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ACT.47 <負けない心>

 現在午後10時の赤城山、エネルギー資料館前の駐車場。

 この薄暗い山の駐車場に、熊九保、小鳥遊、川畑ら3人のRB20三人衆、そして同じ大学の自動車部に入っている末永姉妹がいた。車は5台、C33ローレル、HCR32スカイライン、A31セフィーロ、それに加えて末永姉妹の愛車、橙色のCT9A型三菱ランサーエボリューション9、と深緑色のマツダRX-8(前期型)が停まっている。ランサーエボリューション9ことエボ9が姉の愛車で、RX-8が妹の愛車だ。


 ランサーエボリューション9とはランサーエボリューションの9代目であり、CT型のランエボの後期型でもある。

 ランサーエボリューションとは日本を代表する4WDスポーツカーで、三菱がWRCで勝利するために開発された車だ。スーパーカー並の加速力を持つ。峠で使えば反則だと言われるほど、戦闘力が高い。

 エボ9はデザイン面ではブーレイ顔が廃止されてスッキリした顔立ちに変わった。エボ4から採用されているAYCの信頼性が良くなっており、ふつうのLSDに交換せず、AYCのままレース参戦しているエボ9もいる。また、このエボ9にはワゴンモデルが設定された。

 ランエボは4WDだが、エンジンを縦置きにし、駆動方式をFRにすることでドリ車にも使えることができる。末永姉のランエボもそうで、彼女のエボもFRだ。

 

 マツダRX-8とはマツダが発売したロータリーエンジンのスポーツカーで、FD3Sの後継と思う人が多いが、実は新規車種である。

 RX-7と違い、スポーツカーではなく、ファミリーカーとして作られており、クーペなのに観音開き式の4ドアだ。

 エンジンはNAの2ローターの自然吸気を搭載し、250馬力を達成する。

 2008年にマイナーチェンジを行い、パワーは250馬力から235馬力に低下したが、その変わりに低速トルクが強化されたことで加速力はパワーを下がったのにアップしている。

 しかし、2012年に惜しまれつつ生産終了した。この車は最後のロータリーエンジンの車となった。


「熊九保ってドリフト甲子園のチャンピオンじゃないの?」

「そうだよ。おらはドリフト甲子園のチャンピオンだ」

「ドリフトは一流だけど、大崎さんに負けたじゃないの」

「いやァ、それを言わないでほしいよ。本当におらは腕がいいのに(戸沢のDC5に負けたことは秘密だけど……)」

 熊九保はドリフト甲子園で優勝したのにもかかわらず、なぜか翔子に負けてしまったことを末永姉に皮肉に言われてしまう。

「ウェヒヒ──熊九保さんはWHITE.U.FO戸沢にも負けたんだよ」

「せやな、ウェヒヒ……」

「へぇッ! 熊九保ってWHITE.U.FOの戸沢国光にも負けたのォ!?」

「そうだよ、戸沢国光にも負けたんだ。くにちゃんと川畑さんが止めようとしたけど、無視してバトルしたあげく、敗北しているんだ」

 熊九保は翔子だけでない、DC5型インテグラに乗るWHITE.U.FOの戸沢にも負けたんだ。

 そのことを小鳥遊と川畑は語る。

「じゃあおらのテクニックがみてえべか? おらが運転うめぇことを証明してやるべェッ! にさ(福島弁でお前)もおらの助手席に座って見てくれェ!」

「いいわよ、ただし下手だったら許さないから!」

 末永姉を助手席に乗せて、自分のテクニックを見せてやろうと言った。

「熊九保さんが走るって」

「末永の姉ちゃんに自分が上手いことを照明するためやで」

「お姉ちゃんが熊九保の走りにどんな風に見るのか楽しみ」

 熊九保が末永姉を乗せて走ることについて、3人は楽しみにしている。

「行くべェーッ!」

 熊九保と、助手席に末永姉を乗せたC33は駐車場を出発し、ダウンヒルを開始する。

「熊九保さん、行ってらっしゃーいッ!」

 出発した熊九保のC33を小鳥遊は見送る。

「まずは直線ッ! 熊九保は長いここを走ってコーナーに入るんだ!」

 赤城最初のコーナーは長い直線の向こうにある。

 その直線を430馬力のローレルが通っていく。

 

