ACT.29 温泉
──左U字ヘアピン後のゆるやかなヘアピン。
「大崎ちゃんが勝ったらしいよ」
「大崎はんが勝ったんかァ!? あの強敵に勝ったんかァ!?」
小鳥遊と川畑にも翔子の勝利したことが伝えられる。
「勝ったよ。5連続ヘアピンで抜いたんだ!」
「大崎はん……あの熊九保はんを倒した強敵に勝ったんやッ!」
5連続ヘアピンの4つ目、戸沢のタックインでブロックしたところを翔子はハヤテ打ちで追い抜いてゴールしたのだ。
このバトルで初めてチームのリーダーを倒したことになった。
第3高速セクション。
「大崎が勝ったらしいぜッ!」
「ボクの思った通りだよ」
サクラの妹2人も翔子の勝利を知った。
モミジにとってそれは予想どうりらしい。
「ギャラリーは勘違いしたようだなッ! 先行での無灯火走行を使ったら勝つと思いやがって、この技は食らう人と食らわない人がいるんだよッ! 負けた原因は相手が悪かったようだぜッ!」
ヒマワリ曰く"相手が悪かったから戸沢は負けた"
その通り、翔子は精神的に強すぎた。だから先行の無灯火走行が無効だったのだ。
ふもと。
「負けちゃいましたね……」
「そんな時もある。相手は強かったようだぜ」
WHITE.U.F.Oのメンバー・円が戸沢に話しかける。
戸沢でも翔子は強い走り屋だと言った。
「戸沢さんの無灯火走行が負けるとはありえませんッ!」
同じくメンバーの保村は戸沢が負けたことを悔しがる。
相手を騙すだけでなく、油断させる技、無灯火走行が負けたことは有り得なかったらしい。
「大崎さん……大崎さァァァん!! か、勝てましたね……ッ! グスン──」
翔子が勝ったことに、熊九保は涙を流しながら喜び、翔子に抱きつく。
「よく勝てたな」
智が来て、勝利を祝う。
「ちょっと苦戦しましたけど、勝てました。熊九保をやっつけたミッドナイトドライブを防ぎましたけど、タックインで抜かれました。抜かれた後は相手が見えず離されたと思い、追いつかないと思いましたが、高速セクション当たりに入ると相手が見えてきました」
抜く前のことを翔子は語る。
これが出ればギャラリーたちから見れば戸沢が勝ったと確定する先行の無灯火走行に追いつくことに成功した翔子だったものの、後行から見た景色には戸沢の車は見えず、離されたと思ったらしい。
戸沢が見えたのは第3高速セクションに入ったころだった。
「なぜ追いつけたかって思いますと、相手は無灯火走行によって先の道が見えず、恐怖心が出てたからです。恐怖心によってあまり加速できず、コーナーを曲げる速度も下がってしました。結果、差を縮められてしまったんです」
無灯火走行の欠点を翔子は知っている。
なぜだか分からないものの、翔子はそれを知っていた。
「大崎は強くなったな。倒したのはよその峠を拠点に置くチームのリーダー、しかも強敵だ。無免許の走り屋がチームリーダーを倒すなんてすごいことだぞ」
「ウェヒヒ……無免許の走り屋であるおれがチームリーダーを倒すなんて──おれは恥ずかしいです」
智の言葉に翔子の頬が照れ始める。
無免許の走り屋が大規模チームのリーダーを倒すという他人にはできないことをやってのけたんだ。
「じゃあ、帰るとしよう。そのより道に勝った記念のご褒美としてどこか寄ろう」
「あ、ご褒美ですか。ありがとうございますッ! それを楽しみに期待しています」
勝ったご褒美をくれると智は言う。
それには翔子は大喜び。
なにが出るのか楽しみだ。
そのご褒美とは温泉へ行くことだった。
バトルで疲れた体を温泉で癒やそうと智は温泉に行かせようしたのだ。
入ってすぐ、温泉の女風呂の銭湯に翔子と智は服をすべて脱いで入る。
風呂に入っている裸の女性客たちに紛れながら入った。
「どうだ? バトルの後の温泉はどうだ?」
「ふゥ~気持ちよいですね」
風呂に入浴した翔子は極楽だ。
「おらたちも来ましたよ」
「熊九保さんもきたんだね」
銭湯にはRB20三人衆もいた。
翔子たちを追って、ここに来たようだ。
「風呂は気持ちよいですか、大崎さん?」
風呂に入ってどう?
