった。おぉっ! なんとここまで全て一致しているではないか! もはや偶然という言葉で片付けるには惜しい状況だ! こうなれば私も黙っているわけにはいかないだろうっ!
私はそちらに近付いて、
「本当にすごいですねっ! まさかあなたも同じ状況だとは、……あ、すみません。興奮してるん……」
ん?
「……?」
私は少し異変に気付いた。待て、この人は……まさか……!
「……」
私はこつこつと叩いてみた。その人も同じように叩く仕草を見せた。今度は踊ってみた。やはり同じように踊る……。
「……これは、まさか……」
「と・よ・ざ・き・さ~ん?」
ぎくりとして振り向くと……、
「なにしてるんですかぁ? もう消灯の時間なんですけど?」
「……」
鬼の看護師さんが。しかも、
「しかも何たたいたり踊ったりしてるんですかぁ……? あやしいにもほどがありますよ?」
「……いつから見てた?」
「ぜ・ん・ぶ」
〝そちら〟を見ると、看護師さんが写っていた。
「……」
「早く寝てくださいっ!」
「はいぃぃっ!」
そう、私が見ていたのは〝鏡〟だったのだ。
あれから私は〝ミラーマン〟と呼ばれるようになってね。仲間に笑い者にされたよ。……ん? なぜ自販の隣に鏡があったかって? それは理学療法士さんが鏡を使ったリハビリを終えた際に、置くスペースに困ってしぶしぶそこに置いていったかららしい。
いかがだったろう? 少し面白かっただろうか? 〝シンクロニシティ〟はどうやら鏡の世界でも通用するようだ……ふっふっふ……。おっと、〝シンクロニシティ〟はウソではないということをここで言っておこう。この話は与太話ではあるが、実例はいくつかあるという。そこから先は自分で調べてくれ。もう時間がないのでな。……それじゃ、また会おう。
「豊崎さんのお話は面白いですね」
「そうかな? それはよかったよ」
「さて、お話はこれくらいにして、今日もがんばりましょうねっ」
「うむっ」
こんにちは、水霧です。まずは、更新が遅れてすみません。活動報告であった通り、新作のシナリオ&プロット作りに追われていて、こちらの方が手付かずでした。筆者自身としては、たとえ視聴者様が一人だけであろうと、小説を書き続けていく所存です。頑張るっきゃないっす!
さて、皆さんが楽しみにしていた〝あとがき〟では、この四話の元ネタをお話ししたいなと思います。いやだ、という方は今すぐ腕立て三回はしてくださいね(笑)。ぜひぜひ、という方は筆者がアイスをおごってあげます。……ウソです(笑)。
・エンピツ
これは完全に創作です。エンピツを見ながら使いながら、噛みながら(ウソ)考えました。今の社会ではパソコンやシャーペンなど、鉛筆を使う機会が減っているのではないかと。もちろん筆者も含めて。なので、ここでスポットを当ててみました。ちなみに、筆者が使っているのはシャーペンの〝ク○トガ〟です(笑)。
拳銃やら何やらの表現は、筆者が書いていた二次創作『フーと散歩』シリーズの資料からです。せっかく調べたのだから、あえてここで使ってみました(笑)。
・トイレ
これは筆者の実体験です。筆者が幼い頃にトイレから出られなくなってしまった体験を脚色してみました。もちろん社長でもなんでもありませんよ(笑)。人ってパニックを起こすと冷静な判断ができないんです。特に普段冷静な人であるほどその傾向が強いのかなと思います。筆者の経験則です(笑)。そこを強調してみました。
〝下〟の話になってしまったのは本当に申し訳ありませんでした。ここでお詫び申し上げます。
・カギ
これも実体験です。しかもつい最近(笑)。かなりノンフィクションです(泣)。ただし、人間関係は違いますのであしからず。カギってけっこう忘れちゃうんですよね。戸締りしたかな、とかもう一度チェックしなきゃな、と思ってしまいます。
ちなみに、これが酷くなると〝強迫性障害〟の可能性があるので、神経質になりすぎないようにしてくださいね。あと、締めたはずなのに締まってなかったりあるいは逆だったりと、やったことがやっていなかったというのが良く起こる方は〝認知症〟の可能性があるので気をつけてくださいね。
・自動販売機
これは創作です。筆者自身、このような体験はありません。お金が入らないことは誰でもあることですが、そのまんまじゃつまらないので、変化球で勝負しました。ちなみに、お金が入らないのは年数が原因ではないので、誤解しないでくださいね(笑)。原因は分かりません。誰か教えてほしいくらいです。
心理学用語〝シンクロシニティ〟は筆者が読んでいた漫画で出てきた言葉でした。もちろん〝カール・ユング〟も現実にも存在します(逝去されています)。ユングは精神分析学社の〝フロイト〟と仲良しだったそうですが、意見の違いから袂を分かつことになってしまったそうです。
ちなみに、出典は○ィキ○ディアですので、正確な情報とは限りません。筆者の場合は専門書でも調べてみました。
『Beautiful Life』を楽しんでいただいてありがとうございます。もちろん続けますよ(笑)。ですが、更新が遅れそうです。なるべく頑張りますけどね。そこで、もしこんなネタで書いて欲しいな~という方がいれば募集したいと思います。たぶんいないと思うけど……(泣)。ネタ切れだからというのもあるんですけどね(大笑)。連絡方法は筆者に伝わる方法ならなんでもいいです。ただ誹謗中傷はやめてくださいね(笑)。筆者はナイーブですので。
それでは!