第二話(作者:大岸都心)
音はもはや呪詛であった。
暗く濁りきった音が子供を縛りそして絶望の淵へと誘う。そしてその音は深淵に潜むモノへの甘露となっていた。
―彼は、他の「蛇精の使い」よりもいくらか大らかであり、この音を気に入っていた、他の生物ならいざ知らず彼らは元来食物を摂取しなくても生きる事ができ、彼らの糧は他者の感情であり人を狩るのも肉を喰らう為では無くその恐怖を喰らっていた。それゆえ、彼は眠るようにしながら糧を貪りただ日々を過ごしているのであった。
だが、ある日、彼にとっての糧である音が鳴りやむ。
――数刻前、洞窟の入口付近
「しかし、またなんで?」
いかにも柄の良くない男が初老の髭の生えた男性に尋ねる。彼は傘の末端であり男性は団の長であった。
「流通のさせすぎだ、そもそも滅多にお目にかかれないような代物を短時間で捌きすぎた」
「遅かれ早かれ討伐隊が編成されてここに攻め入ってくることとなるだろう。その前にここを引き払うのだ。早急に準備に取り掛かれ、もっとも裕福な生活が惜しいならここにいてもかまわん」
辺りでは数人の団員が荷造りを行っていた。
「命あっての物種ですから、流石にそこまではしやせんよ」
「しかし、ガキどもはどうするんで?」ヘヘヘと下劣な笑いをもらし男はそう答えた。
「放置して尻尾を掴まれることになると面倒だ、始末して合流しろ」
男性は男にそう言い放ちそばにあった短刀を差し出し荷造りした荷物と共に馬車へと乗り込んだ
「分かりやした、すぐにでも追いついてみせますよ」
短刀を受け取ると男は顔を歪ませながら洞窟の奥へと消えていった。
体を壊して投稿が一カ月も後になった割にこの短さ…