 熊九保の車が去ったスタート地点に、ここにいる3人の耳に何か聞こえてくる……。


「後ろから車の音が聞こえてくるで──」

「ターボの音、3Sの音が聞こえてくる──」

「あの音は誰の車か分かる気がするよ」

 聞こえてきた車の音は3S系エンジンの音だ。

 その音の正体がどんどん近づいてくる……。

「やっぱり──あの音は葛西モミジのアルテッツァのエンジン音だッ!」

 聞こえたきたのは葛西モミジのアルテッツァだ。

 そのアルテッツァが3人のいる駐車場を通り過ぎる。

「ずっと向こうには熊九保はんが走っとる。熊九保はんのC33は抜かれるかもしれへんでッ!」

 アルテッツァの遥か向こうには熊九保C33が走っている。

 熊九保が抜かれるかもしれないと、川畑は心配した。

 なぜなら、モミジは昨日のバトルでアース・ウィンド・ファイヤー相手に2勝したからだ。


 その熊九保は第1コーナーを終えていた。

 熊九保は遥か後ろから車が来ることが気づいていない。

 第1コーナー後の大きく膨れたコーナーをややスライドさせながらノーブレーキで抜ける。

 それの後は直線を通り過ぎ、3連続ヘアピンに突入した。

 少しブレーキを踏んでドリフトで攻める。

「おらのドリフト、どうべか?」

「まあまあね、ドリフト甲子園で優勝者といえるわ。けど、それができても、大崎さんに勝てる走りじゃないわね」

 熊九保のドリフトはライン取りはうまいが、

 角度がでかすぎて、スピードがない。

 これじゃあ翔子に勝てない。

「後ろから何か来るわ!」

「本当かッ!? 来るんなら逃げてやるべッ!」

 後ろからモミジアルテッツァが来ることを末永姉が気付いた。

 それを見た熊九保が逃げるために本気を出す。

「着いてくるなら着いて来いべッ! 葛西モミジィッ!」

 3連続ヘアピンを終えるとU字ヘアピンに入る。

 そのヘアピンに先に熊九保のC33が突入するッ!

「行くべェーッ! 抜かさねーべェーッ!」

 ヘアピンへ時速100km/hのドリフトで入るッ!

 後攻のアルテッツァもヘアピンに入った。

「あの見かけないオレンジ色のC33ローレル、仕方ないから抜くか」

 アルテッツァはC33より速いスピードでヘアピンに突っ込んでいく。

「速いべッ! 追い抜かれてしまうべッ!」

「忘れたのォ!? 葛西モミジは運転の腕は18とは思えないからッ!」

 ヘアピンの立ち上がりでもアルテッツァは食いつく。

 エンジン出力はC33が430馬力で、アルテッツァは320馬力と、アルテッツァのほうがパワーが低いが、アルテッツァのほうはドライバーの腕がいいのでパワーがなくても立ち上がりでパワーのあるC33に着いていける。

「ヤバい、<オーバーロード>が来るわッ!」

「──<オーバーロード>ッ! ジャストジャストジャストジャストジャストジャストジャストジャストジャストジャストジャストジャストジャストジャストジャストジャストジャストジャスト、ミィィィィィートッ!」

