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ACT.36 二卵生双生児

 夜11時、鳥や虫の鳴き声しか聞こえてこない赤城山の夜。

 2台の車が赤城の山を登っている。

 フクロウの鳴き声と同時にターボとスキール音の音が協奏曲が響きわたる。

 先頭の車はスーパーカーのようなスタイリングの車で、Veilside製と思われるエアロにボンネットに埋め立てられた固定式のヘッドライト、大きなウイングが装着されている。色は蛍光色に塗られた緑色。後ろの車は小さなセダンで、Veilside製のエアロに大きなウイング、黒ぶちのヘッドライト。色はオレンジ色だ。

 運転しているのは、緑の車が車と同じ色の緑髪ポニーテールの少女、体格は中学生並に小さい。

オレンジの車が車と同じ色のオレンジ色のツインテール少女、前者の緑髪ポニーテール少女と同じパターンだ。体格は緑髪ポニーテール少女同様に中学生並だが、こっちのほうが小さめだ。

「サクラさんの妹、ヒマワリのSW20とモミジのアルテッツァが来るぞッ!」

「2人とも走り屋になって2ヶ月なのに結構うまくなったな。サクラさんと雨原さんより上手くなったように見える。または走りが似てきてる」

 2台の車の名前は、緑の車がSW20で、オレンジ色の車がアルテッツァだ。


 SW20ことMR2は、トヨタがカローラをベースにFFのパッケージを逆さまにしてミッドシップレイアウトにしたスポーツカーだ。MR2は日本最初のミッドシップレイアウトの乗用車だ。SW20はその2代目に当たる。SW20はカローラではなくセリカがベースとなり、カローラをベースとした初代より車体が大きくなった。初期モデルは足まわりが弱くてスピンしやすいという問題点があったものの、マイナーチェンジで解消されている。先代ほどのヒットはしなかったが、先代同様に人気のある車だ。搭載エンジンの3S-GTEはとてもパワーがあり、車重も軽く、加速もコーナリングもかなり得意だ。


 アルテッツァはトヨタが欧州でBMWやベンツ、アウディと戦うために開発されたスポーツセダンで、チェイサーの事実上の後継にあたる。日本国外では「レクサスIS」という名前で販売された。「軽量・コンパクト」を目的に開発され、発売当初は「AE86型カローラレビン/スプリンタートレノの再来」と期待された。搭載エンジンはコンフォートなセッティングの直列6気筒とスポーティーなセッティングの直列4気筒が用意されていて、オレンジ色のアルテッツァが積んでいるのは後者のほうだ。アルテッツァの直列4気筒こと3S-GEはSW20の3S-GTEを自然吸気にしたもので、リッターあたり110馬力というハイパワーを叩き出す。オレンジ色のアルテッツァはそれをターボを積ませてパワーを高めている。


 ドライバーの名前はSW20に乗る緑髪ポニーテール少女はヒマワリで、アルテッツァに乗るオレンジ色のツインテールの少女はモミジだ。どちらも葛西サクラの妹で、この前の翔子vs戸沢を観戦した双子の走り屋だ。


「ツインドリフトだッ!」

「双子のツインドリフト、かっけェーッ!」

 2台はツインドリフトを決める。

 ドリフトで出る煙が雪のパウダーが舞うかのようにギャラリーに降りかかる。

 2人は走り屋になってまだ2ヶ月と経過していないが、それとは思えないほど、腕のあるドリフトを魅せる。

「──ヒマワリとモミジが来た……」

 赤城山のヒルクライムに当たる、エネルギー資料館前の駐車場にヒマワリの緑色のSW20とモミジのオレンジ色のアルテッツァが着く。

 2台は停止し、それらから出る車の鳴き声が止まる。

 2台が停車した駐車場にはDUSTWAYのリーダー・雨原芽来也とその愛車・FD3S型RX-7、DUSTWAYのメンバーでヒマワリとモミジの姉・葛西サクラとその愛車・JZA80型スープラがいた。彼女以外にも他のDUSTWAYのメンバーたちもアリの大群のようにたくさんいる。

