ACT.60 ヒマワリの作戦
5月8日の夜、葛西家のガレージ。
SW20の前でヒマワリとウメが会話していた。
「ミッドシップについてだけど、それを採用している車はスポーツカー中心なんだ。MR2以外にミッドシップを採用されているのはホンダのNSXとビート、マツダオートザムのAZ-1とスポーツカーばかりだぜ」
ミッドシップはスポーツカーのための駆動方式と言っても良い。
ミッドシップエンジンの車にはエンジンが運転席のすぐ後ろにあるため、後部座席がない。後部座席がないってことは実用的には向かないってことだ。
ただし、トヨタのエスティマ(初代)、ホンダのバモス、三菱のiはミッドシップだが後部座席は存在する。
「ミッドシップの長所と言えばトラクションの良さだよ。トラクションのあるおかげでパワーが上の奴と互角に戦える。ミッドシップ最大の欠点とは万人には扱いづらくスピンしやすいことさ。初期のSW20はスピンしやすいことが問題になっていたらしいぜ」
「けど、ヒマワリはスピンしやすいミッドシップを上手に乗りこなし、スピンしやすい車に乗ってるけど今まで1度もスピンしたことはないらしいね」
「いやいや、母ちゃん。オレはスピンしたことないけど、スピンを恐れたことはいっぱいあるよ」
スピンしやすいSW20を愛車にしているヒマワリだが、実は車をスピンさせたことはない。スピンしやすい車をスピンさせないことこそ、ヒマワリの腕の良さが分かる所だ。
「あと、オレのSW20は普通のSW20と違うところがある。それはリアサスペンションさ」
「リアサスペンションってド・ディオンになってことだろ?」
「そうだよ。普通のSW20は4輪ストラットだけど、オレのSW20はリアサスペンションをド・ディオンアクスルにしているだぜ」
普通SW20は4輪ストラット式だが、ヒマワリのSW20はド・ディオンアクスル式リアサスペンションになっている。
ド・ディオンアクスル式サスペンションとは 車軸懸架の一種。名称はかつてフランスに存在した自動車メーカーが由来になっている。
後輪駆動車では、デファレンシャルギア(略してデフ)やアクスルハウジングがサスペンションと連動するので、ばね下の重量が重くなってしまう。このド・ディオンアクスルは、デフとアクスルハウジングを分離させて、車体側(ばね上)に装架させた。これにより、ばね下重量の軽さと、リジッド式サスペンションの長所の対地キャンバー変化の少なさを両立したものだ。
このド・ディオンアクスル式サスペンションを採用している車はロータスの車やケータハム・セブン、国産車ではプリンス・グロリア(初代)やホンダの4WD車や後輪駆動車が採用している。また、全日本GT選手権に参加していたAE86もリアサスペンションがド・ディオンアクスル式だった。
「ヒマワリ、作戦はあるの?」
「あるよ、母ちゃん。オレはサクラ姉ちゃんとモミジのように頭は良くないからな」
ヒマワリには作戦があるようだ。
「スタートは先行で行く。相手の情報をほぼ分かったらオーバー・ザ・レインボウで抜く。これは重要な所じゃあない。作戦の重要なのは<SAKURA ZONE>での走りだ。あそこでサクラ姉ちゃんは追い抜かれ、モミジは差を付けられた。あそこで走る作戦は考え中だ。誰にも言わない」
ヒマワリの作戦とは<SAKURA ZONE>で走ることを重要視しているが、誰にも話さない、秘密にしている。
小説とは関係ない話をしますが、ワイルドスピードで主人公の1人を演じられたポール・ウォーカーさんがお亡くなりなりました。彼はワイルドスピードに欠かせない人で続編の撮影中にもかかわらず亡くなられるなんてショックです……ご冥福をお祈りいたします。
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