 次は90度コーナー。

 モミジが<オーバーロード>を仕掛けてくる。

「イン側に逃げてッ!」

 モミジの<オーバーロードを防ぐためにインに入ってと忠告する。

 しかし、

「だめッ! アウトに寄っちゃだめッ!」

 熊九保はそれを無視して逆に入ってしまった。

 アウトに寄ったため──。

「私の忠告を無視したから、バランスをくずしたじゃないのッ!」

 熊九保は忠告を無視したから、<オーバーロード>によって熊九保はバランスを崩してしまった……。

「うぅ──運転できないべ……」

 バランス崩したため、運転ができなかった。

 そして、道を塞ぐようにスピンする。

「わがんねッ!(福島弁でだめだ) スピンしてもうたッ!」

「あんた、どうしたのォ! スピンしてしまってッ! 本当にドリフト甲子園のチャンピオンなのォ!」

「いやァ、気を抜かして走っただけだべ──」

「気を抜いたってどういうことよッ!」

 熊九保の胸を末永姉が怒りのあまり掴む。

 ドリフト甲子園のチャンピオンらしい走りをしなかったことに末永姉は怒っているのだ。

「まぁ、葛西モミジの<オーバーロード>は誰もかわしたり、防いだりしたことはないわ」

 と言って掴むのをやめるが、

「スピンしたって情けないわねッ!」

 と言い、末永姉は熊九保の顔面にパンチを喰らわすッ!

「スピンしたってドリフト甲子園で優勝した走り屋じゃないわよッ!」

「ウェヒヒ──」

「ウェヒヒじゃないわよッ!」

 C33の車内では、まるで漫才のような掛け合いが行われた。

 熊九保がボケで、末永姉がツッコミだ。


 しかし、葛西モミジの実力は本物だ。

 智と末永姉が言うのに、モミジの<オーバーロード>は雨原とモミジの2人の姉以外の走り屋には誰も回避も、防いだこともない。強力な技だ。

 この技は<低速ドリフト>と並んで強力だ。翔子は<低速ドリフト>と共にこの技に勝てるのだろうか?


 翌日、4月28日。あと3日で4月が終わる。

 その日が覚めたような夜明けの朝5時、銀のR35と赤・白・黒のワンエイティが赤城の山を登っていく。

 第3高速セクションの途中であり、2台はそこを走っている。

 その前、高速セクションの終わりの右車線に葛西サクラのJZA80が止まっていた。

「サクラの80が止まっている──故障なのかァ?」

 サクラが止まっているのは80が故障しているのかと智は見た。

 しかし、サクラの80は止まっているものの、80は故障していない。

 なぜ止まっているだろう。

 80の左フェンダーの前にサクラが1人立っている。

 2台がサクラの車に近づくと、サクラが白線の真ん中に来る。

 2台はサクラの前で停止した。

「──オレはお前を待っていた……」

「おれたちを待っていた……?」

「──そうだ……」

 サクラが止まっていた理由は1つ。

 翔子を待っていたからだ。

「──お前と話がしたいんだ……大崎翔子──」

「う、うん」

「──一昨日(おととい)、オレの妹のモミジがお前にバトルを挑んだだろ……あいつがバトルを申し込んでくれたのはオレは嬉しく思う……何故なら、あいつはオレの代わりにリベンジしようとしている……」

「あんたの仇をモミジが……取る?」

「──そうモミジはお前を倒し、オレの仇を取るんだ……」

 DUSTWAYでは実力のあるサクラが自分の負けたことが納得できないので、妹はが仇を取るために戦うと言う。

「──モミジだけでない、同じくオレの妹のヒマワリもお前と勝負したいと思っている……代わりにリベンジしたいからな──オレだっていつかお前と勝負したいんだ……オレには<負けない心>がある……この心があるから負けられない──」

「<負けない心>……」

 サクラは<負けない心>というものを言った。

「──<負けない心>とは、自分にも他人にも負けず、勝たなきゃだめというより負けてはいけないという意味だ……。オレにはその心がある──ヒマワリ……モミジにもな──」

 <負けない心>という意味を言った後、サクラはここを去っていった。

「<負けない心>か──」

 <負けない心>──。

 それはサクラが言った言葉だ──。

「<負けない心>はサクラのモットー的な物だと私が感じる──」

 智が言う、

 <負けない心>とはある意味、サクラのモットーかも知れない……。

「サクラの言った<負けない心>は他の走り屋でも言っているが、サクラはどの走り屋より<負けない心>が強いかも知れない……葛西サクラ──私は彼女にその言葉からオーラを感じる……」

 サクラの言った<負けない心>──。

 この言葉を良く言ったものだ──。

 彼女には無口でクールな性格の裏に、走りに対する熱さが伝わってくる……。


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