と熊九保は聞く。
「うん。バトルの疲れは吹き飛ぶし、明日から頑張れる気がするよ。智姉さんに感謝しないといけないねッ!」
温泉への入浴は明日から頑張れそうだと翔子は言う。
「バトルへギャラリーしていたくにちゃんも、バトルを思い出しながら風呂に入ると今日は楽しかったと思うよ」
風呂に入れば今日のバトルはとても楽しかったと小鳥遊は思うらしい。
「うちもそう思うで。風呂に入れば今日のバトルはとても良かったと思うようになる。斎藤さんに感謝したいで」
川畑は小鳥遊と同じことを言う。
と同時に温泉に行かせてくれた智に感謝したいらしい。
「今日のバトルはすごい良かったぞ。榛名山の強力な走り屋、戸沢国光を倒したとはお前は強くなったもんだな。これからのバトルもがんばってくれ」
「今日のバトルは手ごわかったものの、勝つことができました。今日は楽しかったです。明日からまた頑張ります」
翔子と智は今日を振り返る。
戸沢国光という榛名山の強敵に戦って勝利した今日、翔子の活躍の1ページに追加された。
「大崎はこんなに速くなるとは私でも思わなかったぞ。あと大崎──」
「なんですか?」
"あと大崎"と智はなんか聞き始める。
何を言うんだろうか?
「キスしようか──」
キスしいうと言った──ッ!
「え? 嬉しいですけど……こんな大勢の前でキスするなんて恥ずかしいです──。人がほとんど帰ったらやればいいじゃないですか──?
このことに翔子は頬はリンゴのように赤くなり始める。
裸の客の前ではそんなことはできないと。
「大丈夫だ。RB20三人衆の後ろに隠れてやればいいんだ」
そのことは大丈夫だと智は安心する言葉を言う。
RB20三人衆の隠れながらやればいいと。
その言葉で2人はRB20三人衆の後ろの移動する。
「それじゃあ……キスしよう」
「智姉さん──あなたことが大好きです」
2人は濃厚なキスを交わす。
恋愛ドラマのように暖かいキスをしたのだった。
(智姉さんとキスができて幸せ──)
このキスは翔子にとって天国だ。
キスができたという幸せで昇天してしまう。
(バタンッ!)
「大崎ッ! 大崎ィ、大丈夫か!?」
キスができた幸せから来た昇天により、翔子は倒れてしまった。
「キスができたという幸せで倒れてしまったようだな」
そりゃそうだ。
キスをしたという嬉しさのあまり倒れたらしい。
翔子がおきあがったのは風呂から出たあとだった。
「おれはどうしたんでしょうか?」
「大崎が気づいたようだ」
翔子が目をあける。
やっと気がついたようだ。
「大崎さんはキスで倒れるなんて信じられませんよ」
キスで倒れるということを熊九保は信じられなかったらしい。
「それじゃあ、服着たら帰ろうか。大崎」
「はい。帰ったら今日は楽しかったと思いながら寝ます」
銭湯への入浴を最後に翔子の1日が終わった。
隣を拠点を置くチームのリーダーを倒した翔子。
熊九保を倒すほどの強敵に、不利になることも想定されたものの勝利を収めることができたのだ。
こんな強敵に勝利できたものの、無免許少女の走り屋の戦いはまだまだ続く。
今回でWHITE.U.F.O編は終わりとなります。
次からはどんな相手が来るのでしょうか