「ヒマワリ、モミジ、車のコンディションはどうだ?」

 車のコンディションはどうかと雨原は双子に聞く。

「バッチリだぜッ! オレのSW20はとっても良く仕上がっているッ!」

「ボクのアルテッツァも良く仕上がっている、運転のコンディションも良い」

 双子が自信満々だと言う。

「そうか、その高いコンディションを多田とのバトルまでに落とすんじゃねーぞ。あと、堀内はお前らのお姉ちゃんを馬鹿にした。それは妹としては許せねーよなァ」

「ああ、許さねーぜェ!! オレのサクラ姉ちゃんを馬鹿にする(シット)な奴はこの妹が許さねーぜッ!」

「ボクも許さないよ。姉を馬鹿にされたら妹は許さない、ヒマワリも僕も一緒」

 多田に姉を馬鹿にされたことは、妹としてあいつを許すことができない。

「そうだよなァ、妹としては許すことはできないぜ。あたしもあいつを許せない、なぜならあいつは裏切り者だからだ。裏切り者はなんて例えあっちが許しても、こっちは100パーセント許さねーぜッ!」

 姉を馬鹿にされた双子同様、

「裏切り者」という理由で雨原も堀内を許すことができない。

 家臣の謀反を見たお殿様みたいに許すことができないのだ。

「あたしはあいつからチームを守るッ! チームを潰すことなんてさせねーぜッ!」 

 DUSTWAYは雨原の大事なチームだ。

 堀内ら3人ごときに潰されるわけにいかないッ!

 雨原はそう宣言したのだ。

「──オレもチームを守る……ヒマワリとモミジが言うようにオレを守ると言うように、オレはこのチームを守る……」

 雨原の言葉にサクラも続く。

 チームを守ろうとする雨原、サクラを守ろうとする2人の妹を見て、その言葉を言ったのだ──。


 夜が明けて、今日は4月22日、朝日が輝く朝6時。

 ここは葛西サクラの家、カサイモータースというカーメンテナンスショップだ。

 このカサイモータースはサクラたち三姉妹の両親が夫婦で経営していた店だが、今は父親が亡くなり、母親のみで経営している。娘のサクラとヒマワリもバイトで働くこともある。

 水曜日と祝日以外のすべての日に営業しており、開店時間は13:00、閉店時間は21時だ。

 メニューは車のメンテナンスや修理、改造や洗車などの豊富だ。


 サクラの部屋、ベッドには和風美人のような黒髪のロングヘアで顔の右半分が隠れるほど前髪が長い三姉妹の長女・葛西サクラが寝ていた。

 普段のヘアースタイルは長い髪を青い布で1つに結ばれているが、寝ているときは結んでいない。髪を結んでいないと同じく、寝ているときは服は1着も着ていない

 真っ裸だ。実はサクラは裸族(らぞく)で、寝る前には裸になる。

 この部屋に寝ているのはサクラだけでない、サクラの右のベッドにはもう1人女性が寝ている。女性の髪型は平安貴族のような姫カットとぱっつんの前髪にサクラのような漆黒の闇に染まる長髪、顔はサクラに似てて良く整った美人顔、瞳はターコイズやサファイアのように輝く藍色できれいに光っている。サクラ同様、服は着ないまま寝ている。

 サクラの右に寝ている女性とは──そう、サクラの母親だ。名前はウメで、年齢は46歳だ。しかし、年齢の割には顔が若く見える。髪はツヤツヤで、肌は荒れておらず、顔にはしわが1本もない。

「ふぅゥ~もう朝か……」

 寝ていたウメが起き上がる。

 起き上がってすぐ、裸のまま部屋を出る。

 裸のままクローゼットに行き、下着を着けて、黒いTシャツを着て、青いジーパンを履く。

 服を着けてあとは仏壇へ行く。

 この仏壇にはウメの夫、つまりサクラたち3姉妹の父親の遺影がある。

 ウメの夫で、三姉妹の父親の名前は(のぞむ)。16年前に結核(けっかく)で28歳の若さでこの世を去った。

 生前はメカニックをやっていたらしい。

 ウメは夫の遺影が写る仏壇の前に正座する。

「──(のぞむ)……お前がこの世を去ってから16年になるね。3人の子供は私が1人で育ててきたよ。2ヶ月にヒマワリとモミジは車と免許を持ち、これで子供たち全員車を持った。お前と私が大好きな車な車を子供たち全員が持つようになったことは母親の私も嬉しいことだよ。お前にも見せたかったな、お前が生きていたら喜んでいたかもしれない……」

 メカニックだった夫は車が大好きだった。

 もし夫が生きていたら娘が車を持っていることに喜んでいたかもしれない。

 ウメも大の車好きで、かつては走り屋をやっていた。

 そのDNAが娘に受け継がれている。

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